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その先にあるもの


いつからこの場所にいるのかはっきりと覚えてない。気が付いたらわたしはここにいて、穏やかな日々を過ごしていた。


不満はひとつもない。逆に恵まれているぐらいだ。

ご飯が食べられ、風雨をしのげる屋根や壁がある。それに加えて温かい人たちに囲まれ、わたしにはもったいないほどのお務めもある。

恵まれてるからこそ思いにくい"願い"。それなのに考えないようにしようと思うほど、頭の中を離れてはくれない。

わたしには捨て切れない"自我"があった。

神聖過ぎる毎日。時間も日にちもわからなくなるほどの、悠久な時。そんな日々に自分が"人"なのか、はたまた違う何がなのかわからなくなる時がある。



一線を超えてしまう事は容易い。



違う何かになりえてしまう時、わたしの心がそれを猛烈に引き止めにくる。

わたしはまだ、生きてる実感を感じていたい。







たまにある余暇。一年の間に少しでも自分の時間を過ごせるなんて、なんてもったいないことなんだ。その半日、その一時間がわたしの彩りの世界だった。

明るいこの場所とは対象的に、周りは薄暗い山に囲まれている。だからめったに侍女はこの場所を出たりしない。ましてや一人なんかじゃ出やしない。でも、お触れがあるわけじゃない。ただわたしたちの心が、"行ってはいけないよ"と繋ぎ止めてるだけ。



その先にあるもの



ただなんとなく、この先を見たい好奇心でいつかの余暇にこの場所を出てみた。小さな好奇心と破裂しそうだった"自我"がわたしを突き動かした。

不思議となにも怖くなかった。心では"ヤバいところに来てしまった"と。だから引き返そうと思った矢先、わたしはその先に光をみた。







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