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【心霊体験】ハロウィングッズに集まる怪異

勤務先で起きたハロウィンにまつわる怖い話。

私の勤務先には霊感のある社員M村さんが居るのだが、開店準備期間中から幽霊が見えていたという噂を耳にしたことがあった。
店舗の角っこに女の幽霊を毎日のように見ていたが、特に悪意を持っていなかったことで、気にすることなく放っておいたとのことだ。

霊の存在を感知していたのはもうひとり居た。
先輩のK子さんだ。
K子さんも幽霊が見えるようで、M村さんが見えていた場所と同じ場所に女の幽霊の姿を目撃していた。

勤務先の事務所や倉庫で時々M村さんとK子さんが心霊話に花を咲かせている。
私もたまに話に混ぜてもらうことがあり、その時に幽霊がある特定のアイテムに引き寄せられる現象について教えられたことがあった。

夏の終わり頃、勤務先の催事売場にハロウィンコーナーを設置した際に、幽霊はハロウィン関連の商品に集まりやすいという話を聞かされた。

ハロウィンで使用される素材の多くはお化けや魔女が描かれている。
可愛らしいイラストもあれば、グロテスクな骸骨のマスクなども売られている。
そういう独特な雰囲気に引き寄せられるのだという。

ハロウィンの起源を考えるとなるほど・・・と納得してしまった。
日本でもお盆の時期には御先祖様の霊が人間界に降りてくると言われているが、それの海外バージョンと言ったところか。

M村さんは毎年夏の終わりが近づくにつれて憂鬱になるそうだ。
なぜなら、様々なお店がハロウィンコーナーを作り始めるために幽霊が売場周辺に集まってくるのを嫌でも見えてしまうからだと語ってくれた。

見えない人には楽しい売場でも、見える人には恐怖の売場なのだろう。

何年か前の話だが、ある夜に金縛りに遭わされたことがあった。
薄暗い部屋で目覚めた私は体が動かないことに気付いた。
金縛りにかかってしまったことで少し焦ったが、黒い人影を見ることもなく、幽霊と思われる声も聞こえてきたわけではなかったので恐怖心はほとんどなかった。

そのうち体が動くようになったことで「もう金縛りになるなよ」と念じながら再び眠りについた。
その後は特に異変は起きなかった。

次の日に勤務先に出勤すると、倉庫の天板に置かれてあったハロウィングッズの入っている段ボール箱が落ちてひっくり返って中身がぶちまけられた状態だった。

いつもと違う状況に私は戸惑ってしまった。

一体何が起きたんだ?
なぜ商品がばら撒かれたまま放置されている?
誰も後片付けしないのか?

幸いにも破損してダメになった商品はなかったが、事務所に居た上司は少し機嫌が悪かった。
上司は重度の怖がりだったので、おそらくは出勤した時に床に散乱しているハロウィングッズを見てびびってしまったのだろう。

他にも天板に上げられた段ボール箱があるのに何故かそれだけが落ちていた。
特定のアイテムだけが落ちてきたというのは想像するだけでも恐怖が湧いてくる。
怖がりの人ならば余計なことを考えてしまうかもしれない。

このアイテムと深い関係があるものの仕業かもしれないと・・・。

出勤後にK子さんに昨夜金縛りに遭った話をしたのだが、K子さんはニヤリと笑みを浮かべて嬉しそうにこんなことを言ってきた。


K子「それ、ある種の予言かもよ」

K子「だって落ちてきた箱はハロウィン箱だけだし、M村さんがハロウィンと霊は深い関係あるって言ってるんだよ」

K子「不可解な出来事が起きることをあなたが金縛りという形で受信したんじゃないかな?」

K子「あまりにもタイムリーすぎるよね」


仮にK子さんの言うことが当たっているとしてもだ、勤務先の幽霊は一体何が目的でこんな真似をしているのだろうか?

わざわざ金縛りに遭わせて、ハロウィングッズの入った箱を落としてぶちまけるとか、普通で考えたらありえない話である。

実はハロウィングッズ入りの箱の他にも勝手に赤色のボールペンが転がってきた、スプレー缶が勝手に倒れて転がってきた、机の上に置かれていた物が勝手に落ちた・・・というような現象に遭遇したことがあった。

「ここに居るよ・・・」と存在をアピールしたいだけなのか、それとも勤務先の人達を悪戯心で脅かしているだけなのか。
少なくとも生きている人間を驚かしている時点で幽霊の目論見は成功しているようなものだが。

それがある日を境に起きなくなってしまった。

ハロウィンコーナーを設置した後からだ。
割と短期間で何度か勝手に物が転がり落ちてきたのに、売場完成後からぱったりと止んでしまったのが不思議である。

もしかしたら、勝手に物が落ちてくる現象は幽霊がハロウィンコーナーをはやく設置しろという催促だったのかもしれない。

そのハロウィンコーナーだが、あまり雰囲気が怖くならないように作られている。
小さなお子さんが怖がって泣き出さないような配慮がされているからだ。

恐ろしい髑髏やゾンビのマスクなどの怖いアイテム系を大きな通路側からは見えないような位置に配置して、ぱっと見えやすい位置には可愛いアイテム系のものを置いている。
そのおかげか親子連れのお客様や若い女性のお客様が商品を手に取って眺めてくれることが多い。

気を使って売り場を作ったと言えど、コーナー設置前と比べると小さなお子さんが大泣きしている回数が増えている気がする。
小さな子供は幽霊が見えるという話は何度も聞いたことがある。
ハロウィングッズに引き寄せられるように集まってきた幽霊の姿に怖くなって泣き出した可能性があるかもしれない・・・。

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