夫婦同姓の義務
夫婦同姓の制度について、スイスで開かれた女性への差別撤廃を目指す国連の委員会で、ジェンダー平等に向けた日本政府の取り組みについて審査が行われたそうで、メディアでも取り上げられている。
そして夫婦が同じ名字にすることを定めた日本は民法について、国連の委員会から過去3度も改正を求める勧告を出されていたのか。
そういえばそんなことを耳にしたような・・・という程度にしか記憶にないということは、これまで国内ではこの問題をきちんと取り上げられてこなかったような気がするのは私だけ?
30年以上前。22歳で結婚した私。結婚後もそのまま同じ会社で勤めることになったとき、社内ではこれまで通り旧姓で通すことにした。
当時、販促やPRを担当していたので、社外との仕事が多く、名刺やもろもろ変更すると面倒だったからだ。
実際、銀行口座や保険証、その他公式な手続きはとても面倒だった。
結婚を機に東京に転勤した私は、ある日体調を崩して入院することになった。健康保険証は結婚後の姓。当然病院では婚姻性で呼ばれる。社内の書類も全てそうで、そのうち、二重姓もいろいろ煩わしいことがあり、婚姻後の姓に変更した。
その後、3人の子供を出産し、旧姓よりも婚姻姓を名乗る時間が長くなり、これが自分の姓だと自然に思うようになった。
ところが、だ。
元夫の不貞などで離婚することになったとき、また姓の問題にぶち当たった。
離婚すると、戸籍は世帯主のものなので、私は追い出される。Kicking outだ。ムカついた。そして元の戸籍の私の名前には❌がつく。つまりバツイチというわけ。
二人の息子は成人していたので、戸籍選択の権利があり、末っ子は未成年だったので、私が親権を持った。彼らは父親ではなく、私と共に生きていくということを選択してくれたので、戸籍上でいうと4対1だ。だから、シンプルに考えると家族を捨てたい元夫が出ていくべき。事実、彼は一人家を出たわけだから、戸籍だってそうするべきじゃん。
でも、実際は無理。それどころか、息子たちが戸籍を移るためには世帯主の承認がいるのだ。(婚氏続称届)私の場合は弁護士さんが必要な手続きは全て漏れなく手配してくれたので、その時に初めていろんなことを知った。
50歳過ぎて初めていろんなことに気がついたわけだ。そして今でもずっと腑に落ちないこと。それが私の姓についてだ。
離婚後、戸籍から追い出された私には、いや「妻」には旧姓に戻る「権利」だけ与えられる。というか自動的にそうなる。新しい戸籍を作ることもできる。まだ三男が通学中だったので、私は息子たちと同じ婚姻性を名乗ることにした。すると、だ。その名前を使わせてほしいと、婚氏続称届を出すために元夫に許可を取らなければならないのだ。なんじゃそれ?だ。
使ってもいいよ、と承認してもらって、私はニューオータニの戸籍を作った。ひとりぼっちの戸籍だ。
息子たちが私の戸籍に移すためには手続きが必要なので必要な書類は弁護士さんが用意してくれたけど、結局そのままにした。
上の息子たちは結婚して新しい戸籍を持ったし、末っ子もアラサーになったのでまあ、もうこのままでいいと思ってはいるけど、夫婦同姓の義務という法律には、名前だけではなく、日本の戸籍法、もっというと大昔から変わらない、婚姻についての価値観が凝縮されているのだと思う。
難しいことはわからないけど、たった一人ぼっちの戸籍を見た時、ああ、20年以上の婚姻があってしても私は結局よそ者なのね、と思った感情はもう忘れられない。息子たちは戸籍だけのことだろ、と言って笑っていたけど、ああこの気持ちは当事者だけにしかわからないだろうなあ。
もちろん、一人になってせいせいした人もいると思う。呪縛から逃れて。
でも、私の場合は家族5人の生活を大切にしてきたし、息子たち3人と家族でいたいという気持ちが強かったので切なくて寂しくて、ひとり泣いた。
日本では個人でなく、世帯主に紐付けられていることが本当に多い。いいことなのかどうなのか、詳しいことはわからないけれど、もっと個人個人、自由に選べるべきだと思う。主婦は何の権利もないのか。戸籍すらお伺いを立てないと選べないなんて。
そういえば、離婚後の姓の選択に悩んでいたとき、離婚友達に言われたのが、今回婚姻後の姓を選んで、子供が成人したから自分の旧姓に戻そうとしても、簡単じゃないわよ、と。
家庭裁判所に氏の変更許可申立をしなければならないのです。しかも変更許可を得るには、「やむを得ない事由」が必要らしく(戸籍法107条1項)、これがとても面倒だと。彼女はどうしても旧姓に戻したかったので、頑張ったそうですが。
なんだかなあ。色々引っかかることがあります。
難しいことではなく、普通の人の生活が守られていない感じ。