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2024年3月15日

2024/03/15 07:25

桜が大好きだ。
詳しくはないが、桜が大好きだ。
膨大な記憶の中に美しい桜が鮮明に残っている。
桜の景色を思い出すとき、いつも最初に脳裏に映る桜の話を。
公共工事に携わる仕事をしていた頃の話。

公共工事は1月から忙しくなり3月には忙しさのピークを迎えることが多い。
発注元が市や県や国だと、その工事に関する膨大な資料の作成と提出が必要で、
その資料を基にした完成検査をパスしなければ完了にならない。
この資料作成が、まさに鬼門。
公共工事に関しては新米で何も分からなかった頃、上司と主に資料作成に追われていた。
明日はいよいよ完成検査。あの写真が無いだのこの書類が無いだのてんやわんやの大騒ぎで、ようやく完成にこぎ着けたのは夜も更けた頃。
「飲みに行こう」と上司に誘われ、とぼとぼ夜道を歩く。

市役所の近くを通りかかり、さあ明日はいよいよ完成検査だと、建物を眺める。
確か2階の角部屋だったな。
縁を流れる一本の川に沿うように満開の桜が咲いていた。
桜が咲いていたことに気がつかないほどの忙しさだったから、驚いた。
そうか、もう春か。
人間がどれだけ忙しく働き心を亡くしていても、桜は堂々と咲くのだ。
時間に追われるでもなく、誰かに急かされるでもなく、自然の持つ時間で咲くのだ。

明日頑張れよと、聞こえたりはしない。
ただ、明日頑張りますと私から声を掛けてみた。小さな声で。

あれ以来あの桜は見ていない。
こうやって文字にしたのだから、今年は見に行こうかな。
きっと、自然の時間で堂々と咲いているのだろう。

2024/03/15 07:40
今日はこれでおしまい。

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