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クリスマスに読みたい本10選
毎年クリスマスの季節がめぐってくるたびに、決まって読みたくなる本があります。
その中から10冊を選んでみたら、ほとんど王道のものばかりになりました。
みなさんのお気に入りの本も、ありますか?
1.『クリスマス・キャロル』
クリスマスの精霊たち、自分自身の人生への冷たい恐怖と後悔、そして最後に訪れる、圧倒的な幸福感。
この本だけは、クリスマスシーズンに必ず一度は読んでしまう。
読み終わったあとのあの高揚感はまさにクリスマスそのものだ。
クリスマスの祝福に満ちた「極上の名作」と呼ぶにふさわしい一冊だと思う。
2.『青い鳥』
ノーベル賞作家モーリス・メーテルリンクの名作戯曲、『青い鳥』。
「幸せの青い鳥を探しに行く」という言わずと知れたそのストーリーのため、かえって本作をじっくり読んでみたことのある大人は少ないんじゃないだろうか。
物語の始まりは、クリスマス・イブ。
実にまったく戯曲らしく、目の前にあるように情景が浮かび上がり、冒頭からあっという間に引き込まれる。
「幸せとはなにか」という目のくらみそうな王道テーマを、真正面から見つめ掘り下げていく本書。
その一文一文の、なんて豊かで芳醇なこと。幸福と感嘆と満足のため息が、いったい何度、漏れたことだろう。
ストーリーを知っているというだけで読まずにおくのは、あまりにもったいない名作だ。
子どもも読んでもいいけれど、細部に至るまで芳醇なこの傑作は、大人の方に、ぜひ。
3.『たいせつなきみ』
木の人形パンチネロは、何かへまをするたびに仲間の人形たちから「だめじるしシール」をべたべた貼られ、すっかり自信をなくしてしまう。
そんなパンチネロに、すべての人形の造り主、エリが語りかける。
「わたしには、おまえがとってもたいせつなんだよ」。
「あなたはすでに価値ある存在。 誰かの評価は関係ない」。
この絵本には、そのメッセージが一貫して流れている。
他者からの評価に疲れたときに読み返したくなるこの絵本は、クリスマスのやさしい季節にとても似合う。
たいせつなひとへの贈り物にもぴったりの本だと思う。
4.『クリスマスの幽霊』
1930年代のイングランド。
まだ幽霊が身近だった時代の、クリスマス・イブ。
少年の身に起きる少し怖い冒険譚。
児童文学の名手ウェストールが綴るクリスマスの喧騒と幸福感、この世ならぬものへの畏怖、家族への愛。
一本の短編映画を観たような豊かな読後感。
児童書ですが、大人のかたにも。
5.『ちいさな もみの木 くまのアーネストおじさん』
親子にも恋人にも見える、くまのアーネストと子ねずみのセレスティーヌの、クリスマスの物語。
まったく違う個性を持った者同士の愛情のやりとりが、胸に温かく広がる。
ガブリエル・バンサンの描く絵本は、どうしてこうも大人っぽいんだろう。
愛とは本質的に自由とイコールで、それはつまり所有とはまったく相容れないものなのだということが、当たり前の事実としてあっさりと根底に流れている。
子どもよりも、大人に響く絵本だと思う。
6.『星の王子さま』
野生のキツネとの絆、砂漠の下に眠る水、雲の上で光る星。
目に見えないけれど確かにある、「見えるもの」より大切なもの。
何度読んでも読み終えた気がしないのに、本を閉じるたびに胸にあたたかくあかりが灯る。
童話風だけれど、これもまた、子どもよりも大人のかたへ。
この本をほんとうに味わうには、自分自身の人生経験が要るから。
7.『アルケミスト』
ある夜見た夢に従って、羊飼いの少年は旅に出る。
錬金術の秘密を手に入れるためにー。
『星の王子さま』に並び称されるほどの賞賛を浴び、オバマ元大統領など数々の著名人が愛読書に挙げた示唆に満ちた本。
人の心とはなにか、自分の夢に従うとはどういうことか、恐れとは、希望とは、喜びとは。
童話風の物語にのせて、人生の本質を描き出す。
読み手によって解釈がそれぞれ異なるのは、自分自身の心をのぞき込むことになるからだと思う。
8.『神さまの貨物』
昔むかしの深い森、奇妙な荷を積む貨車、列車の窓から投げられた赤子、強制収容所。
不穏なキーワードが並ぶけれど、そして確かに呆然とするほどの絶望が描かれてもいるのだけれど、それでもこれは紛れもなく、愛についての物語だ。最後の最後、絶望の果て、それでも人が失うことのできない、愛についての物語。
初めて読んだ時には驚きと感動と絶望と愛でぐちゃぐちゃになり、しばらく呆然とした。
童話の柔らかさとノンフィクションの鋭利さが同居する、震えるような傑作。
2021年本屋大賞翻訳部門第2位。
9.『賢者の贈り物』
アメリカ文学屈指の短編の名手オー・ヘンリーの、王道クリスマス・ストーリー。
ストーリーも結末も嫌になるほどわかっているのに、毎年この季節に必ず読み返したくなるのはなぜだろう。
あたたかな装丁と共に、クリスマスの贈り物に。
10.『はてしない物語』
これは魔法の本だと、半ば本気で信じている。
この本が広げてみせる想像力の翼に片足を乗せたが最後、あっというまに高く高くさらわれてしまう。
竜や魔物、虚無の果て、そして読者自身を写し出す鏡の前へと、翼は案内する。
目のくらむような冒険を主人公と共にするうち、わたしたちは知らず知らずに、一人の人間の人生を生きることになる。
この「他者の人生を体験する」という現象は、優れた物語だけが持つ効能だ。
他者の人生を生きてみることで生まれる共感はそれまでの自分の価値観を揺さぶり、心を深く豊かに耕していく。
まるで魔法みたいだと、いつも思う。
居心地のいい部屋で、お気に入りの毛布にくるまりながら魔法の本を広げる喜び。
この本をもしも誰かに贈るなら、それはつまりその喜びを贈ることでもあるのだと思う。