わからない英語
日本の新学期は4月だが、カナダの新学期は9月だった。意欲に燃えまくり大学へ行った。やはり自分で貯めたお金で通うのは、重みが違う。が、始まって間もなく非情にも先生方はストへ突入した。しかも数日、とかでなく、それは2ヶ月近く続いた。勉強する為に遥々海を渡っていった私にとっては、非常事態だった。JacquiとBettyは仕事があるし、他に誰も知っている人もいないし、やることもないし、お金は使えないし。私は途方に暮れた。
が、時は過ぎていき、昼ドラなどを見ては新しい言葉を覚えたりしているうちに、学校は再開された。
授業では、マーケティング、会計、ビジネス数学、コンピューター、経済、ビジネス英語、心理学等を勉強した。一番やっかいだったのが心理学だった。難しい言葉がいっぱいでてきて訳がわからなかった。しかも先生の言う事はだいたいわかるのだが、クラスメートが話す若者言葉がちっとも理解できず、クラスの皆が笑っているのに、私だけ笑う事ができずにいた。
留学生はそのキャンパスで私一人だった。日本人は誰一人いる筈もなく、苦しみを分ち合う人はいなかった。英語は一対一で話すことはできるのだが、グループになるとやっかいだった。話を聞きながら、次これ言おう、と思ったときには次の話題へと移っている。完璧に何の話かわからなくなってボーッとしていると、「祥子はどう思う?」とか聞かれて、返事に困る事も度々あった。
自分が駄目な人間に思えた。私はただひたすら毎日勉強に明け暮れて、自分の駄目さを忘れようとした。