凡慮、河川に釣行す #1
散々逡巡したが、今日は川釣りすることにした。
目的地はよくバイオリンのレッスンの帰りに歩く近辺の河川敷、移動は当然自転車。最初釣竿はリュックに挿して自転車の前カゴに入れていたのだが、思っていた以上に振動でガタガタと鳴る。今回準備した振り出し竿は収納した状態でも約1mあるため、背中側で斜めに背負っては危険ではないかと考えたのだ。しかし竿が鳴るだけではなく視界の中央に竿があるのは自転車運転の妨げになるため、結局背中に背負うことにした。道路の端に寄りすぎないよう注意しなければならないが、今時分の交通量は極少なく、釣竿が電柱に触れるような場面もなかった。
混雑については杞憂だった。やはり駐車場が閉鎖されているというのは大きい。少年野球の試合やゴルフの打ちっぱなしは開かれているものの、ピクニックの場所取りでさ迷わなければならないような混雑ではなかった。
しかし釣り場はそうもいかない。というか初心者向けの浅瀬が皆無だ。見事に護岸工事がなされていて、川岸は見渡す限りのコンクリートの階段である。水辺が草と岩でいりくんでいる場所は立ち入り禁止になっているか、もしくは彼方まで歩かなければならない。とにかく今回はまだ練習と、場所を吟味せず準備を始める。
自宅を出発したのが11時半、風に煽られどうにか仕掛けを完成させたのが13時15分。
この周囲は河川敷の高さから5段ほど下れば水面のため当然釣り人も多い。1mもないような釣竿を構えた親子連れから、色とりどりのルアーを閃かす趣味人まで。その列の端で私も竿を構えたのだが、まず解ったことは延べ竿の2.7mは意外と短いということだ。今回も風が強いこともあって、竿をどう振っても仕掛けが水際のすぐ近くに落っこちる。しかも餌が重いのか浮きが水に潜ってしまう。仕掛けは一般的なフナ釣りのセットで、餌は自家製ミルワームなのだが。
どうにも冴えない今回の挑戦の中で、最も正しかったのは母の助言である。
私は昨夜時点の天気予報で今日が一日晴れと聞き、雨具の準備を全くしなかった。前回前々回と雨具を持っていったが使わなかったという実績もある。しかし「いってきます」の時に、母に雨具を持った方がいいと言われたのだ。なら一応と小さめのポンチョをバッグに入れた。これが大正解で、これが私を季節外れの感冒から救った。
竿を揺らしている最中、バラバラと雨が降りだした。空が明るいのですぐ止むだろうとたかをくくっていたのだがなかなかやまない。さらに風も強い。近くに物陰はない。ポンチョを広げ荷物を抱え込む。すぐに雨は小止みになったが、ポンチョの暖かさに母へ感謝しきりである。
ポンチョのフードを上げて左右を見ると、いつの間にか先達はいなくなっていた。雨と川釣りの相性は好ましくないのだろうか。
場所を移したり仕掛けの長さを変えたりしたが、これといった手応えは全く無いままついに仕掛けをロスト。浮き釣りでも根掛かりは起きるのか。空腹も感じたことだし撤収を開始。嘆息しつつ周囲のゴミを拾う。半径3mのゴミを収集したが、腹が立つのは何個でもタバコの吸い殻が見つかること。紙巻きタバコは煙草史最悪の発明だ。私がロストした仕掛けの10倍はある釣糸も回収。こんなものをうっかり忘れるだろうか、もう二度とここで釣りはしないつもりなのだろうか。
普段は河川敷を眺めるばかりで川岸に立つことが無かったため気付かなかったが、この川の岸は想像以上にキレイに塗り固められている。フナ釣りは初心者向けと言うが、初心者を受け入れられるほど豊かな川ではないのかもしれない。
今日の英語:Crucian carp