見出し画像

凡慮、海辺に釣行す #1

 本当は明日行く予定だったのだが、明日は雨との予報のため本日決行することにした。
 今日の目的地は初挑戦となる埋立地の堤防。今回は水面との距離があるためバケツとロープが必要だろうと途中100円均一ショップに寄ったのだが、どこにも売っていない。先週頃は確かに店頭に並んでいるのを見たのだが。やはり皐月の連休とあっては屋外に遊びに行く人達が多いのだろうか。とりあえず水を入れられる容器は必要なので大きめのタッパーを購入する。これは後日浮きなどの小物を収納する予定だ。

 今回もさいわいに空模様に恵まれる。目的の海浜公園も予想していたよりも人出は少ない。昨日の下調べでは、オートキャンプ場は閉鎖中だが駐車場は解放中とのことだったので、もっとごった返すほどの混雑を予想していたのだが。

 新しい時計、先日迷いに迷って購入したタイドグラフ付きの腕時計、が示すところでは今が干潮の底と表示されている。確かに砂浜も遠く波打ち際が下がっているが、釣場となる堤防は人が多く釣糸を垂れている。

 堤防の手摺に自転車を横付けして釣りを開始する。今回はサビキ釣り、水も濁っているし時間帯も適しているとは言えない。とにかくまずはテキスト無しでも仕掛けを結べるようになること、そして投擲に慣れること。

 長めの堤防には各ランクの釣り人が取り揃っている。今度こそは釣果をと意気込む少年、おそらく100円均一で道具を揃えたであろう釣り初挑戦の若い父親、経験値は半世紀あるであろう趣味人まで。そして私はというと、早くも椅子が欲しくなってきた。ここの景色は良いのだが、運河や河川と違って堤防は手摺が設置されているため座ったままの釣りができない。私の自転車は腰かけるには向いていない。時折足首を回転運動させながら、仕掛けを投げては回収するを繰り返す。

 仕掛けを投げると、仕掛けは向かって右の沖から左手前へ流れてくる。私が釣りを開始したのはまさに干潮の底から満ち始める時間だったらしい。隣の趣味人が同行の友人に「帰った後に釣れるんだよ」としきりに言っている。実際マニュアル本にも日の出日の入り前後が適している書かれている、釣りも夜討ち朝駆けということか。
 しかし私だけでなく誰も釣れない。釣り人のランクも釣竿の種類も多種多様なのに、どこからも歓声が上がらない。私の左隣ではどうやら「子どもを口実に釣りに来た家族」が2組ほど入れ替わりで挑戦していた。うち1組は父親がマニュアルを見ながら釣糸を結んでいる間に子どもたちは「釣れたらおしえてね!」とさっさと走り出してしまい、結局父親の挑戦は20分ほどで終了となった。

 堤防の右の遠方で一瞬銀色の閃きがあった。しかし本当に一瞬で、散るように海に帰っていった。タイドグラフは満ち始めを示していたが、残念ながら頃合いまで待っていられる時間の余裕はない。最後の一投、と投げた仕掛けが根掛かりする。冷や汗をかいたがすぐに復旧し回収することができた。今回は仕掛けのロストもなく、成果は中盤でつり上げた昆布のみとなった。

 次回はもっと満ちた時間帯にしかし何時に出発すべきか考えつつ恒例のゴミ拾いをする。空港が近くしっかり管理されてる公園のため大きなゴミはほぼ無い。しかし細かな仕掛けの切れはしと、無限のたばこの吸い殻と、そして睡眠導入剤の殻を発見する。カフェイン剤ならともかく、こんな市街地から遠く離れた公園で……。夜間この公園でどういうことが行われているか想像して薄ら恐ろしくなる。

 帰路も天候に恵まれ、雨に降られることなく家まで到着。釣場となった公園近辺の道の繋がりを理解したため、次からは信号を待つ回数を減らせそうだ。
 また来よう。


今日の英語:Low tide

いいなと思ったら応援しよう!