三鷹の森ジブリ美術館、大人向き?子ども向き?
先日初めて、三鷹の森ジブリ美術館に行ってきました。
もともとジブリは大好きだし、我が家からそう遠くもない。
けれど開園から20年間、一度も行ったことがありませんでした。
その理由のひとつに、「大人向けなのか子ども向けなのかわからない」という、この上なくふんわりした疑問がありました。
これを書きながらも「そんな理由で?」と自分でも思うのですが、臆病かつ出不精、よくわからない場所に行くくらいなら家で本を読んでいたい、というわたしの性質により、「…まあ、行くのはまた今度でいっか」などと言っているうちに、あっという間に20年。(ながっ)
さて。
そんなこんなで初めての、「三鷹の森ジブリ美術館」。
大人向きなのか、子供向きなのか。
長年の、小さな小さな疑問が(わたしなりに)解けたので、感想を書いてみたいと思います。
ジブリ美術館までの道のり、子どもも一緒に行きやすい?
JR三鷹駅南口から、ジブリ美術館を通るバスが出ています。
ジブリのイラストでラッピングされた黄色いバスで、とってもわかりやすい。乗ってしまえば5分で着きます。
これは、小さな子どもと一緒でも行きやすい。
多摩川沿いをゆっくり歩いても15分だから、お天気が良ければお散歩がてら歩くのもいいかもしれません。
到着!
バスを降りると、目の前は井の頭公園。
その公園の入り口に、やさしいかたちをした建物があります。
わたしが行ったのは、土曜日の午前10時45分。
11時入館の回を予約していたので、10分くらい公園をぶらぶらしようかとのんびり構えていたら、建物の前はすでに長蛇の列。
な、なに!
完全予約制なので並ばずに入れるのかと思いきや、甘かった…。
列の最後尾に並び、入館までかれこれ20分ほど待ちました。
むむむむむ。
なんか、なんか、思ってたのと、違う。
館内へ!
一歩足を踏み入れていちばん最初に感じたのは、色とりどりのやわらかな光。
ジブリのキャラクターが描かれたステンドグラスが部屋じゅうにあって、カラフルな影を床いっぱいに落としています。
すべての調度品が手作りだというお部屋は、ジブリの世界、そのもの。
わああ………
長い行列にちょっと下がっていた気持ちが、ぱああっと一気に晴れ上がった瞬間。
◇ カフェ「麦わら帽子」
カフェ「麦わら帽子」。
ジブリ美術館の中にある、唯一のお食事処。
事前にネットでちらっと見た感じではすごくいい雰囲気だったし、とてもたのしみにしていました。
12時近くになると混むだろうから、少し早めだけど、行っちゃおう。
そんなふうに思い、いそいそと向かいました。
だけど、むむむ、ここでも、甘かった!
先に席を確保してからカウンターで注文・受け取りをする、ファストフード店と同じ形式のこのカフェ。
行ったときにはすでに満席&行列状態。
並んでいる間にたまたま近くの席が空いたので運よく座って食べることができましたが、並んでから食べ始めるまでに、なんと約1時間。
こ、これは……小さい子どもが一緒だと、厳しいかも…。
室内とオープンテラスに分かれていて持ち込みもOKなので、長時間並ぶのが厳しい場合は、お弁当持参が賢いかもしれません。
でも。だけど。それでも。
出てきたランチは、待ったかいのある、とても美味しいものでした。
クリーミータルタルのサーモンサンド、マンマボスが大好きなスープ、麦こがしのラテ。
メニューはいろいろありましたが、わたしが選んだのは、これ。
なんかもう名前だけでも美味しそうですが、実際のお味も、ひとつひとつきちんと丁寧に作られていることがわかる大満足なものでした。
ボリュームも十分で、おなかいっぱい!
大人だけで行くなら、パンフレットを見たりのんびりおしゃべりしたりしながら待って、こちらのカフェで食べるのがお勧め。
並んだり食べたりしている間じゅう、井の頭公園の大道芸人さんのバイオリンの音色が流れてきて、これがまたここの雰囲気にぴったりで、素敵でした。
あー、書いてたら、また食べに行きたくなっちゃったな。
◇ 迷子になろうよ、いっしょに。
「迷子になろうよ、いっしょに。」
これが、この美術館のキャッチフレーズ。
なんて素敵な、キャッチフレーズ。
パンフレットには、こう書かれています。
このパンフレットには、宮崎駿さんの手書きの館内図が書かれていますが、これを見ても行きたい場所にどう行けばいいかは、ほぼわかりません(笑)
「地図はいらない」という強い意志を感じます。
そしてまんまと、たっぷり迷子になりました(笑)
子どもたちが一緒だったので、なおさら。
迷い疲れて途方に暮れて、いったんそのへんのベンチに座ってみたり。
でも、それがまた、なんか、よかった。
不思議の国で、迷子になること。
大人になったいま、それってなかなかできないから。
「ジブリ美術館は物語の入り口」。
パンフレットに書かれたこの言葉の意味がわかったような気がしました。
宮崎駿さんというひとは、ほんとにつくづく、物語づくりの上手なひとだなあ。
◇ 天空庭園の守り神
わたしが一番テンションが上がったのが、ここ。
わたし、『天空の城ラピュタ』が、大、大、大好きなんです……
ちゃんと感想を書きたいけれど、思いが溢れすぎて、むしろ何も書けない。
とにかく、素敵でした……
◇ オリジナル短編アニメーション
地下1階では、15分前後の短編アニメーションが繰り返し上映されています。
わたしが行ったときは、『水グモもんもん』というかわいらしい恋のおはなしが上映中でした。
◇ ネコバス
小学生以下限定の、ネコバス。
ふわふわの、超特大ぬいぐるみのようになっていて、子どもたちはとても楽しそうに、乗ったり触ったりしていました。
子どもたちでいちばん賑わっていたのは、ダントツでここ!
(館内はカフェを除いて写真撮影禁止だったので写真がありませんが、公式HPで見られます)
◇ おすすめ絵本が並ぶ図書閲覧室
宮崎駿館主とジブリ美術館おすすめの絵本・児童書が置いてある、「トライホークス」。
児童書に目がないわたしは、ここもとっても楽しかった!
垂涎の名作ばかりが並ぶ夢のような場所。
隅から隅まで楽しみました。
ただ、子どもたちの姿は、少なかった。
アンティークな雰囲気の素敵な板張りのお部屋を一目見て、うん、ここは子どもはいられないよなあ、と納得。
ジブリ美術館公式HPによれば、「子どもたちが実際に本を手に取り、読むきっかけを作る場所でありたいと思っています」とのことだけれど、もしもほんとうに小さい子どもたちに読んでもらいたいのなら、板張りではなくぺたりと座れるカーペット敷きのスペースをつくるか、大人と一緒に座れるゆったりしたソファを用意する必要がある、と思います。
大好きな大人と一緒に読む、それが、子どもたちにとっての、絵本のまず第一の魅力だから。
そして、子どもの小さな手で絵本のページをめくるには、座れる場所がないと、無理だから。
はい一人で好きなだけ立ち読みしていいですよ、と言われても、子どもたちは、すぐ出て行っちゃう。
だってそれくらいなら、外を走った方が、楽しいもの。
板張りのアンティークで素敵なお部屋は、やっぱり完璧に、大人向け。
ジブリ美術館は「テーマパーク」ではなく「美術館」
「三鷹の森ジブリ美術館」は、テーマパークではなく、美術館。
当たり前のことなのですが、改めてそう思いました。
ネコバスは、確かにある。
オリジナル短編アニメーションも、上映されていた。
でも。
あくまでも主流は、スタジオジブリの世界観やアニメーターの仕事の中身をたっぷり見せる、美術館。
アニメーション映画が製作される裏側や、一本の映画が完成するまでの悪戦苦闘のストーリー、ジブリの歴史などが、愛情たっぷりに展示・紹介されている、ジブリに興味のある大人にとっては細部に至るまで見ごたえのある場所。
だからこそ。
子どもたちは、1時間もすれば、飽きてしまう。
もちろん子どもを大切にする雰囲気に満ちてはいるけれど、やっぱりあくまで美術館、基本は展示を見て回る場所。
のびのび走り回ったりすることは、想定されていませんでした(当たり前か)。
大人は、じっくり見て回りたい。
子どもは、アニメを観てネコバスに乗ったら、帰りたい。
大人と子どもの思惑が、ぶつかり合います。
わたしの独断と偏見に満ちた、結論。
さて。
というわけで、当初の疑問。
「三鷹の森ジブリ美術館は、大人向け?子ども向け?」
◇ ジブリ美術館は、大人向け。
まずは結論。
「ジブリ美術館は、大人向け。」
もちろんいろんな意見があると思いますが、わたしの結論は、これ。
◇ 貫いていたのは「物語性」
この美術館を一貫して貫いていたのは、「物語性」。
館内に入って出てくるまでの間、ジブリの世界観にどっぷり浸かれるように、隅々まで細心の配慮がなされている。
その感動は、主に大人に響く種類のものでした。
たとえば。
館内はステンドグラスの淡いひかりに溢れ、高い天井には柔らかく音が響き、リラックスできる雰囲気に満ちている。
そのなかでわたしたちは自由に歩き回り、アニメーターの仕事やアニメーション映画の歴史を覗いたり、トイレや消火器に至るまでジブリの世界観に沿うように造られたひとつひとつにうっとりする。
けれどその一方で、物語と現実の境目がまだ曖昧な、それゆえ「物語性」なんて知ったこっちゃない子どもたちは、すぐに走りたがり、触りたがり、転がりたがる。
そして大人から、「走らないで」「あ、それは触っちゃだめ」「もっと静かにね」と言われ続けることになる。
それはそうだよね、いくらジブリといえ、やっぱりここは、美術館なんだもの。基本的に、展示物を見て回る場所なんだもの。
いつだって遊ぶ気まんまんの子どもたちに、ここで退屈するなという方が、無理だよね。
うん、やっぱりここは、大人のための場所なんだ。
「小さな子ども達も一人前にあつかいたい」という館主のことばの意味するところは、「子どもの世界に大人が入っていく」ということではなく、「大人の世界に子どもを招く」ということなのかもしれない。
主役はあくまで、大人側。
◇ 「永遠の夏休み」を思い出すための場所
ジブリ美術館は、子ども時代のイノセンスへの、ノスタルジーに満ちた場所なのだと思います。
永遠の夏休みのようなあの輝き。
それを思い出したくて、大人たちが集まる場所。
そして、だからこそ、いままさに「永遠の夏休み」まっただなかの子どもたちにとっては、きっと少し、つまらない場所。
おわりに(館主のことばによせて)
三鷹の森ジブリ美術館。
実際に行ってみて、宮崎駿さんの「館主のことば」がこの美術館の在り方を余すところなく伝えている、と感じました。
このように在りたい、という館主の願いが、そのままかたちになったような場所。
少し長いけれど、とても素敵でどこも省略したくないので、そのまま引用しておわりにしたいと思います。
もっと短い記事にするつもりだったのに、書いているうちにどんどん書きたいことが溢れてきて、とても長い記事になってしまいました。
最後まで読んでくださって、ありがとうございました!
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