中年が厨二病で病苦を乗り切る話
「また入院することになったの」
と、職場の同僚に話をしたら、それじゃ退屈だろうからといくつか本やアニメを勧めてくれた。
同年代、同世代は、私が仕事に穴をあけてしまう迷惑も顧みず、親切である。「明日は我が身」を知るからこその厚意をとても有り難く感じ、喜んでその方のオススメするラノベをお借りして入院に挑んだ。
「必ず読んでよ。そして語ろう。元気で戻ってきてね。」というメッセージを感じる。
借りた本と、Amazonプライムアプリさえあれば私は無敵。
さらにその仲間は、神社で頂いた快癒祈願お守りまで添えてくれたのだから、心細さは半減した。
薬屋のひとりごと
かぐや様は告らせたい
昼間は明かりがあるので読書に明け暮れ、消灯時間後は耳にイヤホンを突っ込みアニメで楽しんだ。
なんの知識もなくこれらの作品に触れた無垢でウブな私はまんまとどっぷりハマった。
今時の若者はこんなけしからん二次元を楽しんでいるのか。しかもその親世代の私たちまでターゲットにされ食い物にされるとはけしからん、実にけしからんぞー!とニヤけている始末。
おかげで、点滴用留置針の痛みも、絶食による虚無感も見事にやり過ごすことができた訳である。
ところが…
この2作品が進むにつれ、私の暇人脳はいとも簡単に10代乙女に同化し、感化されていくという重篤な副作用が生じてしまった。
更年期、母親介護、自分の置かれている入院手術の現実、退院後の生活、保険の手続き、職場への挨拶、これら全てをいったん置き去りにして、好奇心を拗らせた身体は要介護、頭脳は子どもの逆コナン君現象。
私は友人に「なんてことをしてくれたんだ」と思いつつ、
キュンキュンするね!
とLINEを送る。
友人からは、
「キュンキュンは回復を早めるよ❤️」
とすぐに返事が届いた。
間違いない。
私は子どもの頃から入院することが多かった。母親よりもずっと病院にお世話になる機会があった。
病院には様々な人がいて、治療している人それぞれに不安や悩みを抱えているし、子どもの頃の入院ではその親もまた心配と不安と退屈さの対処法に苦心していたようで、小さなお子さんが退院される時に同室の母親の方が私に「もう捨てるから」と雑誌を何冊も渡して去っていったが、それをあとでめくってみたら、ホラーと女性向け大人漫画だったことに驚いたのを思い出した。
人間ってそういうものなんだな。
若手男性看護師さんがジンシ様だと思えば注射針の痛みなど、、、と思ったが、
「痛いんだよ、ベテランと代わってくれよ」
と言いたくなる現実は何も変わらない。でも少しだけ気の持ちようは変わる。
(若くてかっこいい素敵な男性看護師さん、いつも気にかけてくださりありがとう)と乙女心でキラキラの眼差しを送るのがバレたら痛いが、「あ、陽転してんな、この患者さん」くらいでそっとしておいてほしい。
「私も薬屋ハマって一気見しましたよー」と明るく話してくれた若くて可愛い女性看護師さん、ありがとう。あなたが私の猫猫です。
※キュンキュン作品は用量用法を守って正しく楽しみましょう。
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