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お前は見られているぞ 裏世界ピクニック5巻感想

はじめに

「生百合、生ビール、生ホラー」も5巻ともなると全体に熟成されて、もう冒頭で空魚が汀さんに「は?」って顔される時点でダメだった。

ファイル16

・汀さんの過去とか小桜さんとの仲については今後なんか関わってくることがあるのか、それともフレーバーのまま逃げ切るのか。
・酒で記憶をなくした経験がまだない20歳はまあわかるけど、二日酔いなったことないのか。強いのは本当なんですね。
・なんかあれだよね。汀さんと小桜さんって結構頻繁に雑談してるんかな?空魚たちについて「聞いてる」部分が結構細かいですよね。

・「ずるい!」って駄々こねる鳥子、非常に茅野愛衣を感じました。今巻の鳥子は全体的にかやのんボイス。
・「趣味のラブホテル」がはじまってどうしようかと思った。

・小桜さんが「あれは百合じゃなくて友情」ムーブをする大人になってしまった。
・いや、あれはあくまで付き合ってるかどうかの話であって、むしろ小桜さんと鳥子の間でそういう話題はすでにオープンであること、空魚がそれを悟ることが重要なシーンなんだとは思いますけど。
・それよりジュニア版で明かされた(と言えるのかどうか)小桜さんの将来の夢の方が気になりますね。
・小桜さんの珍しい過去語り。ほーん、新情報だ?いつものごとく空魚が興味を持ってないので本当に微々たる情報しか出てこない。

・今回の怪異はポンティアナック(暫定)。実はこいつと獅子舞が連動していたわけじゃなくて、こいつに魅入られた5人を祓うために空魚が獅子舞を生み出したとかだったら面白いけど。
日常回らしいし本当に「なにか変なことが起きた」だけというのもあるかなあ。中間領域は裏世界の意図とは別の意味で謎い。
・どうしてこうなった♪どうしてこうなった♪

・るな、印象的ではあったけど今後どうなるか想像がつかない。空魚はもっと関心を持って。
・空魚、成人式行ってないんだな。そういうのに価値を見出すタイプにも見えないけどさ。

ファイル17

・見知らぬ無礼者を睨む鳥子概念
・鳥子が一人でいると安心するわるいこ空魚
・空魚も鳥子を一発で見つけるけど鳥子もいつも待ち合わせとかですぐに空魚を見つけてるんですよね。いや、見つけた上でちょっとタイミングをはかってる疑惑あるけど。

・鳥子が他人と距離置いてるの、関わりあうと自分と比較しちゃうからってのが青春。いいんだよ、怪異に魅入られた変人コンビだろうが日常回では青春してもいいんだよ。
・地味に鳥子の学年は2年生で確定ですかね。
・教室にあった英文、中間領域語というよりはローハン語っぽいけどどうなんだろう。ギリシャ文字だかルーン文字だかっぽい文字も混じってるらしく謎。
シーペイ……バニッシュドアウェイ……
・そう言えば、鳥子が「オフィーリアみたい」って言ったときに想像してたのってシェイクスピアの原作の方なんですかね?英文学部だから?考えすぎか?
・日本語?の謎看板も出てきたけど、知ってる言葉が崩れる不気味さは裏世界より中間領域の方が強いイメージですかね。

・「間違いない、鳥子の髪だ!」じゃないんだよなあ。
・過去に映像が繋がるって話になった時、ドアスコープを逆からのぞいた映像が出てきたらどうしようかとちょっと思った。
・サイドミラーとかの話が出てきたとき仮面ライダー龍騎よろしくちっちゃい鏡に飛び込む空魚の姿を想像してしまった。

・なんかのタイミングで鳥子の内面が描写されるとしたら、(空魚が書き割り冴月のことを隠していたような)ちょっとした秘密の暴露があるんじゃないかと思ってたけど、まあある意味暴露ではありましたね。
・なんか若干思い出名場面のチョイスにDVシーンや空魚がぐずぐずになってる場面が多いと思うんですが大丈夫ですかこれ。だめでしょこんな。意地悪やめて。

・ジュニア版に収録された令丈先生の解説、および過去の寄稿文とファイル17は相互補完の関係にあるので合わせて読みたいところですね。
・「一度相手を受け入ると、相手との共感共苦が細胞レベルにも及ぶのではないかと思うときがあります」いやこんな直球でやらんでも。
・喧嘩をした途端互いの姿が見えなくなるというのもなんか児童文学みがある。

・相手の気持ちが小さいことに不安になる鳥子と相手の気持ちが大きいことに不安になる空魚。噛み合ってるんだか噛み合ってないんだか。

ファイル18

・犬、よく見ると案外骨格とかが哺乳類でびっくりしますよね。よく見なくても哺乳類だが?

・ここにきて遠野物語由来の怪異。身もふたもない話をすれば、ストレートなネットロア以外も混ぜないとやってられないのだろうけど、このマヨイガに関しては外館さんの主観が生み出したのではないだろうか。なんなら動物も。
・周囲の花の季節があってるのも、やっぱりこれは外館さんに花の知識があったんじゃないかと思うんですよね。

・長年人間やってると人間の恐怖心のあり方ってのは想像力由来のバグが多くて他の動物とは違うのかなあと思ったりもするけど、大型哺乳類くらいになると裏世界の望むような恐怖心を引き出せたりもするんだろうか?
・空魚はヨモツヘグイを怖いと言うけど、文字化けした食品が平気なのも相当だと思いますよ。そう言えば、コミカライズ版のリゾート編ではちゃんと缶ビールの表示が文字化けしてましたね。

・外館さん、なんか秘密があるのかそれとも単にああいう人なのかわからなくてなんともいえない読後感。表世界にアンカーを失くした人のifなのかなあ。
・すでに完結していて自分に興味のない外館さんのような人間といるのが心地いいと感じる空魚と、鳥子と二人で完結することに慣れてきている空魚が重なり合って存在しているのがくすぐったい。

ファイル19

・「スタンド・バイ・ミー」はBODYを探しに行く話。うーん、なんかを暗示しているような、そう考えるのも過敏すぎるような。

・このパートの見所は何と言っても空魚がヤキモチを自覚する場面ですね。ていうか自覚なかったのか。某キョンみたいな強がりかと思ってたけど。
・鳥子初対面時の距離感の話とか、空魚の嫉妬の話とか、振り返ってみればそんなに早くから?みたいな戸惑いがあるのが甘酸っぱいですね。非線形の感情は美しい。

・そして最大の問題要素である謎の子供。長い黒髪と黒のワンピースって聞くとどうしても冴月を思い出すけど果たして。
・空魚鳥子子育て編が始まってしまう!と言いつつ、あの子供と接することが空魚にとって過去の自分と触れ合うことになるのかもしれない。自分自身の育て直し。

・ドッペルくん、今回は大活躍だね。空魚が自分の根幹に関わりそうな存在に話しかけるときピーター・パーカーみたいな口調になるの好きだよ。
・4巻では赤い人や件が跋扈してたからよくわからなかったけど、ドッペル空魚って書き割り冴月のガワが変わった存在とかだったりせんかな?それも裏世界の意図よりは空魚の心が産んだっていう小桜解釈のが近い気がする。

全体を通して

・2巻で「人の心がない」発言をうっすら引きずっていたように、巻を通しての流れみたいなものがあると思うんですけど、5巻は言うなれば空魚が裸になる話、もとい、構えを解く話だったのかなと。
ファイル17で特にストレートに表現されてるけど、空魚本人が隠すもの、みんなで互いに知らないふりをするのが当然なものとして認識してる感情がどんどん白日のもとに晒され、それでも構わないのだと悟る回。
・直接的な場面以外にも、汀さんに意図を見透かされる会話から始まり、小桜さんに鳥子との仲を冷やかされたり。鳥子自身にも顔見過ぎって指摘されたり、ヤキモチをからかわれたり。

・4巻の話になりますけど、温泉で空魚が語った「私以外のみんなはこういう場所での正しい振る舞い方をわかってるのかもしれないけど」「周りの人が脱いでるから、自分も脱いでいいんだろうなって判断して、真似してるだけ」っていうのから引きずってる話でもありますよね。本当にわかってるやつなんていないって答える小桜さんが優しい。
・だからって本当にみんなで脱ぐやつがあるか。

・一方で今回は鳥子の感情にも踏み込んだ展開がありましたけど、ラブホの廃墟が空魚の、自分で「子供」と称する心の中を具現化したものだとすると、人のいない大学は鳥子の心の中を具現化したものなんですよね。
・廃墟だったラブホに今では鳥子や小桜や茜理たちが……というのはやや強引か。

・裏世界の謎方面では全体的に終わったのかどうなのかそわそわする要素の多い巻でしたね。これが日常回か。
・るな、外館さん、謎の子供、ドッペル空魚。今後の巻でさらなる活躍はあるのか。
・あと気になったのはマヨイガのとこでも触れたけど、怪異が遭遇する主体によって変化するんじゃないかって視点ですね。ざっくりこんな住み分けがあるのではないだろうか。

空魚→ネットロア。特に別世界と接触する話。
るな→裏世界に接触するために調べた知識および、かつて子供の間で流行った都市伝説。(ゼロ年代に小学生だった空魚より年下なら口裂け女はやや流行遅れな気もするけど)
外館さん→子供の頃に聞いた遠野物語由来
鳥子→不明
小桜→心霊写真や心霊動画のオールドタイプな現象(コミカライズ5巻のSS等)

・6巻と刊行間隔が近く、さらにSFマガジンでの一部先行公開が発表されたときにはかなりクリフハンガーな展開になるのも覚悟してましたし、それに比べるとだいぶ穏やかな心境ではあるんですが、やっぱ早く続きは読みたいですね。
・来年しばらくはアニメ版を消化するのでいっぱいいっぱいかもしれんですけど。そっちの方の楽しみです。




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