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独身偽装男の末路

田辺直之、37歳の会社員。
結婚して8年目になるが家庭のぬるま湯に飽き、独身と偽ってマッチングアプリで女性と出会うことを楽しんでいた。

ある日彼は「さくら」と名乗る25歳の女性とマッチした。プロフィール写真は黒髪ロングの清楚な雰囲気でメッセージのやり取りも慎ましく慎重な性格が伺えた。何度か会話を重ねるうちに彼女から「もっとお話ししたい」と誘われ、田辺はさっそく会う約束をする。

指定されたカフェで待っているとさくらが現れた。写真通りの美しい女性だったがどこか違和感を覚えた。
彼女の目が田辺の内面をすべて見透かしているかのように冷たかったのだ。

「初めまして、田辺さん」

穏やかな笑顔を浮かべる彼女に田辺は軽く会釈した。
会話はスムーズで彼女は驚くほど自分に興味を持ってくれているようだった。しかし話すうちに彼女の言葉に妙な引っかかりを感じた。

「田辺さんって、奥さんとどんな出会い方をしたんですか?」

「え……?」

一瞬、背筋が凍った。

なぜ彼女が自分の結婚を知っている?いや、これは試されているのかもしれない。焦りを隠しながら田辺は笑ってごまかした。

「いやいや、俺独身だから……」

「そうなんですか?」

さくらは小さく微笑んだ。

その表情の奥に冷たい何かがあるような気がした為、田辺はこの場にいることが恐ろしくなった。

「そろそろ帰らないと……」

「ダメですよ、もう少しお話しましょう」

さくらは手を伸ばし田辺の腕をそっと掴んだ。
その手は異常なほど冷たかった。

「……!」

田辺は腕を振り払い立ち上がった。


「奥さんによろしく伝えておいてくださいね」

「な、何を……?」

「今夜お迎えに行くって」


田辺は青ざめた。
頭の中で警報が鳴り響く。
全身に冷や汗がにじむ。
彼女はいったい何者だ?

店を飛び出し息を切らしながら走った。家に帰ると妻はキッチンに立っていた。

「おかえりなさい、どうしたの?急いでる様子だけど」

田辺は必死に息を整えながらスマホを取り出しマッチングアプリを開いた。しかし、そこには「さくら」というアカウントは存在しなかった。
メッセージ履歴もすべて最初からなかったかのように消えていた。

「嘘だ……」
震える手でスマホを落とす。
そのとき家のインターホンが鳴った。


ピンポーン


田辺の心臓が跳ね上がり玄関の扉を凝視する。

「あなた、お客様?」

妻が怪訝そうに扉へ向かう。

「待て!開けるな!!」

しかしその声は間に合わなかった。

ギィィィ……

扉がゆっくりと開かれる。


そこに立っていたのは――

「こんばんは、奥さん」

黒髪のさくらと今まで騙してきた女性達が静かに微笑んでいた。



終わり


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