47.その後
隙間時間しか私には使わない
そんな不満をぶつけてしまった私。
彼は何も言わなかった。
不満が出てきたら言ってくれ。全力で改善するから。と付き合い始めに言ってくれていたのに…。
私はわがまま過ぎて、彼に嫌われたと思った。
素直なかわいこちゃんになるなどと決意をしたばかりなのに、結局はなにも変われないままの自分に嫌気がさしていた。
彼はその電話の後もLINEはしてくる。
おはようもおやすみも。
翌日も電話はきた。だけど一度だけだった。
ここまでは前回の記事で綴った。
その後私たちはどうなったのか。
思い出しながら記していく。
おはようやおやすみは変わらずLINEがきていた。
電話も毎日必ずかかってくる。私が文句を言った翌日は一回だけだったが、その翌日からはいつも通りだった。
お誕生日の前日に逢う約束はしていたものの、どこに行くかの提案もないし、何が食べたいかも聞かれない。
それに、何か欲しいものはあるかも聞かれない。
何もしないつもりなんだろう。
普段通りに待ち合わせしてホテルに行って、テイクアウトしたものを食べてセックスして終わり。
そんなプランなら嫌だ。
でもこちらから何か言うこともできないまま、逢う前日になってしまった。
明日は何時にどこで待ち合わせ?と聞いてみた。だいたいそれでプランがわかる。
すると彼が、何か食べたいのないの?と言う。特にないと答える私。最近ハンバーグばかり食べていたので、ハンバーグ以外がいい。と付け加えた。
彼から思いもよらない言葉が出てきた。
「俺の地元行く?ご飯食べてお土産買うくらいの時間しかないけど。」
彼の地元まで車で往復約7時間だ。
嘘でしょ?無理でしょ?って私が言ったら、
「行って帰ってこれないことはないよ。行こうよ。」
「でも運転疲れるって帰省するたびいつも言ってるから悪いよ。」
「誕生日なんだから頑張るよ。」
そんなやりとりをした。
私はとても嬉しくて、
「いいの?!やったー!ありがとう!嬉しい!」と目一杯喜んだ。
じゃあ9時半待ち合わせね。悪いけど飲み物だけ買ってきておいて。買う時間なさそうだから。
と、彼に言われ、承知した。
まさかまさか、地元に連れて行ってくれるとは思わなかった。嬉しくて早く翌日にならないかなと思って早く寝た。
どうせなにもしてくれないんでしょ、と思っていた前日までの私はどこへ行った。我ながら簡単な女だ。でも私が素直に喜んだら、彼も喜んでいた。やっぱり素直って大切だなと思った。
当日、化粧は完璧。お洋服はワンピースにしようか悩んだけど、楽なスタイルがいいと思い、ノースリーブに細身のパンツにした。
待ち合わせをし、彼の後部座席に乗り込む。
高速道路の入り口付近で一旦彼が車を停めた。
「隣に乗る?」
いいの?と聞くと、いいよ。と言われ、助手席に移動。
彼の車はとてもとても目立つので、普段は後ろにしか乗らないのだ。隣に乗れることが嬉しかった。
約3時間半のドライブ。私が喋りまくっていたけど、たまに沈黙もあり、けどその沈黙は苦痛ではない。
とてもいい空間だった。
彼の車に音楽が流れていた。Spotifyで流しているのだが、ジェネレーションギャップでよくわからない歌が多かった。
唯一一緒に歌えたのはレミオロメンの3月9日。
一瞬で大好きな歌になった。
途中休憩を挟み、到着。彼が学生時代に行っていたレトロな洋食屋さんで昼食をとり、観光名所をぐるりとまわり、駅にお土産を買いに行った。彼は何も買わないけど、私は友人へのお土産を買い込み、大満足。
荷物は全て彼が持ってくれる。
さて帰ろうかとなり、駐車場へ向かう。
エレベーターが閉まると彼がキスをしてくれた。
愛おしいとはこのこと。
車に乗り、彼が私のお土産をトランクに入れてくれた。
私はさっさと助手席に乗り、のんきに日焼け止めを塗り直していた。
するといきなり助手席のドアが開き、
「お誕生日おめでとう」とプレゼントをくれた。
この日帰り旅行がプレゼントだと思っていた私はびっくりした。
いつも買ってくれるジェラピケのパジャマと、18Kのイヤリングだった。
アクセサリーも買ってくれたことに驚いた。
去年はまだ付き合ってなくて、でもお誕生日にデパコスをくれたんだった。シュウウエムラのオイルだった。私の好きなコスメブランドをリサーチしてくれていて、去年は去年で嬉しかったのを覚えてる。
でも彼女になるとアクセサリーくれるんだ、となんだかレベルアップしたような気になった。
嬉しさを爆発させる私を見て彼は笑っていた。
喜んでくれてよかった。すげー悩んだよ、イヤリング好みあるし。
シンプルで華奢なデザインで私好みだと言うとよかったと安心していた。
幸せいっぱいで帰路に着くのは少し寂しかったけど、ずっと一緒にいられて幸せだった。運転する彼の横顔を見て、改めてこの人が好きだと思った。
長時間の運転で、時折腰を気にする彼に、
「よぉーーーし!」と私が大きな声をだすと、
「なになに?なにするの?」と彼が聞いてきた。
「応援!運転頑張って!」と言うと、
「いいね〜〜!頑張る!」と嬉しそうに答えてくれる。
また3時間半をかけて戻る。
途中、虹が出て、彼とはしゃいだ。
こちらの県に近づくにつれ、夕日の時間帯になり、少し寂しさを覚えた。
それを察したのか、彼が、
「日が短くなって、なんだか寂しいね」と言った。
とても楽しかった1日が終わりを迎える。
けど、こんなにも長時間の運転をしてくれて、プレゼントをくれて、いつもわがまま言って困らせてばかりなのに、ちゃんと私のこと好きでいてくれてることが身に染みてわかった。
隙間時間しか使ってくれない、なんて酷いことを言ってしまってごめんね。
直接は言えなかった。
今日はありがとう!今日のことは忘れない!大好き!!!と言った。
喜んでくれたならよかった。と嬉しそうに笑う彼が可愛くてかっこよかった。
不満が出てきたら、全力で改善する。
やっぱり彼は有言実行の男だ。
相手の気持ちは見えづらいもので、本当に私のこと好きなのかなとか、冷めてしまっただろうかとか時折思ってしまうけど、彼は私のことを大切に想ってくれているようだ。
疲れに行くようなものだとわかってる上で、私のために行動してくれたことが1番嬉しかった。
感謝の気持ちを伝えると、また彼は私のために色々してくれて、そしてまた私は彼に感謝する。
こんなループなら永遠にしていたい。
最近はおこりんぼになってばかりでいよいよ嫌われるんじゃないかと不安に思っていたんだけど、今日は私のためにありがとう。とお礼を言ったら、
いつでも大好きだよ、だから安心してと言われた。
本当はきっと、もう付き合い切れないと思うこともあると思う。
ついこないだもそんな雰囲気だった。
でも彼も努力してくれているんだ。
終わりにできる関係の中で、努力をしてくれている。
それって愛情なのではないかと思った。
もう少し私も頑張ってみよう。
我慢じゃなく、理解、寄り添い。大事なことに気づいた日だった。