次の40cmを目指して
どこかで私の断片があの子たちの助けに、救いに 。
久しぶりに髪を結んだ。やっと毛先が肩まで届き束ねられる長さになったのだ。風を感じるためにはまだ少々肌寒いが、うなじの涼しさが新鮮だ。
去年の11月、約3年伸ばした髪を切った。目的はヘアドネーション。いつも伸ばすだけで飾りもしない髪を、求める人の手元に届けるために。
私の髪は丈夫である。黒くて太くて頑丈だ。半乾きの髪を結んだまま寝ても、次の日の朝に櫛で融かせばストレートが復活する形状記憶剛毛。さらに量も多いため、毛を抑えきれず破裂したバレッタやヘアゴムは数知れず。丈夫さゆえに芯まで薬剤が浸透しきらないため、パーマもカラーも活きてこない。
かつて象を繋いだり寺院の鐘を吊るすのに女性の髪を使用したと言われるが、私の髪ならガネーシャだろうが君臣豊楽だろうがどんと来い。平安時代だったら激モテだったろうが、現代ではアレンジの効かない髪のちょっと残念末摘花。生来ずぼらな性格もあって、梳かして結んで伸びたら切るを繰り返していた。
しかしそんな素っぴんの髪を生かせる方法があると知る。ヘアドネーションだ。病気や体質のため頭髪が無い人のため、人毛のカツラを寄付する活動。ただ洗って梳かして結ぶだけの自分にはうってつけだと。そして3年間、鬱陶しさと闘いながら伸ばした40cmを寄付するに至った。
髪を切った直後はあまりの軽さとメンテナンスの楽さに感動の日々だった。このまま短い状態を続けたい誘惑に駆られるが、ヘアドネーションは非社交的な私にできる数少ない社会貢献だ、またドネーションに挑んでみようと思う。
私から切り取った一部が誰かの笑顔の要素になれる。それは私にとってもとても幸福。