Ventura - 夕焼け - 帰路 - ラジオ - 上を向いて歩こう - 涙
その日は、典型的なカリフォルニアの青空がどこまでも澄み渡っていた。
海はというと、これまた典型的な美しいうねり。波のラインが次から次へと巻いているのが駐車場から見える。
パーフェクト・ブルーの空にパーフェクト・ウェーブ。
VenturaはLos Angelsを海岸線に1時間半ちょっと北にあがった所にある海辺の町。西海岸には幾つかサーフポイントがあるが、ここの波は、一旦乗るとかなり長いことロングライドができるのが特徴だ。何度もロングライドを繰り返しては沖へ戻るのをしばらく繰り返した。
しばらくして波間に浮かびながら、波待ちを一旦休止。
陸の方を振り返ると大きな空の下に連なった山が何とも雄大でいい。
岸辺に、やしの木がならび、やしの木と山の合間には緑生い茂る林が...そして空にはカモメらしきがとんでいる。
陸へと向けていた視線を、ボードの上に寝そべりながら
真上に広がる大きな青空にうつす...
でかい....青い....青すぎる....吸い込まれるなんてもんじゃない。
Melt in the sky...空に溶け込むようだ。
海につかった体が波に揺られた感覚と、青空の広さとが見事に調和して青空と自分が一体化してしまったような錯覚におちる。
時間を忘れるというのは、こういう事なのかも知れない。かなり長い時間、溶け込んだ感覚に浸っていた。
そして止まっていた時間が動き出したのは空の青が、オレンジ色に染まりかけたとき。
その日、最後の最高の波にのって岸に戻る。とめていた車のトランクにつんだ1ガロンの水が日中の焼けるような太陽のせいでお湯のように温かい。
冷え切った体にそのお湯をかけると
体全体がいっせいに安心したようになって心地よい気だるさに包まれた。
車を駐車場から出す前に海を振り返ると
まだ波間にただようサーファーたちが夕日にたそがれてる。
名残惜しさとまた明日という気持ちで
フリーウェイを走らせると、夕焼けにあう音楽がラジオから流れてくる....
窓から入ってくる風と夕日に照らされた海に道路、肌にしみついた潮の匂いとワックスの香り。
全身の感覚が最高に敏感になった状態。
頭に思考は一切ない。
そこにあの曲が流れた....
坂本九の"上を向いて歩こう"...
とめどなく涙が流れた...ひたすら流れた...
そして何で涙がでるのか分からない。
嬉しくて感動しての涙なのか、
悲しみの涙なのか...
いや...心を洗われたせいで流れた涙だろう...
あの時の時間はもう戻ってこない。
そして二度とそれを再現することはできないだろう。
次々とうねる波のそれぞれが唯一無二であるようにあの瞬間に出会えたのはあの日だけだったろう。
人生には大切な瞬間が何度かやってくる。それは波のようかもしれない。
ここしばらく大きな波を見ていない。
でも何となく波が向ってる気がするんだ。その波が来たときに最高の状態で乗れるようにしたいもんだ....
2006/5/27の日記より
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