触った心地に変わりはないが

 先日新たに機種変更したスマートフォンには指紋認証機能がある。これを使ってみようと試みた。
 先代の機種にもその機能はあったのだが、自分の情報を暗号にすることに抵抗があって使っていなかった。その感覚は現在も健在なのだが、この新しいスマートフォンは画面が大きいため片手での操作がしづらい。利便性と天秤にかけ、パスワード替わりの指紋を登録することにした。のだが、
 どれだけ丁寧にじっくり指先をセンサー部分に押し当ててもまったく読み取れない。角度や押す際の圧を変えてもエラー。指紋認証とはこんなに不便な機能なものなのか?と考えかけて閃く。私の指紋が磨り減っているのだ。
 私は毎日職場で次亜塩素酸の希釈液で拭き掃除をしている。 次亜塩素酸は蛋白質を分解する効果があるためCOVID-19対策には有効だが、同時に掃除をする私の皮膚の蛋白質も分解し、指紋の凹凸も削り取られいているのだ。私の手は以前よりか乾燥しているくらいにしか感じていなかったが、そう考えれば合点がいく。思い返してみればスマートフォンに指紋を登録するのにも時間がかかった。人差し指を登録するだけなのに「角度を変えて強く押せ」と何度もやり直しを要求された。今まで指紋認証を利用したことがなかったので「こういうものなのか」と思って5分近くやり直しを繰り返したが、そうか私の指紋自体が不適格だったのだ。
 せっかくの機能も活用できず、今日もまた指紋の磨り減った指でパスワードを入力している。


今日の英語:Fingerprint

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