【心霊体験】車のドアを開ける者
私の母が体験した不可解な現象について。
先日、私の車にエンジンの警告灯がついてしまったのでディーラーに見てもらったのだが、どこにも異常は見当たらなかったと言われてしまった。
履歴には不具合が起きたというデータは残っていたのだが、実際は不具合を起こしていた部分はなかった。
こういうことってあるのだろうか?
でもまぁ、何もなかったのでひと安心だ。
そのまま帰宅した私は家族にそれを伝えた。
すると、母が過去に体験した車にまつわる少し不可解な話を聞かせてくれた。
・・・それは10年以上前の話。
まだ私と母が前の家に住んでいた頃のことだ。
前に住んでいた家の近所には母子家庭の家があった。
私達が引っ越しする前にその家の人達も引っ越ししてしまったのだが、引っ越しする直前にある不可解な現象が起きてしまった。
ある日の夕方のことだった。
母は駐車場で車に荷物を載せようとしていたのだが、車のキーを一切操作していないし触ってもいないのに、勝手にドアがぎ~っと開いてしまったのだという。
一瞬怖いと感じたが、母はすぐに理由が分かった。
近所の母子家庭の家と関係があるということに。
その家庭はとても悲しい事情を抱えていた。
近所の人みんなが同情するようなことだ。
その家の大黒柱だった男性は仕事のことで色々な不満があったのだが、会社の人は見て見ぬふり、さらには上の人達から無実の罪を被せられて責任を追及されるというトラブルを抱えていたそうだ。
ほどなくして男性は会社の屋上から身を投げてしてしまった。
抗議の意味もあったのだろう。
自ら命を絶たなければならないほど追い詰められてしまっていた。
一体どのようなトラブルだったのか想像もつかないが、おそらくは逃げ道がないくらい辛く苦しいものだったに違いない。
男性の葬式が終わり、ある程度落ち着いた頃に母子家庭となった家の人が私の家に「引っ越しすることになりました」と挨拶に来た。
事情を知っていたので心が痛む。
何も悪いことをしていない男性が会社のせいで犠牲になった。
遺された家族の気持ちを考えると苦しくなる。
さぞかし無念だっただろう。
誰にも助けてもらえなかった、話も聞いてもらえなかった。
どんな思いで屋上に赴いたのだろう。
その男性が何故、母の車のドアを開けたのかは分からない。
もしかしたら家族の元へ戻りたかったという強い思いが引き起こした出来事ではないだろうか。
車のドアが勝手に開いてしまったのはそれ1回だけだったが、母は車の運転中に般若心経を唱えて男性の冥福を祈っていた。
母「もしかしたら私の車に乗っているかもしれないが、私のところではなくて家族の元へ戻って欲しい」
ひたすら男性の霊にそう念じることしか出来なかった・・・。