FP資格者活用めぐる金融庁の「ステルス戦略」について【金融当局主要会合傍聴録】2022/10/24顧客本位タスクフォース
10月24日に金融庁で開かれた「顧客本位タスクフォース」の第2回会合。当日取り上げられた広範な議題のうち、今回は金融アドバイスの担い手をめぐる一連の議論にフォーカスします。
投資助言業の新枠創設案が浮上
この日、出席した有識者委員側からは、ファイナンシャル・プランナー(FP)など個人生活者を対象に家計の総合的アドバイスを提供する業態をめぐる制度枠組みの見直しについて意見が交わされました。
家計の総合アドバイザーとしての役割を担っている各種FP資格保有者は、現状、顧客に投資判断のアドバイスを提供できる範囲に事実上の制約があります。「貯蓄のうち何割程度を投資に振り向けるか」、「毎月いくらずつ積み立て、何年後に取り崩し始めるか」など、将来に向けたおおまかなライフプランを立てる際のサポートをすることはできますが、より具体的な投資判断に関与することはできません。
「××投信を購入しましょう」と特定の金融商品名を投資対象として提示するなど踏み込んだアドバイスを提供し、その報酬を得る契約を結ぶ場合は、(証券外務員や保険募集人としての資格を併せ持っている場合を除けば)投資助言業の登録を受ける必要があります。ただし登録のハードルは高く、小規模事業者にとって参入は現実的ではないとも指摘されます。
前回の会合(9月開催)では、委員側から「FPの使い勝手をよくするため、つみたてNISAの対象商品に限って踏み込んでアドバイスできるようにしては」と提案が上がりました。FP資格者の権限を条件付きで拡大することで、「貯蓄から投資へ」の流れを推進する実働部隊として活用しようというのです。
この意見を踏まえ今回の会合では別の委員が、金融機関からのキックバックを得ない「独立系」の定義を明確化することが重要と指摘した上で、このように述べました。
金融庁の事務局側は現段階で具体案を提示していませんが、委員はこのように「投資助言業(への登録)はひとつのアイデア」であり、登録要件を緩和してはどうかと一歩具体論に近づいた提案を行っています。
「ビジネス成立、制度的に後押しを」
金融機関からのキックバックを受け取らないビジネスモデルはたしかに、顧客との間で利害関係の衝突(利益相反)が生じにくいという利点があります。しかし、事業者が大口の富裕層顧客ばかりを契約相手に選ぶことで、中間層にサービスが行き届かないという懸念もあります。このいわゆる「アドバイスギャップ問題」を念頭に、先の委員はこう続けます。
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