【人怖話】コンビニの理不尽な話4
真面目な人ほど損をする、ずる賢い人は影で何を言われようが気にしなければ強気でいられる。
周囲の人間達は自分に害が及ばなければ他人事、対岸の火事状態。
だが、いざ自身に降りかかるとギャーギャー騒ぎ立てて煩い。
ずるい人間は何があってもお咎めなし。
放っておかれるから調子に乗って暴走を始める。
そうなると余計に止められない。
むしろ誰も止めたくない、だって、面倒なことに巻き込まれたくないから。
立場の弱い人が苦しもうが知ったこっちゃないと見て見ぬふりばかりなり。
こんな理不尽な世の中にため息しか出ない。
最初に更新した内容はコチラ。
研修を受けずに一番忙しい土日のシフトを希望し、周囲を振り回した男性バイトの話。
2回目に更新した内容はコチラ。
経営者と店長に気に入られるために嘘の情報で周囲を振り回した女性バイトの話。
3回目に更新した内容はコチラ。
景品にまつわる問題でお客様からクレームが多数きた年配バイトの話。
ちなみにそのコンビニはすでに閉店しており、当時のメンバーが今どこで何をしているのか全く分からない。
それでも、多少はフェイクを入れることにする。
ケース4 無断欠勤繰り返してクビになった元バイトの男性
直接面識がないために素性がよく分からない40代の男性の田村さん(仮名)。
彼について語る前に、まずは奇妙な電話について説明したい。
ある日の昼間のことだった。
電話がかかってきたので出てみると、少し酔ったような喋り方で男性が何かをお願いしてきた。
男性「・・・すいません、オーナーの〇〇さんに代わって下さい」
私「あの、どちら様でしょうか?」
男性「・・・・・」
私「もしもし?」
男性「・・・・・」
私「現在オーナーは帰宅しており、お店には不在ですので、伝言お預かり致しますが?」
男性「・・・・・」
私「あの、もしもし?」
男性「・・・・・」
私「オーナーは夜勤がメインですので、もし直接会話されたいのでしたら22時以降にお店に電話して頂けないでしょうか?」
男性「・・・・・ッチ」
ガチャ、ツーツーツー・・・。
舌打ちが聞こえたかと思ったらガチャ切りされてしまった。
電話の主は素性を明かすことなくいきなり経営者を指名してきたのだが、夜勤がメインの経営者は昼間は自宅で睡眠中だ。
相手の反応が一切なかったことでこちらもどう対応していいのか分からず、伝言を聞くか経営者の勤務時間を伝えることしか出来ない。
訳も分からず困惑しながらも、とりあえずは誰かに話を聞いて貰おうと思った。
レジに立っていたN子に変な電話がかかってきたことを伝えると、少し怪訝そうな表情だ。
N子「着信履歴調べてその人の番号をメモってきて」
私「はい、分かりました・・・」
N子「それ、ちょっと見せてくれない?」
私「はい」
私はN子に言われるがままに相手の電話番号を見せる。
N子「これ、あいつだね、この前も電話してきたよ」
私「あいつって誰ですか?」
N子「この前クビになった田村って男」
私「ああ、そういえば、オーナーがバイトをひとりクビにしたって言ってましたね、彼のことだったんですね」
N子「この前さ、夕勤の女の子が電話に出たんだけどさ、相手は田村だった」
私「その田村さんは何を言ってきたんですか?」
N子「それがさぁ、とんでもない要求だったんだ」
時は遡り・・・1週間ほど前の夕方。
電話がかかってきたので受話器を取ったのが夕方勤務の女の子だった。
夕勤「お電話ありがとうございます、〇〇店です」
田村「もしもし・・・、オーナーに代わって下さい」
夕勤「あの、オーナーはまだ出勤の時間ではありませんので、不在ですが」
田村「・・・・・」
夕勤「もしもし?」
田村「オーナーの電話番号教えてよ」
夕勤「個人情報ですから、お教えすることは出来ません」
田村「じゃあ、あんたが間に入ってよ」
夕勤「え?」
田村「どうせ、オーナーは俺の電話に出たくないんだろ?」
夕勤「あの・・・どういうことでしょうか?」
田村「俺が電話かけてもオーナーはいつも代わってくれない、それって俺と電話したくないってことだろ!?」
夕勤(この人怖い)
田村「だからあんたが間に入って俺の協力者になってよ」
夕勤「間に入ることは出来ません、オーナーがお店に居る夜間にお電話お願いします」
田村「・・・・・フン」
ガチャ、ツーツーツー・・・。
田村さんの無茶な要求が予想外過ぎて、夕勤の女の子は彼の言葉に反応するのが精一杯、誰かに電話を代わって貰うという行動に出られなかったそうだ。
その後、経営者に奇妙な電話がかかってきたことを説明する。
経営者は着信履歴をチェックしていき、該当する時間帯の番号を確認。
履歴書を取り出してまた確認。
電話の主が誰か判明したようだ。
それが、バイトをクビにされた田村さんだった。
クビになった理由は無断欠勤が多かったことだ。
彼が来なければオーナーが代わりに出るしかない。
夜勤疲れで早く帰宅したくてもそれが出来ないのは辛いはず。
そうなれば、クビにして新たにバイトを雇いたくなるのは仕方のないことだが。
何故こんなに無断欠勤が多いのか。
経営者や面識のあるバイト仲間が言うにはよく分からない人物なのだという。
見た目も性格もどちらかというと大人しい感じらしい。
副業としてコンビニを選択した理由は不明だが、おそらくは彼の勤務時間の関係で早朝を選んだ可能性は高そうだ。
コンビニの早朝バイトはなかなか応募がない。
あってもすぐに辞めてしまったり、急なシフト変更を希望しても代わりに出てくれる人がなかなか見つからないのもこの時間帯の問題点でもある。
そういう理由から、田村さんの応募は経営者にとってはとても有難い話だったというのに、その期待をあっさりと裏切られたわけだ。
本業が忙しいからバイトに来なかったというわけでもなく、どうやら、何か心に問題を抱えているようだった。
経営者曰く「彼はね、心を病んでいるんだよ、だからそれを理由にバイトに来ない」そうだ。
じゃあ本業の方はどうなのかというと・・・。
やはり、本業の方も無断欠勤が理由で解雇されたらしい。
N子「本業がクビになったことで、収入が0になった」
私「それで、ここでもう一度雇って欲しくて電話してきたというわけですか?」
N子「おそらくはね」
私「それにしても、間に入れってのも困った話ですよね」
N子「田村は一度夜中に電話してきたんだけどね、オーナーは速攻で無理ですってお断りしたんだって」
私「だから他の人を巻き込もうとしたんですね」
N子「とんでもないよね、無断欠勤繰り返すから副業どころか本業すらクビになってしまうんだよ」
私「さっさと諦めて違うところで働けばいいのに」
N子「それが出来るほどアクティブなタイプじゃないと思うよ、彼は」
私「だから夕勤の子に相手にされなかったから昼間に電話してきたんですね」
N子「たぶんそうだろうね、お酒飲んで酔った状態じゃないと電話すら出来ないくらいの小心者」
私「昼間の従業員にも相手にされなかったら、今度はいつ電話してくるんでしょうか?」
N子「あー、どうだろう、もう電話する時間帯ないんじゃない?」
・・・電話の主と目的は分かったのだが、ここからが試練の始まりだった。
田村さんは毎日昼間の14時になると電話をしてくるようになったが、電話に出ても一言も喋らない。
無言電話という手段に出てきた。
毎日ひたすら無言電話がかかって来る。
しかも14時ぴったりに。
その代わり、他の時間帯には一切電話してこなくなった。
何で14時ぴったりなのかは分からないが、無言の訴えなのか、それとも腹いせでやってるだけなのか・・・。
ただ、夕方には男性のバイトがたまにシフトに入るからあえて避けている可能性は高い。
夕勤の男性(60代)は思ったことをずけずけとハッキリ言うタイプ。
若い頃にたくさん苦労を重ねたおかげで何があっても動じない強者だ。
見た目からしてたくましいオーラが出ているし、おそらくは電話越しでもそのオーラは感じられるだろう。
田村さんが苦手とするタイプかもしれない。
逆に言えば、昼間に集中して電話がかかって来るということは・・・私が電話に出ることが多くなる。
無言電話で犯人は分かっていても、気持ちいいものではない。
面識がないから余計に怖いと感じてしまう。
経営者に相談したことがあったものの、あんな電話適当にあしらえばいいよ、何なら着信拒否しちゃえばいいよ、という返事が返ってきた。
電話を勝手にいじるわけにはいかないので着信拒否設定してもらうことに。
それからというもの、無言電話はかかってこなくなった。
直接お店にやってくることもなかったようなので、とりあえずは平和になった。
田村さんは電話をかけられなくなってどう感じたのだろう。
怒っているかもしれないし、悲しんでいるかもしれない。
だが、それは彼が自ら招いたことだ。
自業自得である。
無断欠勤を繰り返したから信用されなくなってしまった。
電話で無茶な要求をしてくるから警戒されてしまった。
望んでいる結果にならないからと、無言電話を毎日かけてくるようになったから拒否されてしまった。
全ては彼の行動の結果、である。
どんな事情を抱えていたとしても、相手に対する礼儀というものは忘れてはいけない。
出来ることと出来ないことがあり、出来ないことはどんなにお願いしても、天地がひっくり返っても無理なものは無理なのである。
そこは、そういうものだと理解するしかない。
変にしがみ付いても、あがいてもダメなものはダメなのだ。
周囲の迷惑を顧みずそんなことを続けるとどうなるか・・・。
痛い目に遭ってからでは反省しても取り返しはつかない。