1.きっかけ。
コロナ前。あれが盛大に飲み会できた最後だった。60人程度集まる飲み会。今考えるとあり得ないくらい。
その日私は朝から体調が悪かった。でも飲み会って楽しい。早く夕方にならないかなーと、同居している母と子供たちの夕食を用意していた。そういえば夫は東京出張で夕飯は要らなかった。
美味しいワインのお店だから少しお洒落して出掛けた。周りは40.50代。30代半ばの私はその中では若くチヤホヤされてまぁまぁ気分がいい。体調が悪かったことも忘れていた。
しかし、もともとお酒は強くない。ワインなんて飲めない。なのに乾杯はスパークリングワイン。コミュ障につき、スタッフに「カシオレください」とは言えない。しかたないから、乾杯の一口だけスパークリングワイン飲むか。ほんとに一口だけだった。
あまりよく知らないかたとテーブルが一緒になり、目の前の女性とたわいもない会話をしていた。
何だか、耳が聞こえないぞ…
まるで海の中にいるみたい。
一口しか飲んでないスパークリングワインで酔ったのかな、顔真っ赤かな。ちょっとお手洗いで鏡見てこようと思い席を立った。
その瞬間、私は倒れた。
目が覚めた時にはみんなが心配そうな顔で私を見ていた。急に恥ずかしくなり、起きあがろうとしたけど周りに止められた。しばらくすると「救急車呼んだから」と男性の声。あぁこの人知ってる。何年か前に会って、その後も何回か顔合わせたことある。
でも救急車は大袈裟だよ。
そう思っていたら救急隊員が入ってきて私は救急車に乗せられた。心電図つけられたり、酸素マスクつけられたり、まるで病人。いや、倒れたのだから病人か。救急車の中で処置されていたら、扉が開いた。「大丈夫なんですか?」救急車を呼んでくれたあの男性だった。「開けないでください!」と隊員に怒られてもなお何回か開けてきて、私があらぬ姿になっていたらどうするおつもりなんだろうとぼんやり思っていた。
その後念のため病院に搬送され、一通り検査をした。東京出張から帰ってきた夫はすぐに病院に来てくれて、スーパーでポカリを買って帰宅した。
翌日、飲み会を台無しにしてしまって申し訳なかったと連絡先を知ってるメンバーにだけだがLINEした。
救急車を呼んでくれたあの男性の連絡先は知らない。でも共通の友達がいた。その人に伝えて貰えばいいなと思って友達にLINEした。くれぐれもよろしく伝えて欲しいと。すると、その友達から男性のLINE連絡先のみが送られてきた。
あ…自分で言えってことか。そう思い、昨日の無礼を詫び、救急車を呼んでくれたお礼を述べた。
返事が来た。
大事に至らなくてよかったです。体調には気をつけてくださいね。p.S.少し落ち着いたら飲みに行きませんか?
いやいや、私お酒の席で倒れましたやん。しかも昨日。よく誘えるなー。変わってる人だなー。と思いながらも、そうですね!ぜひ!と社交辞令のLINEを返した。
これが彼とのはじまりである。