擬態
私は普段はなんの変哲もない
30代の社会人の端くれとして生きている。
裏の顔はマゾだ。どこかのSMクラブに属してるなんてことはない。
同じように社会人の端くれとして生きているご主人様がいる。
どちらが本当の顔かという議論はさほど有意義ではない。
どちらも私であることに変わりはないと思いながら、その狭間に思い悩む自分もいる。
マゾでいてもいい時間はご主人様が与えてくださる。
私の顔をした仮面をつけて、週の大半を労働に費やして日々生活している。
マゾでいる時は、その仮面を外せる。
人間の女に擬態している。マゾを隠してコソコソ生きている。
擬態はそれなりに疲れる。
ずっとマゾでいられたら楽になるんじゃと思いながらも、
そうなったら自分の中の均衡が崩れてしまうような気もしている。
ご主人様はラバーマスクや、レースのマスクなどを好んで私につけて下さる。
皮の腕輪のような拘束具をつけられる。
マスクをして拘束されて、擬態が解かれる。
なんとも滑稽な話だ。