羊のデジタル航路は座礁する #1

 まず私はデジタルnativeではない。私の学生時代はポケットベルやPHSが勃興し、携帯電話の着信音が3和音4和音になったという話題が盛り上がった。今でこそスマートフォンを持ち歩いているが、それで主にすることといえば猫の撮影とTwitterと猫のゲーム程度。動画はTwitterに流れてきたのを視る程度で、動画投稿者はTVに出てくるぐらいの人物しか知らない。職場でWeb会議に参加することはあるが、会社がお膳立てした場にカメラマイクを繋ぐ以外のセッティングをしたことがない。ここまでが前提。
 そんな私にYouTubeのライブ配信の依頼がくる。ん?誰と間違えている?母の歌の発表会を中継してほいしいと言うのだ。え?正気?発表会は9日後の11月23日。うーむ、5000兆円要求してもいいだろうか。
 母の参加する音楽教室の生徒は母と同世代が中心で、YouTubeのライブ配信を思い立ったものの何をどうすればさっぱりなのだそうだ。けど何で今になって。教室の先生は私と同世代だが、発表会の準備で飽和してしまいライブ配信を誰かに依頼するのをすっかり忘れていたとのこと。だからって何で私に。
 私は普及品化したデジタル技術にはそれなりに乗りはするが、積極的に学んで利用していくタイプではない。基礎中の基礎しか知らないデジタルconqueredであるのに、こんな短期間でライブ配信だなんて……。職場でWeb会議に参加したことがあるとひとこと言っただけでおばちゃま達にロックオンされることになるとは。測りがたし人生。

今日の英語:Request

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