“友達の家”感覚で通うカフェ&バー。代々木公園 「nephew」にて
代々木公園駅から徒歩3〜4分ほど。裏路地を進んでいくと、目に飛び込んでくる爽やかなブルーの扉。ここが、クリエイティブスタジオ「and Supply」が運営する「nephew」だ。
“カフェ&ストリートバー”を謳っているように、朝から昼まではハンドメイドの焼き菓子とこだわりの各種ドリンクが楽しめるカフェ。夜になると、オリジナルのクラフトカクテルがカジュアルに味わえるバーに姿を変える。
かつて一軒家だった物件を解体から手を加えてリノベーションした「nephew」は、「and Supply」代表の井澤卓さんたちが、海外を旅した際に受けたインスピレーションを元にデザイン。“懐かしさ”と“新しさ”が同居した唯一無二の空間が広がっている。
見た目だけではない。シナモンやナツメグなどのスパイスがきいたキャロットケーキ、コーヒーを使ったカクテルなど、創意工夫が施されたメニューは、ここでしか味わえないと口コミで評判に。目立ちにくい場所にはあるものの、訪れる人は後をたたない。
こうした状況に、井澤さんは「とくにターゲティングは意識せず、自分たちが本気で作りたい場所を作りました。結果、それが多くの方に受け入れられるというのは嬉しいことですね。ときおりInstagramで『〇〇系カフェ』といったカテゴライズをされることもありますが、そうした“くくり”は今後も意識せず、営業していけたらと」と、流行に左右されないスタイルを貫く。
いまでこそ「おしゃれエリア」としての印象がついた代々木公園〜富ヶ谷だが、周辺には商店街があり、下町の面影も残す。それもあってか、常連には近隣の住民も多いという。
「ちょっと歩いただけで、いろいろなカフェがあるんですが、“座れるカフェ”は意外と少なくて。腰を据えて落ち着けるっていうので『nephew』を利用していただく方が多いですね。スタッフの距離感も近いので、毎日あいさつがてら来てくださったり」
“スタッフの距離感が近い”ということを表すひとつが、スタッフのファッション。井澤さんいわく「細かい決まりなどは特にありません。 さすがに夜は照明も落として雰囲気も変わるんで、ノーカラーのシャツで揃えるぐらいのことはしていますが。でもそれぐらいですね」
会社がマニュアルを定めるのではなく、スタッフの自主性に委ねる。そうした“見えないルール”が、開かれた場所を作り上げる。
「お店は“自分たちの家”で、お客さんは“家に遊びに来た友人”という感覚です。へりくだったり敬ったりというよりも、対等な存在でお客さんを見ているからこそ、良いコミュニケーションが生まれる。そうしたカルチャーを最大限理解しているスタッフがいるというのも大切です」
空間、メニュー、人。
それぞれで「自分たちが作りたいもの」を追い求めてきた「nephew」。その独自性の理由には、「場所」という要素もあるのかもしれない。
井澤さん率いるクリエイティブスタジオ「and Supply」は、現在池尻大橋「LOBBY」、代々木公園「nephew」、神泉「Hone」と3店舗展開。どれも業態は異なるが、「奥まった立地」にあえて店舗を構えている。
「飲食店では通常不利となりますが、自分たちのクリエイティブが介在することにより、いかに物件価値をアップデートできるか。挑戦し甲斐がありますし、心が躍りますね。制約があることで、ここにしかない場所を生まれるんじゃないでしょうか」
だからこそ、感覚には頼らない。細かい収支計画、毎日のPLチェックなど、“システムに落とし込む”ことを徹底し、いまの形がある。新店舗が開店〜営業していく際に出た数字は、自身のnoteにも詳しく記してある。
「やっぱり経営者ですから、いくら居心地の良い空間を作れても、店として長くあり続けないと意味がない。なので、10年後も今の店舗がありつづけることが目標ですかね。ただ、個人それぞれのゴールはひとつじゃないので、過程の中で、やりたいことがあったら応援するし、バックアップもしていきたいですね」
SHOP DATA
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