【人怖話】強欲老人のとんでもない要求
人から奪うことしか頭にない強欲な人物にまつわる人怖話。
これは10年以上前の話であり、前の家に住んでいた時の出来事である。
家の近所には強欲な老人が住んでおり、やりたい放題で威張り散らしてた。
その男性は他人には手厳しいが動物にだけは優しかった。
特に見た目の可愛い小動物に惹かれるようだ。
私の家には2匹のトイプードルが居たのだが、愛嬌があってくりっとした大きな目をしていたななのことをその老人はとても気に入っていたようだった。
愛犬を散歩させていた母に近寄っては「なな、なな、こっちおいで!」とななの名前だけを呼んで気を引こうとしていた。
一緒にいたコニーにはあまり興味を示していなかったらしい。
最初の方はその程度で済んでいたのだが、老人の言動が徐々に行き過ぎたものに変わっていった。
時々私の母に「ななをくれ!」ととんでもない要求をしてきたのだ。
当然だが母は何度も断った。
可愛い愛犬達は私の大事な家族だ、頼まれても譲ることは出来ない。
いくら動物が好きだからといっても他人の飼い犬をよこせと要求してくるのは非常識な話ではある。
最初はとんでもない老人がいたもんだと困惑していたのだが、さらに困った出来事が続けて2件起きてしまった。
ある日、母がもの凄く機嫌を損ねていたので理由を尋ねてみたのだが、想定外の言葉が返ってきて言葉が出なかった。
なんと、玄関の柱に硬貨で引っ掻いたような傷がつけられていたと言うのだ。
現場を確認してみると、10円玉のような硬貨で縦にすーっと50センチほど引きずったような跡がつけられていた。
衝撃的だった。
先日まではこんな傷はなかったはずだから。
強欲な老人の要求を断り続けた後についていた傷ということで、おそらく犯人はその人だろう。
とんでもない人物に目をつけられてしまったものだと頭が痛くなってしまったが、泣きっ面に蜂とはよく言ったものだ、さらなる悲劇に見舞われてしまうことになる。
数日後、母が激怒していたので何があったのか聞いてみたのだが、話を聞いて私の顔は真っ青になってしまった。
母「お前の車に傷がつけられている!」
慌てて車の側まで行くと、ボンネットにつけられていた傷は玄関の柱のそれとよく似ているものだった。
50センチほどの細い線のような引っ掻き傷、私はこのような傷に全く心当たりはなかった。
ボンネットに傷がつくような出来事なんてそんなに起きないと思うのだが。
間違いない、あの強欲な老人の仕業だ。
私の車は家の前の駐車スペースに止めてあることで、家の前を通りすがる際に硬貨か小石でガリっとやったのだろう。
玄関の柱につけられた傷だけでもショックだったのに、まさか私の車にも傷をつけてしまうとは、何という恐ろしい老人なのか。
防犯カメラもないのに何故犯人が分かったのか。
実は、目撃していた人がいたのだ。
今回ばかりは近所の方が目撃していたようで、母は近所の人からあの老人がやったと聞かされて犯行を知ってブチキレたのだ。
・・・自分の思い通りに事が運ばないからとなんてことをするんだ!
「被害届は出さなかったのか?」と思われるかもしれないが、強欲な老人にはちょっとややこしい息子がいるためになかなか手出しができない。
些細なことで他人と口論をするような男で、私の弟も車のことで揉めたことがあったそうで、その時にうんざりしたとのことだった。
母はそれを知っていたので、関わり合いになりたくないために被害届は出すつもりはないと言ってきた。
私も正直もっと酷い報復を受けるのは嫌だったので、泣き寝入りになるが仕方ないと諦めることにした。
・・・だが、神様はちゃんと見ていた。
悪いことをすると因果応報というものが降りかかるようだ。
あの強欲な老人が事故に遭って入院したという噂話が耳に入ってきたのだ。
一体どんな怪我をしたのかは分からないし知りたいとも思わないが、おそらくは手術が必要なくらいの規模らしい。
手術をすれば痛い思いもするし、治療費だって馬鹿にならない。
完治するかどうか、という問題もある。
誰も、その老人に同情などしていない。
彼の悪行を知っていたのだから。
自業自得とはこのことだろう、みんなが口を揃えてそう噂している。