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寄り道.1
仕事を再開すると長く飽きるまで歩くことはできなくなってしまった。
もっと歩いてみたい。
この先に何があるのか見てみたい。
いつも放浪の終わりにはそんな気分になることが多いものだ。
そこで、ボクは中断した東海自然歩道を歩き回ることにした。
基本はデイハイクだが、セクションでも週末に来るたまの連休なら泊まりがけで歩けるだろう。
一人だけれど、東海ハイキングクラブと一丁前に名付けてあなたこなたと県内を歩き回り始めた。
徘徊というのがふさわしい感じだ。
基本的には東海自然歩道愛知県コースだ。
新城~設楽の辺りばかり行っている。
膝をやられた痛い思い出があるので、思い入れがあるのかも知れない。
デイハイクで歩くついでにゴミを拾ったり、途中の町では美味しいご飯屋さんを探したりとそれはそれで楽しい。
月に一度ほどは高島や信越を一緒に歩いた仲間もハイキングに加わる。
そんな東海自然歩道のセクションを少しずつ紹介していければと思う。
今回は段戸湖~筈ヶ岳のセクションだ。
段戸湖
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標高900m強のここは寧比曽岳へのトレイルヘッドになっている。
本当は宿場町である設楽町田口から森林軌道跡を歩いてくるのが魅力的なのだが、今年(2021)の7月の豪雨で県道33号が寸断、数年前の雨で田口~段戸湖間の東海自然歩道本線も寸断されたままである。
森林軌道跡は遺跡を歩くような気分にさせられて印象深いセクションだが、今回は田口からのアクセスが遮断されているので車で豊田方面から段戸湖に直行である。
段戸湖は初夏には天然記念物のモリアオガエルが見れたり、ハイシーズンはトラウトの釣りも楽しめる。
釣り客と登山客の駐車場は1ヶ所にまとめられていて、立派なトイレもある。
段戸湖周辺は裏谷と呼ばれ、愛知高原国定公園に指定されている。
公園内は県下最大の太平洋ブナ林で、動植物は保護されている。
ブナをはじめモミや赤松などの混成林では、オコジョ、カモシカ、多くの野鳥などが見られる。
狩猟はもちろん、エサやりやゴミ捨てなどは厳しく禁止されている。
この日もオコジョが森に入っていくのを仲間が見つけた。
ボクは奥三河の山域がとても好きだ。
岩場が多く、特にここより少し静岡側にある岩古谷山などは鎖場や鉄梯子があって面白い。
水量が多く、あちこちの谷筋からは濁りのない綺麗で冷たい水が湧いている。
奇岩と清流、整然とした植林の中に原生林が混在している雰囲気が気に入っている。
たいていの山は山頂や峠から遠くに三河湾が望める。
さて、段戸湖の林道から裏谷の湿原へのトレイルヘッドに入っていく。
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愛知県コースの他のセクションと同様に、案内看板や道標が多いので迷うことはまずない。
沢沿いに進んで行けば、原生林の下を気持ちよく歩ける道がすぐに始まる。
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久しぶりの晴れの週末とあって、ハイカーが多い。
登山道はよく整備されている。
小さな沢を巻くように曲がりくねったトレイルはほぼ平坦だ。
おかげで歩くスピードはかなり速いが、トレイルの雰囲気を味わいたいならあまりスピードが上がりすぎないようにするのがオススメだ。
雨が続いたせいか、普段は涸れた沢にも水が戻っている。
スタートが900mということもあって、残暑でも涼しい。
木漏れ日に開いた苔が美しい。
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沢筋のトレイルにも関わらず、蚊やブヨはいない。
風が沢筋を渡るので、そのせいかもしれない。
原生林は清潔で、蛭もいない。
ちなみに、東海自然歩道の奥三河はほとんど蛭や不快な虫はいないように感じる。
水が豊富で、蛭やダニを媒介する鹿も多いのだが…。
唯一、宇連山のトレイルヘッドである仏坂峠に蛭がいるくらいだ。
寧比曽岳
寧比曽岳は、東海自然歩道ができるまでは名前も知られることなく、頂へ至る道も踏み跡程度の杣道しかなかったようだ。
地質学的には木曽山系の南端に位置し、出来山(できやま)や鷹ノ巣山(段戸山)など1000mを超す山々の連なりの中の最高峰でもある。
また、山頂から東海自然歩道は愛知県コースと恵那コースに分岐する。
総延長1,697㎞の東海自然歩道のちょうど真ん中あたりだ。
裏谷の原生林を抜けて一度未舗装林道と合流すると、そこが五六橋である。
各谷筋から集まった水が一本の段戸川になる場所のようだ。
流れは豊富で、木漏れ日と苔の緑の中を音を立てて流れている。
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渓流に降りることもできて、足をつけたり水を補給することもできるが、下生えや苔を荒らさないように注意が必要だ。
やがて原生林を抜けると間隔の広い植林帯に入る。
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道がどこまでも続く感じ
植林帯にありがちな圧迫感もなく、開放的なうねうねと続く平坦なトレイルはとても気持ちが良い。
ここでも沢が多く、鮮やかな苔と杉林を渡る風の清々しさを味わうことができる。
原生林との風の匂いの違いを楽しむのも良いだろう。
寧比曽山頂の少し手前に水場があり、今は使われていないコップが一つ添えられている。
ここまで来れば山頂はもうすぐである。
ここから平坦なトレイルは終わり登りに入るが、斜度も距離もそんなにないので、急に現れる坂に身体がびっくりしないように慌てずのんびり登るのが良いだろう。
登りきるとそこが富士見峠分岐だ。
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比較的新しい立派なトイレが目印で、そこから分岐して100mほど行った所にある見晴らしの良い場所が富士見峠だ。
ここからは中央アルプスの山々を眺めることができて、かつてはその名の通り富士山も見えたようだ。
この日は晴れて暑かったが、湿度が低く風が吹けば汗が引くほど涼しかった。
分岐に戻って寧比曽山頂を目指す。
ここからはたいした登りもない。
着く頃にちょうど昼時だったこともあって、狭いが開けた山頂はハイカーで賑わっていた。
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ここでもアルプスの山々が臨める。
東屋から南を見れば三河湾も見えた。
木陰が気持ちいい。
お昼を済ませて三人で昼寝をする。
筈ヶ岳
段戸湖から寧比曽山頂まで7.5㎞ほどだが、のんびり歩いても2時間半ほどで歩ける。
13時、次の筈ヶ岳に出発だ。
ここからはそこそこの斜度を下っていく。
右は雑木林、左は杉林だ。
時たまトレイルランナーがすれ違っていくがハイカーはいない。
ここから先は途中の平勝寺を経由して豊田の足助まで。
その道のりは約20㎞。
県道33号が開通したら田口から通しで歩いてみたいものだ。
今回はアクセスに車を使ってしまったので筈ヶ岳までの予定だ。
寧比曽から下りきると、林道に交差する。
本線を歩くこともできるし、林道で筈ヶ岳分岐近くまで歩くこともできる。
この辺りは全て植林帯になっていて、時折取り残されたような雑木林が現れる。
未舗装林道と2、3回交差したあとに短い急登を詰めればそこが筈ヶ岳分岐だ。
ところが筈ヶ岳までの道は現在封鎖されていた。
厳密には筈ヶ岳は東海自然歩道には含まれないのでかまわないのだけど、少し残念。
筈ヶ岳は眺めも良いとガイドブックにも書いてあったので、少し楽しみにしていたんだけど…。
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ピストン
Leave no traceの原則を守って一泊した翌日は朝5時に行動開始である。
夕方の5時くらいから寝たので身体が軽い。
寧比曽岳手前の水場以降、水の補給ができなかったのと、食糧が無くなったので荷物が異様に軽い。
明け方前の明るくなっていくトレイルを登り返していく。
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ちょうど寧比曽山頂に着く頃に朝日が顔を出し始めた。
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気温は20℃くらい。
朝露で草木が光っていた。
山頂の東屋には登山記録のノートと案内写真が置かれていた。
どうやら誰かが箱を設置したようだ。
地元に愛される道のようだ。
老若男女、中には英語の書き込みもあった。
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怖いわ
昇っていく朝日の中を歩くのはとても気持ちが良かった。
アップダウンも少なく、ストレスを感じさせない道だ。
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この日も朝から多くのハイカーとすれ違った。
誰でも気軽に歩くことを素直に楽しめる、そんな道だからだろうか、やはり人気がある山のようだ。
五六橋の手前でおじさん三人は渓流に足をつけてはしゃぐ。
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林道をショートカットすれば、段戸湖駐車場までもう少しだ。