Vivienne Westwood Vol.3 ロッキンホース
Vol.1.Vol.2はコチラ。
と続きまして、もう一つ紹介したいなーと思っていたものが……
ロッキンホース
です。
木馬のように歩く際に揺れる事からその名が付いたと言われています。
1985年の名コレクションと呼ばれる『Mini Crini』の際に発表された靴。
タイトルの通り、クリノリンスタイルを現代に復活させようと試みたコレクション。
クリノリンと言うのは1800年代中盤に開発されたスカートを膨らませる為の下着です。
まぁ、現代の下着とはちょっとニュアンスが違いますが。
当時スカートが膨らんでいる方が美しいという美意識から、
貴族の皆様方は競うようにそのスカートの広がりを加速させて行きました。
そんな乙女の戦争の末にたどり着いた答えが…
型を作ってしまってそれを纏えば良いじゃない!
という非常にシンプル且つ阿呆のような発想で作られたものだそうです。
これは当時の社交会で大流行しましたが、
誰もがそのスカートがどの位広がっているのかを理解していなかったのか、
広がったスカートにぶつかる事が茶飯事となってしまったようです。
その結果、事故が多発した事によってクリノリン文化は衰退していくのです。
適度に膨らんだスカートは可愛いじゃない!
というコンセプトからかどうかは知りませんが、これが一つの代表的なVivienne Westwoodのラインの一つになりました。
スカートを膨らませてミニ丈にするスタイルは、コケットであり同時に活動的な女性をイメージさせられました。
ただ、見て分かる様に全体のラインはどうもアンバランスな印象を受けます。
それを解消したのがこのロッキンホースという靴でした。
靴によってその視点を上に持ってくる事によってミニスカートの効果である脚を長く細く見せる効果を最大限に活かしている事がよく分かります。
それと同時にクリノリンが流行した時代の女性が揺らぎながら歩く様が美しいとされた文化を再現しているというのもコンセプトに合っています。
揺れながら歩くのは確かに可愛いけどその為に苦労するのは嫌!
という所が非常にVivienneっぽいですね。
ただ、それならばハイヒールを履けばいいと思われるでしょうが、
女性を苦しめるようなアプローチは出来なかったんでしょう。
太古からのハイヒールという文化を上書きした名作だと思っています。
その後、ロッキンホースは様々な形に制作されます。
現在も職人の手によって仕上げられているこの靴は、基本的にフラッグショップでしか買う事ができない特別な一足です。
僕はこの靴を見る度にCHANELのパールを思い出します。
シャネルのパールというのは多くがイミテーションです。
自分の服にはパールのネックレスが似合うけど天然モノだと値が張るからイミテーションでいいや!
という動機で作った事によって、美しさの質が高まりました。
そんな気風を僕はこのロッキンホースに感じます。
身長が高くてフラフラとしている女の子って可愛いじゃない!
という強引な声が。
Vivienneの作品に於いて、最も無茶苦茶であり、声の大きいもの。