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ロック史#17 : オルタナ初期/グランジ
どうも、カート・コバーンの顔ファンです。
前回はこちらから。
90'sは本当にジャンルが多岐にわたるので、ここから時系列は今まで以上にぐちゃぐちゃです。悪しからず。
今回は90年代の退廃的な雰囲気を象徴する、オルタナティブ・ロック、略してオルタナ、の初期を紹介します。
オルタナティブ・ロックとは
オルタナティブ/Alternative は形容詞で
1 (今あるものとは)別の、それに代わる
2 (伝統的基準・方法と対比して)
普通とは違った、新しい、型にはまらない
たぶん2つ目の意味のほうが近いニュアンスだと思います。
80年代の「産業ロック」とは対象的に、60年代半ばの芸術性の高いロックのように、アンダーグラウンドの精神を持って生まれた界隈です。
しかしこれまでのアングラのロックとは違い、がっつりオーバーグラウンドで売れる(売れてしまう)のがオルタナ。
例えばニルヴァーナ、レッド・ホット・チリ・ペッパーズ、レディオヘッド、リンキン・パーク、コールドプレイなど…。みんな売れ倒してる。
音楽性もバラバラで、かなり広い範囲を包括しているジャンルです。
簡単にいえば、ロックの多様化がすすんでいる時代、ということです。
むしろオルタナがロックのメインストリームに移り変わり、HR/HMは90年代後半以降、影を薄めていきます(パンテラが頑張ってたぐらい)。
インディー・ロック
ザ・スミスやニュー・オーダーのような、売れることよりも自分たちのやりたい音楽を重視した80'sのバンドを皮切りに、ニュー・ウェイヴ/ポストパンクの流れを汲んだ(というかほぼ同じ)、インディーズレーベル所属のアーティストの活躍は、オルタナ人気に火をつけた1つの要因といえます。
R.E.M.
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ピーター・バック (ギター)
ビル・ベリー (ドラムス)
マイク・ミルズ (ベース)
マイケル・スタイプ (ボーカル)
文学的でメッセージ性のある詞と激しさを抑えたサウンドで、アメリカ各地のカレッジ・ラジオから人気を集めた、アングラ初期の代表格。
インディー勢は大学のラジオで人気だったバンドが多く(U2もそうらしい)、別名カレッジ・ロックともよばれます。
デビューから注目を集め続け、メジャー移籍後の『アウト・オブ・タイム』(91年)はグラミー賞にノミネートされるなど大成功を収めました。
代表作『Murmur』『Document』『Out Of Time』『Automatic For The People』など。
(曲は「」で、アルバムは『』にしてます)
ピクシーズ
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ブラック・フランシス (ボーカル、ギター、作曲)
キム・ディール (ベース)
デイヴィッド・ラヴァリング (ドラムス)
ジョーイ・サンティアゴ (リードギター)
オルタナの先陣を切ったカリスマ的存在。一定のキャッチーさを保ちながら、R.E.M.とは対照的な狂気じみたヘヴィな世界観。
その影響力は絶大で、"静と動"のスタイルはニルヴァーナに通ずるものがある。
代表作『Surfer Rosa』『Doolittle』『Bossanova』など。
乾いたドラムの迫力とアイコニックなギターリフに、発売から30年経って初めて聴いた私も衝撃を受けました。この音世界にインスピレーションを受けたバンドがどれくらいいるだろう…。
その他ソニック・ユースや、(インディーではないが)ジェーンズ・アディクションらがオルタナの基盤、そしてグランジの土台を作りました。
マッドチェスター
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80年代後半にイギリスのマンチェスターで起こったムーブメント。
ダンスミュージックやハウスの流行によって享楽主義の風潮が広まり、60年代半ばのヒッピーを想起させる「セカンド・サマー・オブ・ラブ」が爆誕したイギリス。
ドラッグ文化と踊れるロックの化学反応がイギリスのインディー・シーンを席巻します。
ザ・ストーン・ローゼズ
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レニ (ドラムス)
ジョン・スクワイア (ギター、作曲)
イアン・ブラウン (ボーカル、作曲)
マニ (ベース)
発表したアルバムは2枚だけ。セルフタイトルの1stアルバムは高い評価を受け、マッドチェスターの中心的バンドとなります。
1stのサイケデリックでキャッチーな作風は、オアシスらブリットポップのアーティストなどに多大な影響を与えました。
マッドチェスターはすぐに衰退し、94年発表の2nd『セカンド・カミング』はツェッペリンに似た泥臭いロックで、1stとは雰囲気がガラッと変わりました。
グランジ
米・シアトルで栄えたオルタナの一種。音楽性はハードロックとパンクを足して2で割ったようなイメージです。
"grunge"=汚い。テンションの暗い曲に、ダメージジーンズと古いネルシャツというファッション。90年代の退廃的な印象はグランジによる影響が大きそう。
ニルヴァーナ
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クリス・ノヴォセリック (ベース)
カート・コバーン (ボーカル、ギター、作曲)
デイヴ・グロール (ドラムス)
グランジ、オルタナ、そしてロックを代表するカリスマバンド。それまでの音楽シーンをガラッと変えてしまいました。
ハードロックの激しさと万人受けする明快さの融合が斬新な代表曲「スメルズ・ライク・ティーン・スピリット」は世界中に衝撃を与え、2nd『ネヴァーマインド』でグランジは一気にオーバーグラウンドに進出します。
しかしその前後のアルバム『ブリーチ』『イン・ユーテロ』の内容から分かるように、もともとはアンダーグラウンドのバンドであり、カートは志向・結果共にポップな作品となった『ネヴァーマインド』にジレンマを感じていました。
双極性障害や薬物依存症にも悩まされていたカートは27歳でこの世を去り、ニルヴァーナは一瞬にしてロックの歴史を変えたバンドとして伝説になりました。
グランジ支配下のバンド5選
① ダイナソーJr. (1983-97, 2005-)
代表作 :『You're Living All Over Me』『Green Mind』
グランジと一概には言えませんが、力みすぎないボーカルと歪んだギターの音が絶妙にマッチしていて、グランジ/オルタナに大きな影響を与えています。
② サウンドガーデン (1984-97, 2010-19)
代表作 : 『Badmotorfinger』『Superunknown』
クリス・コーネルの声域を活かした重厚なサウンドが特徴。ツェッペリンやサバスから影響を受けつつ、常に暗い空気を纏ったスタイルは、2000年前後に登場したオルタナメタルの先駆けといえます。
③ アリス・イン・チェインズ (1987-)
代表作 :『Facelift』『Dirt』
シアトル出身で激しさは抑えめな点はグランジですが、レイン・ステイリーのボーカル含めサウンドはヘヴィメタル味が強く、そちらへの影響も強い。
④ パール・ジャム (1990-)
代表作 : 『Ten』『Vs.』
アメリカ国内ではニルヴァーナを凌ぐほどの人気を誇ったパール・ジャムは、スタジアム・ロックと荒々しいパンクの融合と形容される。ボーカル/作詞のエディ・ヴェダーも名声によるプレッシャーに悩まされた1人。
⑤ スマッシング・パンプキンズ (1988-)
代表作 :『Siamese Dream』『Mellon Collie And The Infinite Sadness』
シカゴ出身ですがグランジブームの波に上手く乗ったスマパン。すごく洗練されたメタル、というイメージで聴きやすい。多様な音にビリー・コーガンの癖強ボーカルが乗っかる。
今回はここまで。
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