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「うれしい」よりも「考えさせられた」横浜優勝

2024年シーズンは横浜DeNAベイスターズが26年ぶりに日本一を達成した。球団としては3回目。南場智子オーナーの本業DeNA社参入から13年目、生え抜きの監督が日本一を達成したのは75年目で初、3位通過のチームが日本一を成すのは2010年のロッテ以来2回目に当たる。

「勝利の女神はマナーの悪い客を嫌う」
幼少以来のファンである佐藤もまた喜びを抑えられないでいる。弱小チームの悲哀を耐え忍んだ「番長」三浦監督、田代・石井コーチらの指導、牧選手をはじめとした選手の頑張り、TBS社とは比べ物にならないくらいに優れたマネジメント面で頑張ったDeNA社や裏方さん、そして佐藤含めこの日を待ち望んだ多くのファンの願いが届いたのは僥倖である。
それでも守備力順に並ぶ団体競技で、横浜のような強打一本槍のチームが頂を占める結果は稀だ。佐藤には表題通りベイスターズの頑張り以上に、ホークスの自爆が戦局に影響したと映る。実際横浜での日本シリーズ序盤2戦はホークスの2戦2勝となりタイラー・オースティン以外の打撃陣も低調で、場所は福岡。佐藤のアタマにはストレート負けの可能性すらチラついていた。
それが変わったのは福岡で行われた3戦目のことだ。ホークスホームで行われたこの試合、一塁側で酒で出来上がった客が喧しく指笛を奏でていたという。気になった横浜の先発東克樹は指笛を止めさせたが、妨害に苦しんで投げる東をホークスベンチが嘲笑う。監督たる小久保裕紀は「爆笑した」といえば、打撃コーチの村上隆行は「宮城(大弥。オリックス)の方がいいピッチャー」と言い放ったという。
(オレたちは舐められている…!)
ベイスターズの選手たちが発奮したのは想像に難くない。試合前に桑原将志が
「お前ら、悔しくないんか?」
と発破をかけたばかりだった。結果は周知のとおり序盤2戦と正反対の旗色で試合が進んでいく。「強打だが守備難」の選手が多いベイスターズにはDH制の相性が良かったことも追い風になった可能性もあるだろう。万年Bクラスであるベイスターズに対し、資金力一番で勝ち慣れ過ぎていたホークスには泥臭さを出せなかったこともあるだろう。福岡での3連戦はすべてベイスターズが勝利して王手をかける。横浜に場を移した6戦目は1戦目に敗れた有原航平の弱みである立ち上がりを衝き11得点を奪って日本一を決めてみせた。

「歴史は繰り返される」
敗れたホークスでは軽率な発言で災禍を招いた小久保と村上の責を問う声が多く挙がっている。ホークス選手としての莫大な功労を持ち、監督の椅子を約束されていた小久保は「ホークスにとって大事な人」である以上、村上は小久保の分まで責を負うことになるだろう。
因みに35年前に先例がある。巨人対近鉄の日本シリーズで3連勝した近鉄の加藤哲郎は「巨人はロッテより弱い」と言い放った。新聞を親会社に持つ巨人側の印象操作という説もあったが、阿波野秀幸は事実と認めている。結果は承知の通り巨人が4連勝して逆転で日本一を飾り、日本シリーズ4戦全敗の近鉄は一度も日本一に上り詰めることもなく2004年でチーム消滅の憂き目を見た。村上も近鉄の選手であり、二の舞となったと言わざるを得ない。ちなみに加藤は村上の発言に「なんて余計なことを…」と絶句したが加藤の心配通りとなった。
ホークスのファンが村上と小久保に怒りの矛先が向くのはお門違いと思えない。僭越ながら佐藤も3戦目の東の力投に感じ入るとともに、
(これ、流れ変わるんじゃね…?)
という予感は頭を翳めた。だがその前にファンのマナーが悪いと勝利の女神が勝たせてくれなくなるという迷信は現実になったと思えてならなかった。少なくとも佐藤は応援マナーについて、もっと言うなら日頃の行いを考えさせられる出来事になった。

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