見出し画像

凡慮、河川に釣行す #3

 テナガエビを求めて三度目の川釣りに挑戦する。
 テナガエビは初心者にも挑戦しやすいとのことで先日より釣り場所を探し、県境の川にかかる幹線道路の橋梁下に定める。ネットで検索した限りでは釣り場として適当のようであるし、何より近くにコンビニとスーパーがあるためトイレをすぐに借りることができる。膀胱が小さい系女子である私には重要な条件だ。

 港湾での釣りは、地形や私有地などの制約が多く竿を出せる場所は限られている。河川下流ではそういった制約は少ないが、そもそも釣れる地形が少ない。川岸は土でもコンクリートでも垂直な地形ばかりだ。その中から釣り場を選ぶのは初心者には労力と勇気が必要となる。何事も先達はあらまほしき、だ。

 いざとなればトイレを借りる予定のコンビニでコーヒーとおにぎり2個を購入し、釣り場所を鉄道橋下の消波ブロック地帯に決める。今度こそは仕掛けをロストすまいと開始する約13時。

 平日であれば競争相手の姿はほぼいないが、それでも離れた場所ではルアーを投げている人の姿がある。そして時折、川面を水上スキーを牽いたモーターボートが通りすぎている。ここら一帯でそんなアクティビティがあるとは聞いたことがないが、個人の練習だろうか?
 そしてモーターボートが通りすぎると波が打ち寄せる。河川敷の高さにいれば波をかぶることはまずないが、消波ブロックを覗き込んでいる時はブロックの隙間から吹き上がってくる水に注意しなければならない。

 今回の釣りはあまり条件が良かったとは言えない。まず釣竿が長すぎた。今回私は川釣り用の万能竿を持っていったのだが、テナガエビ相手に270cmは長すぎた。竿が邪魔で狙った場所にうまく糸を垂らせない。
 そして何より苦痛だったのが電車の轟音だ。ちょうど消波ブロック地帯の上を鉄道橋が3本も通っている。竿を振りかざしたら糸が引っ掛かりそうな高さを10分もあけずに電車が往復しているのだ。これにはかなり体力を消耗した。休憩に食べたおにぎりの味も覚えていない。
 消波ブロックの上から水面は遠く魚の影もうかがえない。ここは本当に釣りに適した場所なのか?と辟易していた頃にカニと遭遇する。

 野生のカニに遭遇するのは何年ぶりか。しかも周囲は工場と住宅密集地。フナムシくらいならいるかもしれないとは思っていたが、まさかカニとは。捕らえてみたくもあったがカメラで追い回すだけにとどめた。鉄道の轟音の下、カニは消波ブロックの奥に消えていった。

 釣れないのは想定内だが鉄道がこれほど鳴り響いているとは想定外だった。前回の車両用の橋梁の下はどうということも無かったのだが。釣れないなりに堪能する「ぼんやり」をすることもできず、14時半に撤収を開始する。

 廃墟や巨大構造物が好きな人間には面白い構図の場所だったが、釣りにはもう来ないだろう。また別の場所にテナガエビを探そう。


今日の英語:Roaring sound

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?