対戦性のある「スポーツ」は盛り上がるが、それは結果的な一側面でしかない - 音楽ゲーム×e-Sports論愚考

noteに「音ゲーの競技シーンはいまどうなっているのか、esportsとしての可能性はあるのか」という記事があります。
興味深い記事でした(社会性フィルター)。
遅まきながらこれを読んで、ひとつ考えたことがあります。

言うまでもないことではありますが、一般的に言うスポーツのすべてが相互作用による対戦性を持っているわけではないですよね。
たとえば、短距離走や投擲などの陸上競技がそうです。
これらは対戦性を持っていないにもかかわらず、オリンピックなどの世界大会を通して世界中の人々が熱狂するわけです。
そこに音楽ゲームとどのような違いがあるのでしょうか。

一方、実際に対戦性のあるゲーム(そしてフィジカルスポーツ)は人気があります。
その統一理論は「観客へのわかりやすさ」ではないかと思います。

IIDX では RANDOM というオプションを使用してプレイするのが常態化しています。
結果として、時には非常に押しづらい「ハズレ」譜面が発生して、プレイヤーたちは苦戦するわけです。
しかし大会選手たちは、大会の場でとんでもないハズレ譜面に遭遇しても、
そんじょそこらのプレイヤーがアタリ譜面ですら出せないようなスコアを平然と出していくわけです。
それを見て IIDX のプレイヤーたちは「なんて凄いんだ」と熱狂するかもしれません。
ですが、その偉業を IIDX というゲームに初めて触れる視聴者がわかるでしょうか。
アタリ譜面を見てもハズレ譜面を見ても、なんだかすごい密度のノートがたくさんあってそれをすごい人達がクリアしている……というふうに見るのが精一杯でしょう。

またこういう例もあります。
先日 DOLCE.氏の公式配信にて IIDX のアリーナモード(これがゲーム外での競技性にあたるかどうかの議論はいまは置いておきます)で
DOLCE.氏とマッチングしたプレイヤーが偶然にも皆鍵盤特化のランカーたちであり、
どちらかといえばスクラッチ特化の DOLCE.氏が大魔王とまで恐れられるほどのトップランカーであるにもかかわらず、
彼らの選曲で寄ってたかってボコボコにされるという珍事が起きました。
私はこれを見てとても面白いと感じましたが、このメタゲームの面白さは IIDX における譜面属性の違いや、ランカーの知識がなければわかりません。

短距離走と比べてみます。
私たちは、日常的に「走る」という行為を行います。
だからこそ、自分とくらべて世界選手たちの凄さが手に取るようにわかります。
私たちは、短距離走の世界記録を知っています。
だからこそ、記録更新の如何を固唾をのんで楽しめます。
しかし、残念ながら音楽ゲームはそうではありません。
結果として、内輪ノリに近い状態が生まれてしまい、一般視聴者の心を掴むことに失敗し続けているのではないでしょうか。

対戦性のあるゲームが人気を博している理由も「わかりやすさ」を軸に考えれば納得がいきます。
明確に有利不利がわかり、「勝利」そして「相手の敗北」が目に見えてわかるということは、一般視聴者への求心力に長けているということです。
格闘ゲームなんてまさにその極北です。
殴る蹴るを繰り返し、相手の行動を許さず、相手の体力(これがまたこれ以上なく分かりやすく表示されているのです。現実の格闘技以上と言えるでしょう!)がなくなれば勝ち!
わかりやすいことこの上なし。 殿中にござる。
格闘ゲームプレイヤーにぶん殴られても文句は言えないほど暴力的な要約ですが。

そしてそれを音楽ゲームが得るためには、システム上、ゲーム外からの働きかけによるものしかないと思うのです。

…………

さて、ここまで書いてきた文章が実際に音楽ゲームをプレイしている人たちの目線に立って「盛り上がり」を書いたものではないことは、まあ明らかです。
プレイヤーからして対戦要素(相互作用)が盛り上がるかは……ポップンのオジャマ部門。
では、実際プレイヤー目線で音楽ゲームという“e-Sports”は盛り上がっているのか?
こんなのは note の一記事を割くまでもありません。
実のところ音楽ゲームは盛り上がっています、プレイヤーたちはそうでないと確信しながらも。
だって、盛り上がらなかった音楽ゲームがどうなるかは、みんな知っているでしょう?

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