逆噴射小説大賞2021反省会

(参加したもの)

 どうも。今年も逆噴射小説大賞お疲れさまでした!
 毎年振り返りで言い訳ばかり書いている気がしますが、今年に関しては在宅生活などの影響もあって1年通して読書量も創作量も(日記はたくさん書いたが……)近年最悪クラスに積めておらず、結果前年に輪をかけてモチベーションもパフォーマンスも低下気味。
 いかんせん前回結構いい結果を出してしまったというプレッシャーもあり、非常に苦しんだ期間になりました。

 今回の投稿作については10月中に少しづつ手を入れ続けていたものの中々纏まらず、最終日に強引に仕上げてまとめて出すような形に。
 そんな状況でも投稿にあたってはかなりの緊張と興奮が沸き起こり、ああ作ったものを世に出すってこれだよな……と懐かしい気持ちになりました。
 しかし投稿後には急速に興奮が醒め、もっとどうにかなっただろう……という気持ちが強め。このため、今回の記事はいわゆるライナーノーツというよりは反省成分が多くなっています。

 また、今回期間には他の方の投稿作のチェックもあまり熱心には行えておらず、当然それらから刺激を受けるような体験もあまり多くなかったので、全体的に良い姿勢ではなかったな……と思います。
 自作へのフィードバックという意味では完全に手遅れですが、ここは純粋な興味として、結果発表や他の人のピックアップ記事などを利用しつつ、ある程度キャッチアップを試みたいとは思っています。
 ひとまず前説はこのあたりにして本編へ。

1:ラベージブリンガー

 毎年1本はチャレンジしている正面からの「ぼくのかんがえるパルプ」的なもの。オーソドックスなサイバーパンクアクション。
 この賞にこのジャンルを応募するというのはつまり忍殺に正面から挑む無謀な行いに他ならないというのはまあ分かりきっているんですが、しかしやはり「パルプ」を書きましょうとなって最初に何も考えずにとりあえず出力してみるとこういうのが出てくるんですよね。
 しかしこういう初期衝動だけ・イメージだけみたいな出力は本来濾さないと供用に耐えないものなのかもしれん……というのはこの4回の経験で身にしみて分かりつつあるところ。要反省ですね。

 改めて読み直してみると状況説明とアクション描写に振り回されて独自の味みたいなものを表出させるに至っておらず、まあもう二捻りは欲しいかなと……。
 腕が勝手にプロ並みに動くということで、酔拳的な面白みだったり、プロに振り回されたり本人と勘違いされる素人みたいなジャンルの面白みを表現したかったような感じがありますが、そういうことなら力点やスタート地点を選択ミスしているとも言える。もうちょっとどうにかなったかもなあ……という惜しさがじわじわ身にしみるタイプの一作になりました。

2:我らが風紀委員長

 最近の各種SNSなどでの雑なAI基準の規制や各種表現関連トラブルなどを見ていてぼんやり思いついた、コメディチックなAIもの。自分の中では連作短編の1話目みたいなイメージ。
 過去の逆噴射小説大賞でも雛鳥たちの戦争とか書いていますが、ダメなAI、発展途上のAI……みたいなものが自分の脳内に一つのテーマとしてあるのかなと。
 別にテクノロジー懐疑とか反テクノロジー的な思想を持っているわけではなく、むしろ立場的には逆なんですが、「テクノロジーが正しく動作した結果どうしようもなくズレた結果をもたらす」みたいな状況にすごく面白みを感じる感覚があって、自分で書いたプログラムが実装ミスでとんでもない動作をした瞬間とか困るよりも面白くなっちゃう事が多々ある。
 こういう感覚から行くと「われはロボット」の目線とかドンピシャで大好きなんですよね。

 実は最終日ギリギリのタイミングでラストを「まさか来月からの転校生をご存知でない?」とする案を思いつき、ヒキとしては間違いなくこっちの方が面白そうだよな……とギリギリまで迷った。
 しかしそうしてしまった場合主役は明確に転校生になってしまうし、今回書きたいのはこっちなんだよな……と変更せずの形に。連作短編と考えればそれはしばらく進んだ後の展開だろうみたいな考えもあり。

 自分に書ける・書きたい話はこれだ、という判断の結果なので自分としては納得……しているつもりでしたが、今冷静に考えるとAI委員長単独よりは「炎の(?)AI転校生&AI委員長 VS 人間」の方がヒートアップしそうで盛り上がる構図なんじゃないかなあ……。後からAI先生とかも赴任してきてどんどんややこしく、みたいな。
 ギリギリの状況で保守的判断を下してしまい、結果ちょっと捻りや驚きの薄い内容になってしまったということで、やはり作成期間のマージンはしっかり持ちましょう・捨てる勇気を持ちましょう・判断は余裕のある状況で行いましょう、という反省に繋がりそう。ただ視点と語り口はそこまで外していないはず……とは思います。

3:我らが風紀委員長

 自分でビッグネームの名前を出すのもおこがましいものの、言わないのもアンフェアなので白状しておきますが、まあコニー・ウィリスですね。と言いつつ「犬は勘定に入れません」しか読んでないんですが……積んではある、積んではあるんや……
 ともあれ、この作品に関しては文字数に対する情報量やラストのひっくり返し方などかなりバランス良く出来たと思っていて、今年の3作の中で多少なり戦えるとしたらまあこれだろうなと思います。体感に違わず、実際スキも多めに頂けていてうれしい。

 昔一次大戦史を調べた時にサラエボ事件の経過の混沌っぷりを知り、その後歴史改変モノを色々摂取した後ふと「あの事件も大人数が頑張って干渉した結果どうにか今の形に落ち着いたみたいなことだったら面白いよなあ」と思ったのがきっかけ。無邪気に面白いと言うには色々と取り扱いに注意を要する事件ではあるんですが……。

 「大人数が頑張って……」という感覚については、IT仕事の中での「大人数が長年かけて手を入れ続けてきたコードからにじみ出る醜悪さ・混迷の歴史・歴代開発者の苦悩……」と、それらをひっくるめた滑稽さへの愛情的な感覚があったんですが、最終出力物からは……少なくとも冒頭分からはそういう成分は抜けてしまったかも。

 一点、ちょっともったいなかったかもしれないポイントとしては、最初は「第220次較正者」とでもしようと思っていた部分を、これはちょっとふざけた印象になるかと思って最終的に切り下げたところ。
 今にして思えばシンプルに歴史修正の困難さの表現になるし、またもともと考えていた滑稽さにも繋がりそうだし、仮に多少ふざけた印象になったとしても一種のフックにはなりそうで、総じてそのままで良かったかもしれないと思いますね。

まとめ

 というわけでタイトル通り反省会でした。こう見るとどれもちょっともったいないことをしたなあという感じ。前日・前週のうちに時間を作れていれば……社会情勢好転してきたのもあって色々出歩く機会が多かったというのもあるんですが、まあ言い訳にはならないですね。

 全体として、過去参加時にいわゆる「胡乱」っぽいものを書こうとして事故りまくった経験がどうしてもトラウマになっているのか、時間的に追い詰められた状況での判断において無難寄り・落ち着き気味に落としがちだったかなと。
 この手のトリックは使い所次第では(それこそ面白いパルプを書く人々が使いこなしているように)ある種の強力なフックになるものなので、こういう部分での押し引きの感覚(忍殺界隈的には左右のバランスというべきか)が、文章上手な人間とそれ以外を分ける壁だなと思います。ここはまさに要プラクティスな部分なんだろうなあ。

 とはいえ、全体としてはひとまずは何かモノ作って世に出すという感覚を1年ぶりに味わえたというだけで良かったとしておきたい。
 いかんせん前回のクリティカルがあっただけに、ここで下手なもの出して微妙に終わるぐらいならいっそ不参加に……みたいな考えが何度も頭を過ぎったので……。最終的にそっちの気持ちに倒れず、質が怪しかろうとも出すだけ出してみる、ということが出来たのはもうそれだけで偉かったという事にしておきたいです。

 今年は3作縛りながらそれでも400以上の作品数があったということで、本当に情熱の集まっているイベントだなあと感じるところ。来年もあればもうちょっと後悔の残らないような形で参加できれば……と思います。改めて皆さんお疲れさまでした!


 おまけ:過去作が気になった人向けのマガジン類


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