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映画 アトランティックス
海が見えるクラブ、蛍が舞うようなエメラルド色のライトが美しい褐色の肌に映える。
人々を見下ろすようにそびえる巨大タワー。
格差社会、社会全体が女性を物のように扱うアフリカの現実。
マティ・ディオップはこの作品で黒人女性として初のカンヌグランプリを受賞。
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Nシリーズ、Netflixオリジナル作品。
監督、脚本“マティ・ディオップ”、第72回カンヌ国際映画祭(2019年)コンペティション部門グランプリ受賞作品。
マティ・ディオップは“フランス”を拠点に、女優、脚本家など様々な分野で活躍中の新進気鋭の女性監督。
女優として参加した最初の作品“35杯のラムショット(2009年フランス)”は各方面で高い評価を得た。
パリで生まれた彼女の父親は“セネガル”ではかなり有名な“ジャズ・ミュージシャン”で、叔父はアフリカ映画界に“ヌーヴェルヴァーグ”、ニューウェーブ(新しい波)を巻き起こした伝説的な映画監督“ジブリル・ジオップ・マンベティ”
そんな彼女が描いた最初の長編作品がこのアトランティックスだ。
この作品のベースとなったのはマティ・ディオップが2012年に発表した短編作品。
自身が生まれ育ったフランス、体に流れるセネガルの血。
マティ・ディオップ監督が描く異国情緒溢れる幻想的世界。
アトランティックス、傑作です。
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舞台はアフリカ西海岸に面した国“セネガル”の首都“ダカール”
世界一過酷なカーレースといわれる“ダカールラリー”でも有名なこの国は旧フランス領、“フランスの植民地”だった過去がある。
奴隷交易で栄えた負の歴史、その頃の面影を残した“海が見える街”はいまも、光と影に包まれている。
その街は“ある場所”では都市開発が進み、富裕層が幅を利かせ、“ある場所”では空腹にあえぐほど貧しい。
17歳の“エイダ”、彼女には裕福な婚約者がいる。
彼はセネガルの“エリートサラリーマン”、白いシャツにブランド物のサングラス、一年の大半をイタリアで過ごす。
セネガルでは高価な新しいiPhoneもプレゼントしてくれる。
だが、この結婚はエイダが望んだものではなく、親同士で勝手に決められた話。
彼女には本当に好きな“スレイマン”という青年がいる。
建設現場で働くスレイマンと密会すること、婚約者がいる彼女がスレイマンと恋をすること、それは危険な“許されざる恋”
この国でもし、このことが婚約者に知られれば、二人は間違いなく破滅してしまう。
スレイマンは日々、仲間と共に懸命に働くが、その報酬は不当に支払われない。
雇っている側は“支払えない”のではない、“支払わない”のだ。
彼らのような人々が働き、建てられる巨大なビル。
貧しい人々を見下ろすようにそびえる“そのタワー”は不当に搾取し続ける“富裕層の姿”そのものだ。
明かりが少なく、薄暗いぼんやりとした夜の街。
セネガルで働く若者たちは毎晩のように海が見えるクラブ(酒場)に集まる。
暗闇に蛍が舞うようなエメラルド色のライト、その幻想的な雰囲気がなんとも美しい。
“あの子たち”と付き合いだしてエイダは変わった、“尻軽女”にはなって欲しくないと敬虔なイスラム教徒の親友は“不満”と“心配”を漏らすが…。
スレイマンはじめ“男たち”はクラブから見える海の向こう側に希望を抱く。
仕事と“まともな暮らし”を求めて“スペイン”を目指し、大海原へと旅立つスレイマンたち。
街に残された女たちは海の向こうに男たちを想う。
男たちが去ったあと、街には数々の異変が。
女たちを襲う“奇病”、“謎の病”
汗を異常にかき、目は白目一色に、体温は冷たく、うなされる。
そしてエイダの結婚式の日に婚約者宅の白いベッドが炎に包まれ、建設会社の社長も恐怖に襲われる。
若き刑事“イッサ”が事件を調べはじめるが、イッサにも謎の症状がではじめる…。
エイダ、スレイマンを飲み込んだ大きな運命の波、そして、海の果てに夢を見た若者たち。
これからも彼女は生きていくのだろう、海の見えるこの街で。
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ジャンルはラブストーリー、ロマンスだが、“あれ、ホラーなの!?”と思う瞬間がある(笑)
観てるうちに“そうだったのか!”、“そういうことか!”ってなること間違いなしの作品だ。
とにかくエメラルドの配色、海の色など不思議で美しく、切ない映画。
“記憶、魂、それはその場所に生き続けるものなのだろうか?”
そんなことを考えてしまう。
まったく内容は違うが、名作“ゴースト/ニューヨークの幻”を思い出した。
“Nシリーズ”の作品は本当に素晴らしい!
一番はやっぱりその豊富な資金力だが、いろんな意味で余裕が感じられる。
マティ・ディオップ監督のルーツのひとつ、アフリカ発の映画は面白い作品がいっぱいある。
資金など環境が整えばもっと大作が生まれそうだ。
不当に作られた格差社会、ときに女性の命さえも脅かす男尊女卑などの問題をエンターテイメントを通じて世界に訴えるという意義。
巨大なアフリカ大陸に深く深く根づく理不尽、不条理がいつの日か淘汰されることを切に願う。
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