⑦発音よければ全てよし
私の師匠のロシア語の発音は美しい。通訳として仕事をされている。
日本語が母国語の方でこんなに美しいロシア語の発音をする日本人は私は他に会ったことがない。
それはミール・ロシア語研究所に通っていたときは気づかず、ミールが閉校して私が7年ほど彷徨って、この1年ほど再びお話できるようになってから気づいた。
師匠K先生のロシア語が美しいのはミールの入門科で20年入門科を教えていたからで、通訳の仕事の最中にほとんど格変化を間違えないのでロシア人に驚かれることも多々ある、というのも入門科を教えていたからだ、とお話されていた。
思えば自分の外国語人生を振り返ると、私は発音をしっかり、むしろ命懸けで教えてくださる方たちに恵まれてきた。
慶應義塾の第二外国語の中国語を縁に、精神的にも語学的にもとてもお世話になった、M先生。外国語と異文化に対する謙虚さを教えてくださった。
8歳から中国語を勉強されておられ、文字通り命懸けで発音を教えてくださった。大学の先生をされていたM先生は、生徒50人の大学の4月の授業でも、命懸けで発音指導をされていた。誇張ではなくほんとにあのM先生は命がけで外国語を勉強されていたので、命懸けで教えていらしたと思う。
よくM先生はSNSに日記を書いておられていた。その中で書かれていたのが
「発音よければ全てよし。」
ミール・ロシア語研究所の校長であられた東多喜子先生は80歳近くまでミールの入門科の授業をされていたけれども、私が通っていたころは喉と咳の状態に悩まされていらっしゃった。大声でレッスンをするので体調に響くのである。通訳の師匠も季節によってはすごく咳をしていらっしゃる。
そういう先生がたにならってきた私は、昨年から「ミールロシア語研究所形式のロシア語レッスン」をはじめて、私も自分のレッスン中、発音を一緒にやるのだけれど、全力で1コマやると動けなくなる。2コマすると気絶する。別にこれは私だけではなくて、生徒さんも命懸けでものすごく大変だと思う。多分オンラインでなかったらレッスン後にお互い満員電車に乗って家にかえる体力は残っていないと思う。
私のロシア語の学費を出してくれた家族たちに、私のこの「ミール・ロシア語研究所形式のロシア語レッスン」の貴女のレッスン料は安すぎるのではないか、と指摘された。
この体力と精神力のモチベーションをずっと保って発音を指導して教え続けるなら、確かに安いかもしれない。これだけではご飯を食べられない。
とはいえ私よりロシア語がよっぽどできる方は世の中にたくさんいるし、今のところ通訳レベルではないしカスタマイズも受け付けていないし、コロナ禍やその他の事情で困っている生徒さんもいるし、生徒さんのみんながみんな首都圏の方たちばかりでもないし、いまのところ値上げは考えていない。このあいだ長期契約の仕事の話の打診をもらったのだけれど、話を受けると副業が不可になるので瞬殺で断ってしまった。わたしは出来がよくないながらも東多喜子先生の最後の生徒であり、20代の頃は本当に悩みながら会社員をして本当に悩みながらミールに通っていたので、どんなに安定して見えた仕事ができても今更ロシア語のレッスンができなくなってはなんの意味もない。
とはいえ私も女性なので、もし子どもがそのうち生まれたりしたら保育園に入れたりベビーシッターを雇ったりしながらこの金額でのレッスン継続は多分無理なのでまた考えなければならない。別にいまのところその予定があるわけでもないのでまたそうなったらそのときに考えて相談すると思う。ちゃんと仕事していればみなさんとかみさまがなんとかしてくださると思う。
外国語は終わりがないから、チャンスがあればできちゃった結婚でもいいから結婚しなさい、恋をしなさい、勉強はいつでもできます。と、高校生のころからミールに通っていらした某通訳の大先輩に言われたことがある。
そういえば名前は伏せるが別のロシア語の某K先生のお誕生日会に呼んでいただいたときに、早く結婚しなさいと言われて、「女性とあまり話したことのない20代前半のお弟子さんたちとの紳士的な会話のマンツーマンレッスンのお相手」をしたことがある。日本語で。あれは一体なんだったんだろうか(その後みんなでカラオケに行って、先生はパフ・ザ・マジックドラゴンの歌を歌っていらした)。
外国語は終わりがない。外国語ってなんて恐ろしいんだろう。
自分のレッスンに関してはグループ化も考えたけれどミールの看板を背負う以上、発音がそれなりにならないと意味がないので、例えばオンライン1コマで5人の生徒さんを見るのは無理である。1コマあたり2,3人が限度で、単語テストをやったり発音を一人ひとりしてもらうとなると別にグループ化したところで大幅に値下げができるわけでもない。
単発であれば安いかもしれないけれど、首都圏ではない人にとっては高いかもしれない。週1回きていただくと、1ヶ月あたりも結構まとまった金額になる。「ぜったいにロシア語の勉強を辞めてはだめよ」と東多喜子先生に言われ続けた私にとって、ロシア語の勉強は続かなければ意味がない。
とまあ偉そうに書いたけれども、わたしも毎回発音を師匠たちに矯正していただいているし、師匠のロシア語の発音に達するまでにあと30年かかるわけで、(30年たっても師匠レベルになれるかは一切保証はない。)
自転車操業だけれど、師匠たちに教えていただいたこと、文字通り命懸けで私に外国語を教えてくださった方たちが存在したから、私も縁のある人にできるかぎりそうしたい、というだけである。
年初、生徒さんが私にメールをくださって、末尾にほろっとカッコ書きでこんなことを書いてくださった。
(もっと早く習いたかった)
私も自分について、あの頃、ミール・ロシア語研究所にもっともっと早く通いはじめればよかった、と思う。けれど、東多喜子先生や諸先生がたが私にそうしてくださったことを脈々と受け継ぐからこそ、そういうふうに、言ってくださるのだと思う。
私のミール・ロシア語研究所形式のオンラインレッスンで扱っている教科書はこちら
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