はつ恋の話をしよう

「みすみす自分の前途を台無しにするのがどうして恐ろしくなかったのだろう?そうだ、とわたしは思った、これが恋なのだ、これが情熱というものなのだ。」

 参加しているLINEのオープンチャットに「皆さんが好きな恋愛小説を教えてほしい」というのが来た。
 “恋愛”と聞いて、安直に連想したのは初恋という言葉で、そのままツルゲーネフの『はつ恋』を勧めた私は後で後悔する。

メンタル削る本を勧めてしまった!!!!

 多分質問者は楽しい恋愛小説が読みたかっただろう…意図を汲めなくてごめんなという感じでいる私を尻目に、オープンチャットの会話は進む。

 そういえば海外では、初恋の定義が日本と違うというテレビを見たことがある。
 初めて付き合った相手や、自覚的な恋愛感情というニュアンスが強いそうで、日本では初めて好きになった人を指す場合が多いから驚いた。だから外国人に初恋はいつですか?と質問すると12歳とか15歳とか返ってくるらしい。

 私事で申し訳ないが、私の日本基準の初恋は、7歳の頃だった。
 マセガキだったので21歳のお兄さんを好きになり、それを母にバラされた。何も告げてないのに「ごめんね、もう少し大きくなってからね」と慰められ、その直後そのお兄さんは結婚した。
 正直、今でも母を恨んでいる。口が軽すぎて、そのうち、大気圏の口オモニとしてジブリの新しい映画になるんじゃなかろうか。
 でも、ウラジーミルのように激しい感情を抱くものでは無かったし、簡単に諦めのつくものだったので今じゃ笑い話になっている(しかし母は許さない)。

 そんな感じで私的な初恋に思いを巡らせたが、安直に勧めたツルゲーネフの『はつ恋』はちゃんと私の中での良作だ。
 激しく感情に呑まれる少年ウラジーミル(16歳)が置かれる境遇が、読んでてもどかしすぎてなんか読んでる自分が破裂しそうだった。恋のなせる暴力的なものへの受動。それは初恋の相手であるジナイーダも同じだった。

 ツルゲーネフの半自伝的なこの物語を、是非みんなにも読んでほしい。読んだあとしばらく立ち直れなかったら私になんで勧めたんだ!って愚痴っても良い。

一緒に、私の大好きな『はつ恋』の話をしよう。