私は私にしかなれない(マリトッツォが食べられない話)
珍しく何もない日だった。
前日は友人と3時間ぐらい通話をして、互い今日という日が何も予定がないことを喜びあった。
電話の相手はとても感性と教養のある素敵な人で、20世紀の映画の話や野菜の話をしてくれた。
歳が離れているのにこの器量と知性と素養。
人の魅力というのは年齢は関係ないんだろうと思う。
ビーツがほうれん草の仲間であるということもその人が教えてくれた。
最後30分ぐらい眠っていて、私はその静かな寝息を聞きながら、洗濯物を干したり、ロシア語の文法の本など読んでいた。
それでその幸せな気持ちのまま色んな夢を見て、昼に起きた。
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生クリームをパン生地にふんだんに挟んだお菓子が最近妙に流行っている。マリトッツォというらしい。
あの量の生クリームを食べたら多分、すごい痒くなるとおもう。 どうしてみんな平気で食べているのだろう。
どういうことかというと、 昔、OL の時にストレスがかかりすぎて毎日甘いものばかり食べていたら、婦人科系が恐ろしいかゆみに襲われて、しばらく病院通いした。
会社帰りに飛び込みで夜遅くまで受付している婦人科にかかったら性病だと診断されたのだけれども 性病にかかる心当たりが何もなかったので、そしてそこでもらった薬は全く何もきかなかったので 、
会社をぶっちぎって早退して、私を取り上げてくれた地元のおじいちゃん先生の婦人科にかかったらストレスであるということで塗り薬を塗ったら治った。
その病院に通う為に 、 会社に大事件が発生して上司が出張で全く不在の週に、何回も早退していたから、多分相当印象は悪かったと思う。
なんで初めからおじいちゃん先生にかからなかったかと言うと、
当時勤めていた 会社が地元から遠いので病院の受付時間に間に合わないのである。
つまりストレスで甘いものとか脂肪分を取り過ぎて痒みになった。特に生クリーム。
筋腫とか婦人科系の病気になる代わりに、そういう自分の体に不必要なものを出す仕組みを作って守ってくれていたんだと思う。
だから生クリームのお菓子はあまり食べない。ほとんど食べない。 ちょびっと乗っているだけなら食べるけれども、ショートケーキ なんて年に1回ぐらいしか食べない。
流行のお菓子は食べられない。
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その生クリームのお菓子を見て思い出したのだけれども、会社員だった時にその婦人科系の問題の他にも、原因不明な耳鳴りだったり 、 ずっと原因不明の微熱が下がらなくて 、耳から心臓の音がずっとしていた。
埋立地に建っていた 会社は ガラス貼りの金魚鉢のような執務室で、人は優しかったのだけれども、毎日苦しかった。
あのころ、青い空がすぐ壁の向こうにあるのに昼間好きなだけ空と雲が見られないのが本当につらかった。
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さいきん人生の方向性というか仕事の方向性に悩んでいる。
もちろん ロシア語のレッスンをしていて 可愛い生徒がいるので、これをやめるつもりはない。
でもこれでご飯を食べたり年金を払ったり国民健康保険を払えるかと言うと現状無理なのであるので、 他の仕事もしている。
他の仕事は本当に幸運な職場で、 ただあと1年ぐらいしかいられない。
エージェントの人に、就職活動をしてはどうですか、年齢的にも最後のチャンスですよと脅された。
( エージェントの人は私がオンラインのロシア語レッスンのことをしていることは知らないし、私も特に話していない)
しばらく求人など見てみたのだけれども、一応私会社の管理部門で勤めていた経験はあるので、そういう求人を当たればいくつか面接してもらえるかもしれないとは思うのだけれども。
やはり見ているだけで、苦しくなってしまった。
あの、ものすごいかゆみとものすごい耳鳴りにまた悩まされるかもしれないのである。
好きな時に太陽と空が見られないなんて苦しくて涙が出てきてしまう。
だったら少しぐらい貧乏でもいい。
それで他の語学関係者とか他の語学の人たちがどんなレッスンをしているのか、
どんなふうにノマドに生きているのか とか最近見ていたのだけれども、
もちろん 色々突き抜けていてそれだけで食べてる人もいるんだけれども。
あるいは突き抜けている若いユーチューバーの方といった、たくさんお金を稼いでいる若い人たち。
やはりその方の執筆とか SNS を見るとすごく悩んでいらっしゃったり、体調のそれぞれの特徴や、問題と感じることを書いていらっしゃりたりするわけである。
語学で食べていらっしゃる人はいらっしゃる人なりに 、そこまで突き抜けたからこその感性の鋭さとか集中力の高さと共に生きるわけで、 そういう感性の豊かな形がこのストレスフルな 現代社会を平均的バランスをもって生きられるとは限らない。
たぶん私がマリトッツォを食べられないのと同じようにそれぞれに何かしら、 平均的流行りに乗れなかったり 何かしら 問題かもしれない ことを抱えているのである。問題と長所は紙一重と言うか表裏一体である
それぞれバランスを取るために点々と居を変えたり、海外で暮らしたり いろんな 仕事やエッセイや SNS や 自分探しの執筆をしたりして、つまりみんな自分探しをしている。
私はロシア語の通訳の師匠に師事しているのだけれども、 私の通訳の師匠は男性の方で、ものすごい体力でものすごくお酒が強いので、 私はその師匠のように中央アジアに1か月も出張して強いお酒をクライアントと一緒に飲んだりは多分できないし、 たぶん1ヶ月続けでアテンドの仕事をしたりとかはできないと思う。 師匠は本当に素敵な方だけれども、あの素晴らしさと包容力 に至るには 、 たくさんの 悩みや苦労や、何かしら人と違うことや、切り捨ててきたこともあると思う。たぶん。 結局私は私なりに得意分野を作っていくしかない。
本当は今日グループレッスンに行ってもいいということだったのだけれども、現状の私が色々な 文法のテキストを読まなければならない状況で、 あるいはもっと「簡単な表現を確実に」テキストなしで正確に言う練習をし ければならない状況で、それを師匠に相談したら、 師匠はやっぱり師匠で私の不安定さというか不確実性をよく理解してくださる返事をくださった。
人と比べても仕方がない。私は私にしかなれない。
マリトッツォが食べられなくても困らないけれど、 ひょっとしたら この裏には私の長所が隠れているもしれないので、それを自分で探すしかない。
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オンラインレッスンHP(ミールロシア語研究所形式のロシア語レッスン・英語レッスン)