SOLITUDE DARKNESS FANTASY 59
コウモリカエルたちはなおも襲いかかり、今度はさらに激しく四方八方から舌を伸ばしてくる。彼らのべろは、まるで生きた鞭のようにパトルの周囲を縛ろうと蠢いていた。翼を広げて洞窟の狭い空間を巧みに飛び回り、次々と襲撃を仕掛ける彼らに対し、パトルはひたすら大剣を振り続けて応戦するしかなかった。
カエルたちの動きは予想を超える速さだった。べろが絡みつくたびにパトルの動きは鈍り、じわじわと追い詰められていく。彼の身体に巻き付いた舌は冷たく湿っており、全身が締め付けられるたびに圧迫感が増していく。さらに、ある一匹が飛び上がり、鋭い爪を彼の肩に食い込ませてきた。パトルは肩を振り払ってカエルを突き飛ばそうとしたが、その一瞬の隙をつかれ、他のカエルが次々と攻撃を仕掛けてくる。
「くそ……!」
パトルは大剣を横に薙ぎ払って敵を寄せ付けまいとするが、数の多さに圧倒されていた。べろが次々と腕や足に絡みつき、ついには完全に動きを封じられてしまう。カエルたちは一斉に彼を引き寄せ、洞窟の闇の中へと引きずり込もうとしていた。かすかな光が届かぬ暗闇に、冷たい湿気が纏わりつき、パトルの視界はほとんど効かなくなっていた。
「このままやられるわけにはいかない……!」
彼は全身の力を振り絞り、大剣の刃に闇のオーラを集中させた。そして、一気に解き放つと、激しい闇の波動が周囲に広がり、コウモリカエルたちを吹き飛ばした。べろは衝撃で裂け、パトルの体を縛っていた束縛が解けた。周囲に闇のエネルギーが渦巻き、カエルたちは一瞬ひるんだが、再び体勢を立て直して彼に襲いかかろうとする。
「どこまでもしつこい……!」
闇の奥から次々と現れるカエルの群れに対し、パトルは大剣を握り直し、激しく息を吐いた。その時、洞窟の天井から岩が崩れ落ち、カエルの数匹が押し潰された。わずかながらできた隙をついて、パトルは即座に跳躍し、さらに奥へと進むことを決意する。逃げるつもりはなかったが、この戦いを長引かせることは危険だと感じた。
奥へ進むと、巨大な古代遺跡のような場所が広がっていた。石でできた柱が並び、無数の壁画が描かれている。壁に刻まれた図像は、何かの儀式の様子を表しているようで、そこには人間と異形の生物が描かれていた。パトルは大剣を杖代わりに使って荒い息を整えながら、その壁画を見つめた。
「ここは……一体?」
彼の頭の中に疑問が浮かんだその時、壁に描かれた異形の生物がわずかに動いたように見えた。まるで生きているかのように、絵が揺れたのだ。その瞬間、壁の一部が開いて、闇の奥から冷たい風が吹き込んでくる。闇がただの空間ではないと直感したパトルは、慎重に一歩を踏み出す。彼の視界に入り込むのは、まるで迷宮のように複雑に入り組んだ石造りの通路だった。
さらに進んでいくと、床の一部に奇妙な魔法陣が描かれているのを見つけた。魔法陣は淡く光を放っており、近づくとその光は次第に強くなっていく。何かが呼び寄せられるような感覚に襲われ、パトルは足を止めた。すると、魔法陣から小さな石板が浮かび上がり、宙に浮いたまま彼の前で輝き始めた。石板には古代の文字が刻まれており、それが何かの鍵を示しているようだった。
「これは……手がかりか?」
パトルは石板を手に取り、しばしそれを見つめてから再び遺跡の奥へと歩き出した。この遺跡には何か秘密が隠されているに違いない。