D’ERLANGERという名の運命。
約10年前を皮切りににバンドの再結成ブームがありました。
X JAPANやLUNA SEAなどのモンスターバンドが次々と再結成を果たし、多くのヴィジュアル系ファンが狂喜乱舞しました。
そして、X JAPANの再結成と同時期にもう一つの伝説が復活を果たしました。
それが、D’ERLANGERです。
D’ERLANGERは、1983年に結成されたバンド。
CIPHERとSEELAが関西を拠点に活動する中で、当時、関東で有名だったメタルバンド、SAVER TIGERのTetsuをCIPHERが引き抜き、その後kyoが加入して現ラインナップとなります。
信じられないと思うのですが、このラインナップが固まったのが1988年で1990年には解散してしまいます…。
リリースもこのラインナップのオリジナルアルバムは、インディーズ盤とメジャー盤がそれぞれ一枚ずつというものです。
楽曲数としても20曲少々しか残されていないバンドでした。
しかし、その短い活動期間ながらその楽曲の良さとライブパフォーマンスのクオリティの高さから瞬く間に知名度を獲得していきます。
この見た目で音が刺激的ならば、そりゃ売れない訳はない。
しかし、信じられない事にこんなバンドが突如解散してしまう訳です。
当時の解散の原因は事務所との確執だと言われています。
決定的な事があった模様で、解散ライブなどをする事もなく活動が終わります。
しかし、この才能と人気溢れるメンバーは直ぐに個々で活動を開始。
kyoはDIE IN CRIESを結成し、CIPHERとTetsuはBodyを経てCRAZEを結成、SEELAはFiXを結成し、個々に活動を始めます。
其々の活動でメンバーは常に中心的役割を担い、様々なミュージシャンをメンバーに加えることによってその知名度を飛躍的に上げてきました。
特にkyoは室姫深、yukihiro、FURUTON、ASAKIさんなど将来のシーンを担う事になるメンバーを多く発掘しました。
時は流れ、2006年にCIPHERとTetsuが所属していたCRAZEが解散。
ロックシーンでも確かな人気を獲得しており、特に2人の動向が注視されていました。
そんなメンバーの下した決断がD’ERLANGERの再結成でした。
同時に日比谷野外音楽堂にて復活ライブを開催する事を告知。
この一報に最も色めき立ったのは当時のCRAZEやDIE IN CRIESのファンではなく…
現役のバンドマン達でした。
この一報が出た瞬間に多くのバンドマン達が一気にバンドキッズに戻ってその魅力をファンに切々と説く様が至る所で見受けられました。
当然の様に復活ライブのチケットは一瞬でソールドアウト。
噂によると、1/3近くが業界関係者であったとも言われております。
こうしてメジャー活動期間たった10ヶ月の伝説を残して去ったバンドに再びスポットが当たります。
今でも日比谷野外音楽堂でのライブ『薔薇色の視界』は素晴らしいと思います。
というのも、楽曲の格好良さがオリジナルとは段違いに格好良いのです。
音の厚みが段違いで、あの軽く感じてしまう音源の音とは別物。
それは、一曲目に演奏された名曲『LA VIE EN ROSE』のイントロの時点で証明されてしまいました。
映像でそこまで伝わるのです。
恐らく、これを生で見た方々は思ったはずです。
と、とんでもないぞ。これは!
と。
実に17年の時を経て奏でられた音は、信じられない進化を遂げた衝撃は物凄いものだったでしょう。
事実、この復活劇を観てから過去の音源遡って聴いた方々は音源を聴いてガッカリした事でしょう。
かく言う僕もそうでした。
そんなファンの期待に応えるが如く、アルバムリリース時には少しずつ過去の楽曲を再録。
2010年にはセルフカバーアルバムをリリースするまでに至ります。
このセルフカバーアルバムの発売は多くのファンが咽び泣いた事でありました。
勿論、その間オリジナルアルバムも1年半〜2年に一枚のペースで精力的にリリースをされております。
そのどれもが非常に刺激的な音に満ち溢れていて、本当に格好いいんです。
そして何より、このバンドが15年近く現役で存在し続けるという事が奇跡でしかない。
これほどまでに再結成するにあたって、ノスタルジーではなく新たな刺激を与えてくれるバンドを僕は他に知りません。
皮肉にも解散時に別のバンドとして発表された楽曲をこの4人が演奏すると、
え?これD’ERLANGERがオリジナルか?
という錯覚を容易に起こさせてくれるのは凄かったです。
どうやってもこの中の誰かが作って奏でてればそれはD’ERLANGERなのでしょう。
これ以外に無い。しかし、誰にも出来ないんだろうと思います。
ちなみに個人的な思い出として僕が知ったのはCRAZEからでした。
キッカケはLUNA SEAのギタリストINORANさんの蛇柄ギター。
すげぇギターだなーと思ってギター雑誌をめくっていたらこのギターは製作にあたり、CIPHERさんに許可を取りに行ったというお話が掲載されていました。
そして、CIPHERって誰?ってなった訳ですが、当時はCRAZEで瀧川一郎名義で活動されており直ぐには辿り着かなかったんです。
そして、時を経てCRAZEの音に触れました。
当時、初期ベストアルバムがリリースされていたのを聴いたのですが純粋に格好良かったですし、当時としては唯一無二の音を出されていたと思います。
そこからずっと瀧川一郎氏の影響は凄まじく、今もなお紫色と蛇柄に目が行くようになってしまいました。
今でも個人的に一番好きなギタリストであります。
少しセンチメンタルになりますが、D’ERLANGERというバンドは運命っていうものの存在を信じさせてくれた気がしています。
だって、長い人生の中で自分のキャリアが本格的にスタートした人間と再結集して始めるなんて事出来ますか?
自分がある程度キャリアを積んできて「あの頃は良かったなー」とか思っても、今その人達が同じ業界に居るとしても連絡取りたいと思いますかね?
少なくとも自分はならないと思っています。
今までに運命的な出会いみたいなものが無かったんだと言われればそれまででしょうが、仮に連絡を取れたとてその関係性を復活させる事なんて不可能だと思います。
新しい人間関係を作った方が圧倒的に楽しい訳ですから。
過去の思い出したくも無い事と向き合ったり、これからの関係性を構築するのは新しい人間関係を築くことの何倍も大変だと思うからです。
それが音楽で一切の妥協ができない人たちがやってのけられたというのは、これはもう運命という言葉でしか説明できないでしょう。
そしてその関係性が15年近く続けられているだけでなく、かつての仲間とも一緒に対バンできるようになってるなんて誰が想像できたでしょう?
そう思うと、色々な運命ってあるんじゃないかと思えます。
良い悪いは別にしてね。
そんなバンドの出す音が格好悪い訳ないじゃ無いですか。
大人の淫美な誘惑、是非ともお試しあれ。
オマケ
清春さんが嫉妬した一曲です。
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