西野亮廣エンタメ研究所から学んだ事を職場に取り入れてみる♯2
【現状の敵は何だ?②】
二名の方が亡くなった事で、この職場の内情が明らかになっていきます。
最初の事故では早めに「死んでしまう」という事を報告したが、誰も動かなかったとお話した。
では、何故動かなかったのか?
まずは自分からです。
確実に命を落とす事がわかっていながら、報告のみで動かなかった。
動かなかったというより動けなかったと、言うべきでしょうか。
たとえ報告したところで、すぐに動いてくれない事はわかっていました。
でもルールなので報告しました。
動かないからといって、自分が勝手に動くと「勝手な事をするな」と、言われます。
そういった行動は、暗黙の禁止事項になっていたんです。
この様な職場はまだ数多くあると思います。
こういった職場で働いてる方は、「じゃ、自分に何が出来るの?」と、思うでしょう。
答えは一つしかありません。
自己防衛です。
自分はちゃんと報告して義務は果たしていますという自己防衛しか出来ないのです。
悲しい事ですが、これが現実です。
人の命がかかっているんだから、勝手にやってしまえばいい!
そう思う方もいるでしょう。
しかし、こういった現場に身を置いている方はそういった感情すら、削がれていってしまうのです。
どうせ言ってもしょうがない。
しょうがないけど、報告だけしておけば自分には責任はない。
そんな感情に陥ってしまいます。
自分が、この仕事を始めたばかりの頃、会議でブチ切れた事がありました。
それは、八月の暑い日の事でした。
自分が出勤した時に、外で座り込んでいる利用者がいました。
顔は真っ赤になり汗だくでTシャツから出た腕も真っ赤で、ぜいぜい言いながら座り込んでいました。
ひと目で「危険」とわかる状況でした。
自分はその時、まだ経験は無かったですが、「熱中症」「日焼けによる火傷」等、すぐに思い浮かびました。
この方は、発語が無く自分から訴える事が出来なく、体温調節も上手く出来ない方でした。
辺りに職員はいません。
自分はすぐに、朝からいた職員に事情を聞きました。
朝食後に外に出たそうで、声掛けが通らなかった。
それだけでした。
この職員はこう言っています。
「動かないからしょうがない」
では何故、
①声掛けが通る職員を呼ばなかったのか?
②帽子を被らせないのか?
③水分補給をしなかったのか?
④目の届かない所にいるのに心配じゃないのか?
素人の自分でも、次から次へと疑問が湧いてきました。
その職員は続けてこう言いました。
「報告はしてある」
幸い自分が動かす事が出来たので、建物に入ってもらい、水分補給をして身体を冷やし大事には至らなかったのですが、顔と腕は日焼けで真っ赤でした。
もしも自分が休みだったらどうなっていたんだろうと考えると、ゾッとしました。
この月の会議で自分はこの件を訴え、「こんなやり方をしていたら誰かが死ぬ」「人様の命を預かっているんだ」と言いました。(♯0参照)
しかし、自分以外のその場にいた全員が、「そんな事は無い」「死ぬわけない」と半笑いで、熱い奴が一人で何か言っている。
そんな程度に聞いていて、数分でこの議題は終わりました。
何なんだこの仕事は?
当時そう思いました。
この職場の人間は、感覚がズレている。
そもそもコイツらは、本当に人間なのか?
本当にそう思いました。
この職場の「報告」というシステムは既に死んでいるんです。
全く機能していないのに、変えようとしませんでした。
最初の敵はこの「システムエラー」です。
しかし、仮にこの件で事故が起こっても「システムエラー」には一切触れず、「ヒューマンエラー」として終わります。
では、どうするのか?
①もっとちゃんと報告する
②報告の仕方が悪い
せいぜいこのレベルです。
関わった人が責められて終わりです。
仲間を殺していく報告システムで、今どうなっているのか?
責められた人は辞めていきます。
そして圧倒的に人が不足し、少人数で無理やり運営しています。
この負のサイクルで更に悲劇的な状況になります。
辞めていった人は自分の周りの人にこんな所だよ、やらない方がいいよと、宣伝してくれます。
多くの人が辞めていく為、募集をしても人は来ません。
来る人は、定年後の年配の方や、他の職場で対人関係等でモメて辞めた人等が来るばかり。
上層部は人がいないから、来るもの拒まずで採用します。
上手くいくはずがありません。
利用者の障がいレベルと職員のレベルの針が逆方向に向いているのです。
さて、どうしたものか…。
次回はもう一つの事故の実態についてです。
♯3へ続く
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