カゴの中の鳥のカゴの方の話
毎日同じ場所に居て、たいして見向きもされないのだけれど、たまに綺麗にしてもらえて嬉しい。一緒に暮らす一羽の鳥がいるのだけれど、朝の空みたいな色をしていて確かに美しい。その鳥が、止まり木から餌場までぴょんぴょん跳ねて行く。まるで両手いっぱいのスーパーボールの一つが、手からこぼれ落ちて遠ざかって行くように。
私は外へ出ることが苦手だ。何時間も洗濯物の番をさせられる日があるのだけれど、夏は太陽の日差しが体を刺して、アイスクリームが溶けて行くように、私も変わってしまうんじゃないかなんて心配をしてしまう。冬は何回も通りすぎる風が、私の心をどんどん冷たくして行く。喧嘩の後に家を飛びだして、クリスマス一色の街の中で、すれ違う人達みたいに。
私は、ダヴィンチの残した言葉たちが好きだったりする。
−できないことを願ってはいけない。
–感情が多ければ、悩みの中にさらに大きな悩みが生じる。
–私は世の中の役に立つことをするのに疲れを覚えない。
鳥のように自由に飛んでみたいが、私には叶わない。私には感情なんてないと皆思っている。だから、褒められることも、けなされることもない。たまに動きが悪くて八つ当たりされることはあるかもしれないが、私には疲れもない。壊れるか、使えないと判断されるまで、鳥たちと暮らすことができる。
私は言葉すらもたないが、気づいた人たちが残した言葉に救われているし、存在を続けることが出来ている。だから私は、今日も彼の歌を1番近い場所から聴いている。
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