【社会保険制度見直し】第三回年金受給開始時期の選択肢拡大
この4月から段階的に社会保険制度の見直しが始まりました。大きく分けると以下の4点が大きなポイントです。
1.社会保険の適用拡大
2.在職定時改定制度の導入
3.年金受給開始時期の選択肢拡大
4.確定拠出年金の加入要件緩和
今回はこの中でも「年金受給開始時期の選択肢拡大」について説明します。
第一回、第二回のnoteは以下にありますのでよかったらご覧ください。
1.社会保険の適用拡大
https://note.com/bluesky_3515/n/n64d2b35ef182
2.在職定時改定制度の導入
https://note.com/bluesky_3515/n/n4b09783bf48e
1.年金受給の制度と今回の変更点
これは文字通り、年金受給開始の選択幅を増やす制度です。
現行制度では60歳から70歳の間で選ぶことが出来るのを上限75歳まで受給開始を遅らせることができるようになります。
現行制度でも65歳を基準に早く受け取り始めた場合(繰上げ受給)には減額、65歳より遅く受け取り始めた場合(繰下げ受給)には増額した年金を一生涯受け取れることになります。このため70歳まで繰り下げた場合は65歳から貰う額の42%増だったのが75歳まで繰り下げると84%増まで増やせます。
具体的な減額、増額率は下記の図をご覧ください。
2.平均寿命のデータ
2020年の実態調査によると日本の男性の平均寿命は81.64歳、女性は87.74歳となっています。ただし中央値で見ると男性89歳、女性92歳となり多くの人が90歳程度まで生きていることがわかります。男性は特に「80歳位まで考えておけば…」と思いがちだが意外と長生きするのだ。70代を超えれば殆どの収入が年金になることが予想されるので年金制度理解の重要性がわかるのではないでしょうか。
3.年金開始時期をどこまで伸ばすか
まず自分の生活費と年金がもらえる額が分かってないとどこまで開始時期を延ばすのが適当なのかわかりません。そこで各種データを見てみよう
(1)年金収入について
まず年金収入については
国民年金の平均額は男性5万8,866円、女性5万3,699円
厚生年金+国民年金の平均額は男性16万4,770円、女性10万3,159円
つまりサラリーマンや公務員の夫婦2人で考えると、共働きなら26万になるけど、専業主婦の家庭は21万、自営業は11万程度が基本的な年金になる。これ以外にも民間の年金保険や自営業なら国民年金基金などで収入があるかもしれないがこれが基本的な収入になります。
(2)生活費について
夫婦2人で老後生活を送る上で必要と考える最低日常生活費は令和元年調査で月額で平均22.1万円。余裕のある暮らしには36.1万円必要と言われます。特に最低日常生活費と言われますが、月々かかるお金以外にも「住宅の修理」や「突然の入院」などにも備えなければいけません。人それぞれのライフスタイルや住んでいる地域によって物価格差もありますが、やはり年金だけでは心もとない現状が浮かび上がります。
(3)年金受給開始時期をいつまで伸ばすか
65歳時点でもらえるのが上記の平均値なので仮に専業主婦の家庭で毎月0.7%増で計算すると、最低限なら1年、余裕ある暮らしなら7年程度開始時期を延ばす必要がでてきます。ただし、開始時期を延ばして繰り下げ受給をする際には気を付けなければいけない点もあるので記載しておきます。
①繰り下げたことで貰える総額が減るかもしれない
開始時期を延ばせば単月で貰える額は増えるが、総額では長く生きないと貰える額は少なくなってしまいます。概ね11年間以上生きれば開始時期を遅らせた方が多く貰える計算なので自分の健康状態や貰える年金額と生活費を計算して決めましょう。
②加給年金がもらえなくなるかもしれない
厚生年金保険を20年以上収めていれば、配偶者または子がいるときに加算される年金で、家族手当みたいなものです。奥さんが65歳未満、子供は18歳到達年度の末日までの間だけ貰えます。ここで重要なのは「年金をもらってないと加給年金は加算されない」ということです。繰り下げている間に奥さんが65歳を超えてしまったら加給年金はもらえないことになるので注意が必要です。金額は日本年金機構の情報を載せておくので以下をご覧ください
4.まとめ
今回の制度改正は平均寿命が延びたことにより選択肢の幅を広げたものです。しかし今までも70歳まで繰り下げ受給ができたのですが2019年度実績で、国民年金で1.5%、厚生年金で0.9%に過ぎないというデータがあります。つまり長生きするよりもらえないことの方が損すると考えている実態がわかります。
しかし、繰り下げ需給は途中でやめることができますが年金貰い始めたら繰り下げはできませんので最初は年金貰わずに働いて繰り下げて、仕事が難しくなってきたら年金貰い始めるという選択肢も選べます。
どちらにしても、知識がなければ何も選択しようがありませんので、今回の変更点を理解しつつ老後資産について考えてみてはいかがでしょうか。