鉄道絵本レビュー(6) ちかてつてっちゃん
鉄道絵本紹介、第6弾はこの本です。
「ちかてつてっちゃん」
作:井上よう子
絵:尾崎玄一郎
岩崎書店
この本は、たまたま書店で見かけて出会いました。
自分的には、かなりインパクトのある表紙でした。
どう見ても東京メトロ(かつての営団地下鉄)の5000系じゃないですか!!
これはなかなかシブい題材です。
営団地下鉄5000系について
この営団5000系(と言った方が自分的にはしっくりいくので、そう書きます)は、1964年(昭和39年度)に登場、400両以上が製造され、営団地下鉄東西線と千代田線で活躍しました。
東西線では長らく主力車両として活躍、千代田線でも当初は本線で活躍しましたが、1981年(昭和56年)には北綾瀬支線用の3両編成2本を残し、東西線の輸送力増強用として転属しました。
引退は、東西線が2007年(平成19年)、千代田線北綾瀬支線が2014年(平成26年)だそうです。末期には、自分もどちらの写真も撮っているので、探してまたの機会に紹介できればと思います。
主人公の「てっちゃん」について
絵本の表紙の車両の帯の色は、東西線の水色ではなく、千代田線っぽい緑色ですが、緑が薄めなので、むしろ都営地下鉄新宿線に近い色と感じます。行き先表示「にしこうえん」からも、東西線そのものを取り上げた作品ではないことがわかります。
この車両が、この本の主人公、ちかてつのてっちゃんです。毎日生き生きと仕事をしています。
途中の「みなみえき」でいつも出会う「きたまち」行きの別路線の仲間、「かっちゃん」も同じ営団5000系ですが、見た感じでは、こちらは5000系の中でも少数派のアルミ製車体の車両のようですね。
ちなみに、てっちゃんは側窓の上下にあるコルゲート(初期のステンレス製車両にある、車体組立て時のスポット溶接により生じる歪みを隠すために設置された飾り板)があるステンレス製車体です。
営団5000系では、こちらの方が多数派でした。
かっちゃんの帯は黄色、同じ営団(東京メトロ)有楽町線風ですが、有楽町線には5000系の配置実績はありませんね。
後年には有楽町線の07系が東西線に転属した実績もあるので、車両規格は共通と思われます。
どちらの車両も、1989年からの冷房化改造後の姿をしています。自分的にはこの2本の並びで、すでにワクワクが止まりませんでした。
多数の地下鉄車両が登場
かっちゃんとあいさつを交わしたてっちゃんは、さらに地下深くへ潜って行きます。
そして、「にっぽんのだいとかい」で活躍する地下鉄車両が、地下空間の透視図的な画面を行き交うページで、多数登場します。
てっちゃんとかっちゃんはもちろん、営団千代田線6000系や有楽町線7000系に半蔵門線8000系、東西線仕様の5000系、東西線乗り入れの国鉄301系、日比谷線3000系、銀座線01系に丸ノ内線02系などが登場。
実在した懐かしめの車両を中心に、実在しないカラーもあったりして、本当に楽しい地下パノラマ図です。
その後の展開は詳しく描きませんが、てっちゃんを置き換える車両も千代田線06系っぽいですし、ちょっと前の東京メトロ(営団地下鉄)の車両がオールスター総出演、といった感じです。これは楽しい!!
てっちゃん南の国へ
ここからは(ここまでも、ですが…)ネタバレになりますが、てっちゃんは日本の大都会からは引退して、南の国へ。そこでかっちゃんとも再会して再度活躍するのですが、これはあとがきにもあるように、実際にあった話に基づいています。
東京メトロの5000系・6000系・7000系・05系、東葉高速の1000形(こちらも東西線5000系の譲渡車ですね)、都営地下鉄6000系、東急の8000系・8500系、JR東日本からも103系や203系・205系といった、たくさんの日本の通勤電車が、インドネシアに譲渡されて、大都市ジャカルタ近郊の鉄道で活躍しています。総勢1000両以上だそうです。すごい数ですね〜
派手な塗装に塗り替えられているあたりも実例と同じですね。
素晴らしい着想
役目を終えた車両が、第2の人生を送る、というのは鉄道絵本の古典、「きかんしゃやえもん」と同じですが、近年海外に譲渡された地下鉄電車を題材にする、というのは素晴らしい着想だと思いました。
そして、見て「これは営団の何系だよね!!」とピンとくる絵柄がほんとに素敵です。
2016年第1刷発行の絵本ですが、末長く読まれる本になってほしいなと思います。
今回も読んで頂きありがとうございました!!
〜この絵本に登場する車両〜
営団地下鉄(東京メトロ)
東西線5000系(てっちゃんとかっちゃんもこちらがモデル)
千代田線6000系・06系
有楽町線7000系
半蔵門線8000系
日比谷線3000系
銀座線01系
丸ノ内線02系
国鉄
301系(地下鉄東西線乗り入れ用)
他形式不明車もあり
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?