鉄道絵本レビュー(10) カンカンカンでんしゃがくるよ
鉄道絵本紹介、第10弾は、こちらです。
「カンカンカンでんしゃがくるよ」
作:津田光郎
新日本出版社
今回は、踏切もの〜なぜ踏切なのか
鉄道絵本の1ジャンルとして、「踏切もの」というものがあると自分は勝手に思っています。
踏切を舞台にした鉄道絵本はいくつもあります。
なぜなのでしょうか。
日常生活の中で子どもが鉄道に親しむ機会として、「踏切を行き交う列車を眺める」というのは、よくある体験の一つだからでしょう。
そして子どもにとって、インパクトある鉄道体験だから、なのではないかと思います。
駅のホームや、沿線のどこかで列車を眺めたり、手を振ったりすることもよくある体験だと思います。
しかし踏切では、警報器がカンカンカンと鳴り出し、赤いライトがチカチカ光りだし、遮断機が降りてくる。
このアクションそのものもおもしろいですし、どっちから列車が来るのだろうと矢印を見て待つ、というのは、多くの子どもにとってワクワクする体験ですよね。
そして轟音と共に通り過ぎる列車の迫力、これは強く子どもの心に残るのではないでしょうか。
踏切にやってくるのは…
というわけで、今回の絵本です。
表紙はオレンジ色の201系、裏表紙は貨物列車の最後尾、緩急車(ヨ6000あたり?)が見えています。国鉄時代を感じさせる、渋いセレクトですね。
さて、本文は「カンカンカン でんしゃがくるよ。 カンカンカン」と、タイトル通りの一文から始まります。
ぞうくんとうさぎちゃんが踏切前に立っています。
「どんぐりむらのふみきり」だそうです。
メルヘンチックな絵です。
まずやってきたのは「きゅうこうでんしゃ」、211系です。
テツとしては、近郊型電車の211系じゃ急行じゃないだろう!!と思いますが、2012年(平成24年)4月に東海道線・伊東線での定期運用を終了したことにより、同年5月にさよならイベントツアーで「急行伊豆」として走った例はあるようです。
この本の発行年は1990年(平成2)2月なので、さよならイベントの「急行伊豆」は関係なさそうです。
1985年(昭和60年)に登場して、1991年(平成3年)まで増備が続けられた211系は当時まだ最新の電車だったので、快速列車などとして活躍していたことと思われます。
前面の種別表字幕も、ちょっとはっきりしませんが、よく見ると「快速」と描いてあるように見えます。
子どもにわかりやすいように「きゅうこうでんしゃ」としたのでしょうね。
まだまだやってくる電車
踏切はまだ開かず、次々と電車がやってきます。
なんと、うぐいす色の帯の山手線205系と、オレンジ色の中央線201系がすれ違います!「どんぐりむら」の踏切のはずですが、ずいぶん都会な感じです…
そしてさらに、続けてやってくるのは、EF66が牽引する貨物列車!
黒い有蓋車ワム・無蓋車トム・バスを載せた長物車チ・赤い車運車ク5000?・ブルドーザーを載せたチ・緑の国鉄コンテナを載せたコキ・とび色の有蓋車ワム80000?・黒い2軸タンク車タム・黒いボギータンク車タキが2両・白地に青帯を巻いた冷蔵車レム・そして車掌車ヨ6000?と続きます。
もう、国鉄時代満開!の車種セレクトですね。
ここでようやく踏切が開きます。
少し日が暮れ、また踏切が鳴りだし、今度は特急列車です。
なんと583系!東北へ向かう夜行列車でしょうか。
「どんぐりむらのふみきり」なのに…
これだけの車種が通る踏切って、上野〜日暮里間とかでしょうか!?
実際には山手線の踏切は、今は駒込駅〜田端駅間にしかないですし、
2005年までは池袋駅~目白駅間にもありましたが、そこでもここまでの車種は見られないし…山手線と中央線がすれ違うとなると、新宿駅〜代々木駅間か東京駅〜神田駅間ですが、踏切はないし…
ともかく「どんぐりむらのふみきり」は大都会というか、大幹線ですね(笑)
そして夜、最終列車を見送って、踏切の1日が終わるのですが、去って行く電車のシルエットからは、形式が特定できないのがなんとも残念です(笑)
ほのぼのした小さい子向けのふみきり絵本ですが、国鉄時代全開な車種選定が、大人の鉄道好きにもなんとも楽しい一冊です。
ぜひ読んでみてください。
今日もありがとうございました。
〜この絵本に登場する車両〜
全て国鉄型
電車
201系通勤型電車(オレンジ)
205系通勤型電車(うぐいす色帯)
211系近郊型電車(湘南色帯)
583系特急型寝台電車
電気機関車
EF66高速貨物用電気機関車
貨車
有蓋車ワム(黒・形式不明ととび色ワム80000?)
無蓋車トム(形式不明)
長物車チ(2軸車とボギー車・形式不明)
車運車ク(ク5000?)
コンテナ車コキ(コキ5500?)
タンク車タム・タキ(2軸車とボギー車・形式不明)
冷蔵車レム(形式不明)
車掌車ヨ(ヨ6000?)
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