無脊椎動物ピッキング #中編
基本的にミルワームはリンさん(ヒョウモントカゲモドキ)の食餌用に飼育している。なので食餌に提供されること無くケージの中で死ねばそれは無為な生だ。
しかしミルワームにとってそんなことは関係ない。ミルワームは無脊椎動物、機械的に反応だけで生きている。目の前に齧れるものがあれば食べる。生殖能力のある個体がいれば交尾する。学習や知性とは無縁の生命だ。まあプラナリアだって効率的な行動を“記憶”するのだからミルワームに一切の知性が無いということはないのだろうが。
しかしミルワームは常に一定の行動しかしない。地震が起きても警戒して行動を止めるということもしない。床材の麬(ふすま)を交換するため成虫を“ふるい”にかけている間でさえも適当な相手がいれば交尾をする。哺乳類的な観点からすれば、床材=生きていくための大地であり食料が消失したのだから交尾しているどころではない、となるのだが、無脊椎動物にそんな思考をする魂魄はない。
無脊椎動物という生物は、哺乳類よりも無限にシミュレーションを重ねるコンピュータに近いのかもしれない。
今日の英語:Invertebrate