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chapter.9
今回は各モデルの詳細PR第二弾ということで、じろうon the trailです。
いやー、もうすっかり師走でありますが、ボクは無事に年を越せるんでしょうかね。
まぁ、そんなこと知りませんよね!
ボクも知りません!
DRAGONFLYとかなんとか
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MOTHの最終プロトが完成してから約一年後くらいにこの子が産まれたわけですけども、そもそものコンセプトは何かというと、やはり軽量化ってことですね。
まずファスナーについては、当然YKKのアクアガードを使っておるわけですが、バックパッキングシェルターでは#3という大きさのものが良く使われています。
MOTH/HBではこれを約1メートルくらいの長さにしてスライダーを2つくっつけて使ってます。
ボクはベンチレーションが嫌いで、スライダーを2つにして換気口にしているわけです。
だってベンチレーションて、あんな小さい穴が換気に役立っているのか怪しいでしょ。
特に我が国では湿気が強いのであんまり恩恵を感じたことないんすよじっさい。
雨避けで穴も下向きだし。
とにかくMOTHだとファスナー部分だけで20g前後あります。
ちなみに#5というひとつ大きい番手のものを使うと重さが倍増します。
スライダーが重いんだな、きっと。
そのぶん丈夫なんだけど。
ということでファスナーをまず削りたくなってしまったってことですね。
あとは足側をテーパーさせれば生地量が減るので軽量化には効果的です。
同じ生地で作った場合、ファスナーの分と合わせれば全体で20%くらいの軽量化が期待できます。
小さい、というか細長い設営範囲のものはMOTHで実践できたので、その方法を応用すれば良いものができるんじゃないかな!とか思っちゃったわけです。
不幸にも。
実際プロトタイピングもMOTHに比べてかなりスムーズでした。
とか言いながら5個くらい作りましたけど。
とはいえ、基本的な全体設計がスムーズでしたので、ディテールの調整に手間を割く余裕ができたことで一つひとつのプロトタイプの精度は上がりました。
デザイン
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ボクはMLDのパトロールになぜかシンパシーを感じていて、初めて作ったAフレームもなんだかそれっぽい感じのものを作っていました。
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なんでかはよく分からないんですけどね。
このシンプルさが良いんでしょうか。
なんか潔い雰囲気もかもし出してますし。
実際に潔いかどうかは知りませんが。
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割とこの形は使い勝手が良くて、タープほどスパルタンではないけどフルカバーのシェルターよりは開放的、みたいなとこも魅力的だったりします。
構成に複雑さがないので、直感的に設営できますし。
そんなこんなで買っちゃう?作っちゃう?みたいに悩んでたらいつの間にかMLDのサイトから消えていました。
人気がなかったみたいです笑
ならスキルも上がってきたこのタイミングで作っちゃうしかないじゃないの!みたいな。
ちなみにパトロールはニッチな層ながら根強いファンがいるようで、PCTやCDTをこれでスルーハイクした人もいるようです。
ので、きちんと作ってあれば耐久性や機能性は問題ないはずです。
ファスナーがなかったり構成がシンプルだったりするので破損の心配も少ないし、風向きを考えれば耐候性も充分。
これにMOTH/HBのパネル構成を応用させれば充分現代的なシェルターになっちゃうんじゃねぇの!?みたいな。
ただ、パトロールほどビークを大きくするとファスナーを削った分が相殺されてしまうので、ファーストプロトでは極端にビークを小さくしました。
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結果としてはピッチできたものの、このタイプの魅力である汎用性が小さくなってしまいました。
それでもフラットタープに代表されるようなものを見ても分かるように、そこまで"無限の汎用性"は必要ないと思っているので、まぁこれはこれで良いかと言った感じです。
削り込んだところから肉付けしていくのはいつものクセですね。
これは自分でも少し使用した後に、友人にテストしてもらいました。
画像の設営形態で強風にも耐えてくれたようです。
強風時の動画も送ってもらいました。
ここでは、やはり低く張れないというのが気になるところです。
急勾配のサイドパネルがかなり風を受けてしまっています。
これはメインのリッジラインを親の仇のように引っ張りまくればもう少し強くなるかもしれません。
そこまで強い張力がかけられるように作っています。
先日テストから戻ってきましたが、心配だったピーク部分やシームの劣化や破損もなく、テスト体は非常に良好な状態です。
また、狭い場所にも上手く収まっているのが確認できます。
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フラットな場所が少なくスキニーサイトの多い日本の山では、けっこうアドバンテージになると思います。
リッジガイラインが前面に引き出されますが、これはデフォルトではフロントのみですからあまり幕営地の選択への影響は少ないでしょう。
下画像のセカンドプロトのテスト場所は、画像では分かりにくいですがかなり後方に向かって傾斜していて、かつ向かって右側にも緩やかに傾斜しています。
この時はなんとか少しだけフラットな場所を選んで設営しました。
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氷点下5℃下でのテスト
風速は5m前後
全体的なデザインにコンセプトからの逸脱はあまり認められません。
ところがエントリーが少し難しいかなと思っていて、ビークが閉じているのでサイドエントリーにしてもけっこう入りにくかったりしました。
まぁビークを分割すればこのモデルの問題の大部分が解消されるのは分かっていたんですが、どこまで使えるかを試したかったのであえてアップデートはしてきませんでした。
結果としてボクはこの一見中途半端とも言えるような"ちょうど良い"開放感がとても気に入ってしまいました。
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誰もいないキャンプ場で寂しくテスト
開放されているので氷点下でも結露は最小限で、ビビィと組み合わせれば寒くて寝れないということもありませんでした。
使い勝手というかこのタイプのポテンシャルを充分検討して今回アップデートを施したので、それは後ほど。
構築方法
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/124167113/picture_pc_ec8ee9f54d31e5dcc0b9a0b99a3d708e.jpg?width=1200)
0.51DCF製
あとは以前にも書きましたけども、縫製+テーピングという構築方法がどうにかならないかと頭を捻っていた時期でもあります。
工程が複雑になると各工程の精度を出すのが大変なので、もっと効率的に作る方法がないかを模索していました。
普通のボンディングだとパリッとしないし、どうしたもんかと考えていましたね。
DCFがバイアスに変形するっていうのは分かっていたので、HB理論を応用できないものかと考えた末に、現在の工法に落ち着きました。
その工法を最初に使ったのがDRAGONFLYでした。
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これは軽量化という観点からは縫製と比べてもあまりアドバンテージがないんですが、縫い縮みがなく長いシームも正確に組み立てることができるようになりました。
また、裾にテープを縫い込む方法はセカンドプロトから使い始めて、MOTH/HBを初めて構想した時の"素材のポテンシャルを極限まで引き出す"というメーカーコンセプトの理想により近づいた感じです。
ま、個人制作ですから"極限"というのは我ながら少し大げさかなとは思いますが、(個人でできる範囲で)というのをコソッと付け足しておいてください。
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/124178063/picture_pc_4a156cb941e5265772a24ed1b4179d6a.jpg?width=1200)
バイアスに引き伸ばされている
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/124177702/picture_pc_431a45c86e5ae9aa3df26cb1ebed074c.jpg?width=1200)
しっかり張力がかかっている
現行のBTGシェルターに採用している手法は全てDRAGONFLYでテスト/実証してきました。
トレッキングポールを倒立で使用し始めたのもDRAGONFLYからです
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DRAGONFLYは、設計上フロントピークがかなり鋭角になるので倒立で使う方法を試したところ、ハンドルを上にして使用するよりもこの部分の仕事がシンプルになり、より正確に設計を反映させることができるようになりました。
また、現行のタイアウト形式もDRAGONFLYからです。
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パッチには1.43DCFを使用
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/124179472/picture_pc_e033c30081de935869c41224550a9c5e.jpg?width=1200)
パッチの形が現行と違う
これらのディテールによって、依然として穴空きなどには注意が必要なものの、通常のDCFシェルターよりも過酷に使用しても大丈夫かと思います。
タイアウトもかなり強く引いても問題ありません。
あとは接着剤や各部品の耐久性の問題になってきますが、これは必要が出てきた時にアップデートしていきたいと思います。
アップデートしたんだよ
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/124180094/picture_pc_9db43c5e335e32a5590d4461b4669b36.jpg?width=1200)
満を持してってわけでもないんですが、"あ、そうだ。アップデートしよ"って雰囲気で作ってみました。
このビークを分割する方法はファーストプロトを作り終えた段階で考えていたんですが、そこはそれ、slingfinが出しているsplitwingがチラついたわけです。
まぁ安易に参考にする前に、このタイプを使い込んでメリット/デメリットとか使い勝手をきっちりと理解してからにしようと思ったわけです。
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splitwingのように上までビークを分割しない方法か、タープのようにポールを突き出すか迷いました。
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/124186957/picture_pc_7d8b6e271fbe9e0f83f4ef718cf5ca6d.png?width=1200)
上まで分割されていない
ポールポケットを作らないと雨降りの時に雨がポールを伝って中に侵入してくることが想定されますからここはけっこう悩みましたが、DCFは弾力性のない素材ですから、splitwingのようにすると低く張った時に素材や接合部分に無理がいきそうなので、完全に分割してしまうことにしました。
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この部分はポールとの接続方法をもう少し詰めようかと考えていますが、全体的な設計としては悪くないようです。
低く張った時に分割されたビークが簡易なドアになるように、現行のものよりもビーク部分のパネルを大きくしましたが、90㎝程度の高さではかなり上手く機能しそうな感じがしたりしなかったりします。
悪天候時に役立つでしょう。
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ラインとの接続部分はポールのチップハウジングの根本まで下がるので、フロントの高さは約90㎝くらい
テストピッチ中にたまたま知り合いが通りすがってきたので話していたんですが、このビークの先端に長めのショックコードなどを追加すれば、両方をオーバーラップさせて完全なドアとして機能させることもできそうです。
ハンモックのウィンタータープみたいな感じですね。
結果として、フロントポールは100㎝から130㎝まで無段階に調整できるようなったことで、天候への対処がしやすくなったと思います。
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また、ビークを完全に分割したことにより出入りも楽になりました。
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ここまで開くならドアタイバックを追加しても良いかもしれません。
そうすれば星を見ながら寝ることもできるでしょう。
ビーク先端にはフックを使用しているので、片方のビークのみ開くことも可能で、フロントからのエントリーもしやすくなりました。
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![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/124188881/picture_pc_541a3d11dc2a3115045fded123910cab.jpg?width=1200)
今日(2023/12/10)時点ではプレーンな状態でテストピッチしましたが、ここにサイドプルアウトを追加してその他の細部も整えます。
数泊テストしてみて問題がなければ、サイトにアップしたいと思います。
温故知新
まぁあまり需要とか関係なく作りたいものを作ってるので売れる売れないはどうでも良いんですが、わりとコテージメーカーが出始めた初期くらいの変なシェルターが好きだったりします。
その頃のギアにはULエッセンスが詰まっているような気がしますからね。
それを現代的にアップデートするのも楽しかったりします。
まぁそれにしてもこんなものについて我ながらよくそんなに喋ることがあるもんだと思います笑
馬鹿なやつがいたもんだとご嗤笑ください😂
make your own gear!
make your own trip!
and…
Happy trail!