「ヴィジュアル系バンド」としてのDEZERTのデビュー。
DEZERTが来年一月にメジャーデビューアルバムをリリースする事が発表されました。
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— DEZERT_OFFICIAL (@DEZERT_OFFICIAL) September 23, 2023
2024年1月
メジャー1stアルバム発売決定!!
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これに伴い、日本武道館の単独公演も決定し、ヴィジュアル系バンドとしては久々のメジャーアーティストが誕生したように感じます。
しかし、結成12年を経てメジャーデビューという事には非常に驚きました。
個人的に90年代や00年代ではなく、20年代になってこの決断をする事は正直メリットは少ないように感じるからです。
楽曲制作やプロモーションなど、今や大手のレコード会社や事務所を介さずともかなりの規模の事は出来るようになっているし、金銭的な事を考えればメジャーに行く魅力は少ない。
メジャーに行くという事はいい意味でも悪い意味でも売れるものを制作する事になる。
現在の多くの人の価値観に準拠するものを作るこというのは、とても難しく没個性的になり、その中で個性を発揮するという事はとても難しい状況にあると思う。
それでもメジャーというフィールドに立って求められるものを制作しようとする心づもりは賞賛する事に値します。
正直、DEZERTというバンドだけで考えるとこの行動は悪手だと個人的には思います。
それは現在のV系というものの存在している立ち位置にある。
勝算があるとは今の所全く思えない。
それは、ヴィジュアル系やV系の概念が広く一般化してしまった現状があるから。
ヴィジュアル系、V系というものはその名の通り音楽的なジャンルを示すものではなく、見た目を示すジャンルであります。
つまり、奏でる楽曲と同様にその見た目を重要視されるジャンルでもあるという事。
その見た目の部分で衝撃を与える事がとても重要なのです。
それこそ、ヴィジュアル『系』と呼ばれた時期のバンドはとても衝撃的な見た目でした。
X JAPANに始まり、LUNA SEA、黒夢、L'Arc〜en〜Ciel(ヴィジュアル系じゃねぇ!という批判は受け付けません)等々を筆頭にその世界観はとても衝撃的なものでした。
陳腐な表現をするならば、少女漫画に登場しそうな見た目の人達が現実にいる。
現代で言う所の2.5次元的な衝撃を与えた事が成功に繋がっていった訳です。
化粧を施し、ラインが美しくそれでいて毒々しい衣装を纏い、ステージでパフォーマンスする。
その何処か現実離れした世界の表現に多くの人は魅了された訳です。
ヴィジュアル系の衰退、いや死に体の現状はこの衝撃を与える事が出来なくなった事が大きいと思っています。
というのも、この全てが現在では一般人が普通にしている表現方法になってしまっているのです。
男性がメイクをし、カラコンを入れる事はまだ一般的とは言えないまでもその人口はマイノリティとは言えない数が存在する。
また、衣装に関してもその入手方法は容易くなっている上にとても身近なものになった。
そして、この衣装における世界観の表現というものはホスト文化が一定の理解を得てしまった事が衰退の原因であると個人的には思っています。
ホストという職業は立派な職業として現在は成立しているとは思うものの、多くの作品でその裏側が描かれるようになり、様々な作品でも肯定的なイメージで描かれなかった事から、そういう裏の部分が大きく問題視されるようになった。
そこで、ホストと親和性のあるヴィジュアル系の衣装はそのようなイメージが付き纏う事にもなったと同時に、ホストが好きなファンを取り込むようにもなって行った。
その結果、ファンが望む格好をして行ったらホストの方にどんどんとシフトして行き、結果として衣装の重要性や独自性が失われるジャンルになった。
V系が現実的になった現状で、メジャーという現実的この上ないシーンで活動するというのはアンチテーゼでありながらも非常にアイロニカルな事だと思う。
そういう意味でも見た目でファンを驚愕させる事は今ではとても難しい。
そこが出来なくなったこのV系シーンは衰退の一途を辿る事は否定できないし、事実DEZERTでさえこのスタイルでメジャーに行くまでに10年以上を要したのである。
キズでさえ、現状で6年の歳月を要している。
おそらくDEZERTとしてはヴィジュアル系文化を啓蒙したいという願望があるのだろう。
特にSORAくんに関しては『V系って知ってる』を企画するなどそれが顕著であるし、自分が影響を受けた素晴らしい文化を多くの人間に知って欲しいという意思が感じ取れる。
しかし、現在でその衝撃を与える事は非常に困難である。
さまざまな価値観や文化が賛否に関わらず一定の市民権を得る多様性の時代に、ヴィジュアル系という文化は添い過ぎている。
そこを否定するということは本質を失う事につながり、文化自体を破壊する事にも繋がるのである。
そう考えると、この文化に終止符を打つ為なのかとも思えて仕方がない。
DEZERTは茨の道を選んだとさえ、現状では思っている。