無臭の日々

 去年の今頃だったか、消毒作業のにおいに夏を感じていた。
 次亜塩素酸の溶けた水、水色のプールに陽光の乱反射。けど今はそれを感じない。曖昧が多い空模様だけでなく、もうにおいがわからない。毎日の拭き掃除、かつては机に残る消毒のにおいが夏の記憶を呼び起こした。しかしもうあまりに消毒薬を吸い込みすぎて、もう感じるものが何もない。
 いつかまたすべて懐かしいと思える日はくるだろうか。
 それでも太陽の位置は毎日移り変わり、空には巨大な雲が湧く。明日の夏を信じる、人間がいなくなっても。


今日の英語:Disinfectant

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