2000円分のアイスクリーム
「よかったら家族で食べて」とサーティワンアイスクリームのギフト券をいただいたので、2000円分のそれを持って、1駅先のサーティワンへ行く。
ショーケースの前で、思いきり悩む。
ストロベリーショートケーキ、キャラメルリボン、ラムレーズン。
ジャモカコーヒー、オレンジソルベ、白桃ブラマンジェ。
よりどりみどりのサーティワン、ああどれも美味しそう。
あまりに悩んでいるので、店員さんが次々に試食をくれる。
アマーロアフォガード、ティーオーレ、新作の抹茶きなこ。
ひとさじずつ手渡されたアイスクリームはどれもとても美味しくて、わたしはますます悩んでしまう。
悩みに悩み、ようやく選んでお店を出る。
スモールサイズのアイスクリームが8個入った、カラフルな箱。
帰り道の電車のなか、窓から差しこむ初夏のひかりが、いつもよりきらきら光って見えた。
* * * *
アイスクリームを2000円分、まったく自由に選ぶこと。
それはなんだか、とても楽しいことだった。
ほんとうは、ギフト券をもらわなくてもいつでもできる。
アイスクリームに使うための2000円が、ないわけじゃないのだから。
だけど。
今まで一度も、やってみようと思わなかった。
2000円あったら、野菜やお肉や果物に、本や歯ブラシやシャンプーに、わたしはきっと使ってしまう。
どれもわたしが生きていくのに欠かせない、生活必需品たち。
アイスクリームに使えたのは、それがギフト券だったからだ。
他のものは買えないギフト券、アイスクリームだけのための2000円。
* * * *
生活必需品以外のものにお金を使うこと、なくても困らないものにお金を使うことは、案外大切なのかもしれない。
生きていくのにまったく必要ないけれど、帰り道の景色が思いがけず柔らかく光ってしまうような、幸福なお買い物。
それは自分の喜びを大切にできたことの幸福なのかもしれないなあと、思ってみたりする。
これからはときどき、よりどりみどりのアイスの日をつくってみようと考える、初夏の午後。
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お読みいただき
ありがとうございました。
今日も素敵な一日を!