見た目はアヒルかアマガエル
私の母は「地味な変人」だ。奇抜なところはないのに、様々なステータスを繋ぎ合わせると凡人ではなくなってしまう。
母には耳鳴りの持病がある。原因は加齢か夫源病かは分からないが、ともかく数十年来の症状だ。しかしそれを気に病んでいない。日常会話には差し支えないし病院へ行けば必ず治るようなものでもないからと放置している。私は以前ドラッグストアや内科医院で働いていたことがある。そこで耳鳴りの症状を訴える人はほぼ皆蒼い顔をして「どうにかならないか」と症状を訴えた。しかし母は「いつもセミが鳴くようなジージーした音がする」と言うだけで困った風でもない。イタリア歌曲やバイオリンを習っているというのに。
さらに母は途轍もなく寝付きが良い。ギヤが『眠い』に入れば3秒で眠りに落ちる。一緒にTV番組など観ていても、さっきまで会話していたのに気が付くと9割目が閉じていることもしばしばだ。あるとき「昨日は寝る前に緑茶を飲み過ぎたから寝れなかった」と言うので何時間くらい目が冴えてたのか訊いたら10分だと言う。
「それは寝付きが悪いうちに入らない。」
「そうなの?」
「普通は1時間とか、少なくとも30分以上でしょ。不眠症の人なんか3時間ぐらいウトウトするけど寝れないっていうじゃん。」
「時間がもったいなくない?」
「でも寝れないから不眠症なんだろ!」
「あ、そうか。」
決して元気溌剌というタイプではないが、年齢の割に服用している生活習慣病の薬はない。母は速度は出ないが墜落もしない飛行船のような人だと思っている。
今日の英語:Good sleep