湿地より駆けアスファルトを散歩する #3

 人の「好きなもの」の話を聞くのは楽しい。しかも自分が“知っているようで知らなかったもの”のことであれば尚更だ。
 そのポニーと遭遇した時、その場にいた人間は飼い主の女性と私だけではなく、女性の孫のお嬢さん(小学校1,2年生ぐらい?)ともう一人散歩途中のやはり初老の女性がいた。お嬢さんはひとりで河川敷で遊んでいたがポニー(さっこちゃん)のギャラリーは私だけではなかったわけで、飼い主の女性に疑問の全てを訊けたわけではない。私が写真を撮るのも忘れてさっこちゃんを撫でるのに夢中だったというのもあるが。

○個人で馬を飼う場合、飼料は圧縮した乾燥牧草。
それでも河川敷の雑草の方が美味しいらしく、散歩に来るとずっと雑草を食べている。特に雨上がりは美味しそうに食べる。

 飼い主の女性の話を総合するに、さっこちゃんがここにやって来たのは今年の8月。元々は東京の市部にある動物園の出身で、もうそれなりの老齢であるようだ。片目が白内障だと言っていた。
 この女性は本当に馬が好きで、その世話がどれ程大変か知った上で、老いたポニーを引き取ったのだ。
 この河川敷をさっこちゃんと散歩していると色んな人に声をかけられるそうだ。二度見三度見は当たり前、土手の上を走る車の中から驚愕の叫び声をあげた人もいるらしい。明日は近所の幼稚園の子たちにさっこちゃんを触らせてあげる約束をしたと嬉しそうに話していた。
 この人はこういう時期だからこそ自分にできる最大限のことをしたのだろう、それもとても楽しそうに。こんなにも尊敬できる人が世の中に普通に生活しているのだな。
 気まぐれの散歩で驚異の遭遇。すれ違いの数だけ世界は無限大だ。

 またね。

今日の英語:Horse

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?