背後についてくる真実
気付いている人のいないうちに。私は私の足音を聴きながら、空気の底の静寂を歩く。
私は遺跡が好きだ。廃墟も好きだし、何なら休憩中の工事現場も好きだ。人はいたけど今はいない、そんな空間にやけに惹かれる。何かの秘密に触れたような気持ちになれる。
巨大な建造物、その裏側、日陰のひび割れ。風化して鋭さを失ったコンクリートの角、轍の刻まれたアスファルト。誰もあるいていない道に、秘密が落ちている。
人間がいなくなって浮かび上がる時間の気配。雨が石を染め、風は亀裂から手を伸ばし土に種を届ける。
緑が帰ってくる。植物と錆が大地をあるべき姿に戻そうと根を伸ばしている。
要項も月光も、地表の存在に等しく降り注ぐ。人間のいないそこは、もっとも新しい化石なのだ。
今日の英語:Remains
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